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「.comfort presents live」 @四谷天窓.comfort
出演:石川裕紀子 →d-iZe →MiyuMiyu →ヒグチアイ
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今にも降り出しそうな曇り空の下、栄通りを奥へ奥へ。昔はここに大酒を飲みゲロを吐きにきたものだが、昨今はライブのためにしかこない。我ながら上品に、いや、大人になったものだ。昔通った飲み屋は姿もなく、こじゃれた飲み屋やラーメン屋が立ち並び寂しい。ひとつの通りを四半世紀見ていると、本当に隔世の感ある。
四谷天窓.comfortに着くと、d-iZeが歌い始めたところ。平井堅のポップスターのカバーを軽やかに歌っている。若くて明るいピアノ弾き語りシンガーソングライターだ。
男ってところはプラスポイント。力技でごり押すコバケンとかフォークっぽく情熱ぶつける村上通とか、逆に女性のような繊細なボーカルで人気のあのピアノ弾き語りとかはいるが、意外とおしゃれで格好よい男性鍵盤弾き少ないよね。男はバンドか、ソロならギターへ流れてしまうからか。
そんな男性鍵盤弾きを、もっとフィーチャーしようと動き出したのが、まさにこの四谷天窓。10月8日(土)に上野公園の野外水上音楽堂にグランドピアノを持ち込み、「鍵歌上等(ケンカジョウトウ)」と題したイベントを開催する。
d-iZeを始め、オーガナイザーの伊沢ビンコウ、別所ユージ、佐伯ユウスケら10人の男性鍵盤弾きが集結。13:30~19:30という6時間のロングランで男のピアノをしゃぶりつくすつもりらしい。うーん、男に興味はないが、鍵盤弾きには興味ある。どんな音が聞けるのか。行く価値は十分ありそうだが、さて、どうするか。
d-iZeのことは、先に書いたPlay You House(今はgoosehouse)で最初に知った。神田莉緒香や竹渕慶ちゃんらと楽しげに、一緒に歌っているのが羨ましかった(笑)でも、リーダーシップもあり頼れる兄ちゃんが意外の軟派でないことに好感。彼のボーカルも結構気に入っているのだよね。
今夜も、軽やかだけど、時に力強くしっかり歌っていて、良かったな。10人ほどの女性ファンも来ていて、彼の人気のほどが伺える。彼女らは次のMiyu Miyuのステージ中にぞろぞろ帰ってしまったけどね。もったいない。
ということで、今夜のお目当てのMiyu Miyuが3番手に登場。今夜はアコースティックということで、ゆきこちゃんがアコギ、みさちゃんがアコースティックベース(アコギの形ながら、ベースの4弦)、それにいつものCapockようこちゃんがカホンという編成だ。
アコースティックの時は知らない曲が多い。今日も1、2曲目の曲名が分からず。どこかで聞いた気もするのだが…
<セットリスト>
1)?
2)?
3)sour
4)悲しみダンス
5)時
6)氷
MiyuMiyuがアコースティックなステージを始めると、流れる時間が変わる。湘南の平塚で育った二人の紡ぐ音楽は、せこせこせず、ゆったりとした波のよう。同じ海辺でも、キューバなどで生まれたラテン音楽のような明るさはなく、日本人的な繊細さに満ちた歌詞や曲調が、静かに心の中に温かいものを広げていく。
また、彼女たちの音楽には知性を感じる。じわじわっとテンションを上げていく構成、さりげなく煽情的な言葉選び、無駄な音を配したシンプルさ。一気にサビに入った時にきゅんと切なくなる「sour」や、情熱を秘めた「悲しみのダンス」が、心をとらえる。すごく好きだなあ。
最後の「氷」も劇的で、アコースティックの上質な音楽とはかくあるべし、と思えるなあ。彼女たちのバンドライブの「Last A Way」や「流星」などの疾走感もとても好きだが、こちらもいいよね。
そんなMiyuMiyuが、久しぶりのワンマンライブを10月11日(火)に開く。場所が平塚と遠いのだけど、なんとなんと、ドラムサポートにあのポンタ秀一さんを迎えるつうから驚き!ポンタさんといったら伝説だぜ。確かに共通点はあるんだよな。いかに少ない音で最も感動的な音楽を作るか考えていそうなところかな。
老境に入り、ポンタさんのドラムはますます音の数が減っている気がする。それでいて、ドンチャカドンチャカ叩きまくる若いドラマーの音より、はるかに音楽を作っている。もはや達人の域。その達人がMiyuMiyuのサポートをやるというのだから、ゆきこちゃんの志向している音楽の方向性と感応する部分があったのだろうなあ。
おまけに、オープニングアクトに伊太刀山伝兵衛さんだって!おいおい、伝べえさんっつたら大物で、おいらの憧れのちょい悪親父だぞ。そんな、超格好よいおっさんブルースシンガーを前座か!Miyu Miyu恐るべし(笑)Pipe Lineが取り持つ縁。音楽が世代も性差も超えて人と人をつないでいくのって、いいよね。うーむ、これは見に行かねばなあ。でも、火曜夜に平塚は無理かもなあ。でも絶対見たいなあ。
トリは、ヒグチアイだ。恐るべし平成生まれの鍵盤弾き語りシンガーソングライター。
何が恐るべしかっていうと、やはりその声とピアノで作り上げる音楽の力強さとスケールの大きさだ。中低音の響きでは、かなうシンガーいないのではないか。逆に高音の処理が弱点だったが、それも最近は克服して、破たんなく音楽を作り上げるようになってきたから、抑えた凄味が増してきた。
1)夢?(新曲)
2)ココロジェリーフィッシュ
3)合鍵
4)黒い鍵
5)東京
6)メグルキオク
en. しあわせのうた
特に今夜は Miyu Miyuが作ったしっとりした流れを受け継いだのか、天窓.comfortの窓から見える夜景に酔ったのか、はたまた病み上がりで歌ったときに好評で抑えて歌う効果に気づいたか、ヒグチアイの音楽は少しばかり激しさにブレーキをかけ、逆に一音一音、大切に歌っていた。その結果、それぞれの楽曲の作品としての完成度がぐぐっと増した感じ。より芸術的な風格を漂わせ始めてた。
もちろん、圧倒的な唄ヂカラと迫力で、見るものを圧倒するヒグチアイのパフォーマンスも、ライブらしくて好きなのだが、今夜のような表現力で聞かせられると、すごい納得感がある。失恋の曲である「合鍵」を、失恋の歌としてしっかり聞かせていたし、上京して戸惑いながらも憧憬を抱く若者の心を「東京」ではしみじみ感じた。
どこか一皮むけた感ありのヒグチアイは、今夜がツアースタート初日だ。明日から草加~柏~新潟~志津~長野~渋谷~神戸~大阪~京都~名古屋~沖縄~東京 と1カ月以上かけて回っていく。正真正銘、東京のライブシーンでもそのつわものぶりで頭角を表してきた彼女が、各地でどう受け止められるか。それぞれの土地で、彼女の音楽に驚くお客さんの顔を見てみたい。同行できないけど、彼女の初ツアーの行方にワクワクしてやまない。
体には気をつけてガンバレ!