「Loveful,Liveful.vol.2~星空を見つめて~」@渋谷Star Lounge
やないけいこ 「orion」レコ発ワンマン o.a.繁森由梨佳
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8月31日に待望の音源、シングル「orion」を発売した「やないけいこ」が、これまた待望のレコ発ワンマンをほぼ1ヶ月たったこの日、開催に漕ぎ着けた。CD発売はネット申し込みだけだったので、すでに予約で当日入手済み。何度も聞き込んで、この日に至る。ちょっと間が空きすぎだよ。
まずは、彼女がかわいがってる事務所の後輩で、4月にデビューした繁森由梨佳、愛称しげぷー。やないけが楽曲も提供しており、しげぷデビュー時には他人事でなく大喜びしていた。オープニングアクトとして、やないけの今を語る上で欠かせぬ存在。それにしてもさすがアイドル、繁森は確かにカワイイ。
繁森由梨佳は3曲、「everlasting love」「shooting star」「endless story(伊藤由奈カバー)」。最後のカバーは、愛する先輩やないけいこさんへ贈ります、とのこと。カラオケできれいに歌い上げた。中低音から高音まできれい出せる歌手だ。
さあ、そして本日の主役やないけいこの登場だ。
ギター、ベース、ドラム、キーボードの4人を従えて、ステージに中央に。傍らには彼女の代名詞であるバイオリン、そして鉄琴。すべて出し切ろうという感じがひしひしと伝わってくる。これまで音源はなく、ライブの回数もそれほど多く、知る人ぞ知る存在であった彼女が、いよいよ表に出てくる。その始まりが今なのだ、その場に立ち会えたのだ、と思うと感慨深し。
1曲目は「雨の日」。静かな立ち上がり、柔らかくきれいに高音が響く彼女の声が耳に心地よい。
彼女はさらっと歌うが、その楽曲はかなり複雑。音符が上へ下へかなり飛ぶ。でもこれは彼女自身の作曲。きっちりと音符をなぞれる音感と歌唱技術があるからこそ、こうした自在な曲作りができるのだ。さらに音符の並べ方はかなり知性的。幼少時から身に着けたバイオリンや、コーラスで磨いた技術と音楽的教養が、こうしてシンガーソングライター、やないけいこの糧となっているのだろう。
間奏ではさっそくバイオリンをしっとりと聞かせる。その音色はクラシック的ではなく、弦を泣かせてフォークシンガーのよう。彼女ならではの世界を、確立しつつある。
2曲歌ったところで、「私自身が音楽を通じて沢山の出会いに恵まれてきた。その一人です。ギターかなまつさん」と紹介して呼び込んだのが超ど派手なロッカー。すごいインパクト。彼を従えて、アッパーに「追い越して」を楽しく歌いあげる。
4曲目に早くも本日レコ発のその曲「orion」だ。最後でなく、こんなに早くやるということは……。丁寧に美しく主旋律を歌い上げていく。じわじわっと心の均衡が崩れていく。彼女が歌う、去り行く君への切なさを抱えた歌の主人公に、自分が同調しつつあるのがわかる。切ないね。
この後も、バイオリン演奏あり、鉄琴あり、ギター伴奏のみで歌い、またフルバンドで元気よく弾むなど、多彩な「やないけワールド」を繰り出し、お客さんを飽きさせない。エンターテイナーとしての一面が多くのファンを惹きつける。
その一方で、彼女の楽曲も魅力たっぷり。芸術家肌の彼女の才能がキラキラしているのだ。歌を聞いていると、美しさや優しさに彩られた様々なイメージが浮かんでくる。その絵は、光の明暗、濃淡で幻想的な風景を描き出す印象派の絵画のよう。目には見えない作品を聞くものの頭の中にちりばめ、あたかもルーブル美術館に誘われる感覚。
この二つの側面を併せ持つところに、彼女の魅力がある気がする。
そして、もう一つ。それは…
<セットリスト>
1)雨の日
2)トナカイ
3)追い越して
4)オリオン
5)うさぎのしっぽはふわふわで
6)会いたくて
7)明日は明日の風を吹かせて
8)?
9)愛を探して
10)魔法をといて
11)灯日
en.1 つなぐ
en.2 メッセージ(セルフカバー)
en.3 オリオン
彼女の歌とステージに、満杯のスターラウンジのお客さんも、スタンディングのまま最後まで盛り上がり続けた。耽美的なバラード中心の歌手なら着席でないと最後まで聞いていられないところ。やないけの音楽ではそうならない。何故か。きれいに歌っていながら、彼女の歌は熱いのだ。はしばしから、彼女の情熱が迸っているのだ。
繊細そうに見えて、実はかなり強い芯がある。慶応大学経済学部をこの4月に卒業し、就職を望むならいくらでも高収入の安定した就職先があったろう。だが彼女は不安定極まりない「音楽」の道を選んだ。聡明な彼女が大いに悩まなかった訳がない。そして今、彼女の言動を見ていると、なんの迷いもなく真っ直ぐに音楽に打ち込んでいる。強い覚悟を持って、歌の世界に挑んでいるのだ。その決意や潔し。言葉のはしばし、楽曲の隅々に現れる彼女の意気込みが、聞くものを熱くする。
ガンガンのロック歌手のステージと比べてしまうと、その情熱は見えなくなる。だが、じっくりと彼女の音楽と向き合うと、大きな心の揺れを感じるはずだ。
本編の最後に歌った「灯日」のサビ


というリフレインがすごい好きなのだが、今夜は記念のレコ発ワンマンということで、一段と力が入っている。彼女が自身の全てを投げ出すように、力強く熱い。ここを聞くだけでも、今夜は来た甲斐があったというものだ。
盛大なアンコールの拍手を受けて、人と人のつながりに深い感謝の念を込めた「つなぐ」、繁森由梨佳に提供した曲のセルフカバー「メッセージ」と歌いつぎ、最後に再び「orion」。三つの星が輝く先に、彼女が何を見ているのか、これからの活動に期待したい。満足感たっぷりのライブだった。
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素敵なやないけいこのライブ@Star Loungeを終え、外に出るや否や地下から矢沢洋子の曲が聞こえてくるではないか。そう、今夜、矢沢洋子はStar Loungeの地下、Chelsea Hotelでイベント「赤くぬれ!#05」のトリを努めるのだった。まだ間に合う、と、すかさず地下へ。入場するとすでに3曲目。おおいに盛り上がっている様子。
次の曲が始まる前にするすると前方へ移動。すると始まった曲が「Too Late」。さびでいきなりこっちを指差すから、どきっ。はい、申し訳ありません、洋子さん、やってくるのが遅すぎました(笑)
その後は怒涛の激しいロックナンバーが続々。「アドレナリン」や「Honey Bunny」でガンガンと会場を熱くしていく。無茶苦茶、格好いいぜー。もう惚れる。なんで、こんなに格好よく歌えるんだろう。すごいタレント性、カリスマ性だ。さすがのメジャー感。うーん、何度も言うが、矢沢洋子を聞いたら惚れてしまうよ。
やないけいこ~矢沢洋子、という贅沢なリレーで今夜は楽しかったぜ。