2011/9/1 いいくぼさおり、河合杏林、杉恵ゆりか、RIKO@gee-ge | 音楽偏遊

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最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

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鉄ロックフェスティバルvol.62 祝!gee-ge 1周年スペシャル!!@ 渋谷gee-ge
出演:ハルカ→Riko→松尾優→杉恵ゆりか→河合杏林→いいくぼさおり
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今夜は総勢6人が出演。前半3人がショートアクト(20分)、後半3人がメインアクト(35分)という構成だ。前の3人は初めてだが、後半は贅沢なマッチング。

赤坂Graffiti組や、天窓のヒグチアイ、スイッチの吉村かおり&松本佳奈などにも惹かれたが、ここは前夜騒動があったチェルシーホテルに程近いgee-ge へ。

チェルシーホテルの地下への階段入口には、警官が仁王立ち。ビル前にはいまだに多数のマスコミのカメラが張り番中。もう何もここからニュースは出ないだろうが、報道番組の中継があるのだろう。この理解不能な狂気は、しばらく話題となること必定。犯人は前科もあるし、「それでも生きていく」みたいな悲劇は見たくないのだが。


さて、気を取り直して音楽の楽園、gee-geへ。ハルカに間に合わず、調度RIKOのステージから。

RIKOは広島出身のギター弾き語り、21歳。ちょっと聞いただけで、素晴らしい素材だと確信できる歌とオーラ。また1人、才能ある若い女性ミュージシャンが、夢を抱いて、上京してきたな。すでに高校2年生のころから地元でライブ活動を始め、月1回以上はステージに立っていたというキャリア。ステージングはやステージ度胸は大したものだ。

上京から2ヵ月、早速お台場合衆国でラーメン屋のバイトを見つけ炎天下働いているという。生活費を稼ぎながらの音楽生活。様々な辛苦が待っているだろうが、彼女の歌を聞いていると、この子は大丈夫だと思わされる。その歌が、軽薄さや妄想ではなく、地に足がついているのだ。芯の強さが曲から滲み出ている。

強く印象に残った地の強さと、音楽センス。それを3曲目に歌った「証」で特に感じた。同名の曲をヒグチアイも歌っていて、頭の中で比較してしまったが、インパクトではさすがにヒグチアイに敵わないが、Rikoのこのミドルバラードはまるで阿部真央のよう。傲慢にさえ見える若さの裏に、穏やかな慈愛を感じさせる語り口。考えて歌っているのだろうが、なんとも自然で、説得力がある。歌詞を自然に音にのせられるセンス、役柄に入り込む役者のような素質が素晴らしい。

そして、最後に歌った「なんて歌って素晴らしいのでしょう」という、某超有名ミュージカルの名曲のようなタイトルwがまた、彼女の音楽に望む心持ちを素直に表していて思いっきり共感。ちょっと稚拙なところもある曲だが、彼女が音楽を心底楽しんでいて、そこに人生をかけることに一片の悔いもなし、と心から思っていることが伝わってくる。彼女はきっと、へこたれない。音楽を愛しているからという強いメッセージが、響いてくる。阿部真央のように、彼女には伸びて欲しいなあ。

ちなみに彼女が先輩歌手の誰と一番似ているか考えてみると、実は服部祐民子なんじゃなかろうか。RIKOが知るはずもない大先輩だが、彼女の歌から感じる強さがこの大先輩に通じる。服部祐民子へ思い入れが強い保阪さんには否定されるかもしれないけどね(笑)もう少し美意識が磨かれたらいい線いくと思うのだけど、どうでしょう、保P?

<RIKOセットリスト>
1)こっちを向いて
2)プラス思考
3)証
4)なんて歌って素晴らしいのでしょう

追記:早速、購入した彼女のアルバムの中に「僕らの夢」という曲があった。その歌詞を聞いて、第一印象が外れてなかったと確信した。その歌詞はこうだ。

音譜辛いこと 苦しいこと 待っていて 思い通りにいかなくて いくつも流した悔し涙 それでも諦めない 転んでも何度でも立ち上がる ~~ そこで終わってしまうんでしょう 限りなく続いていく可能性を信じて 必ずたどり着くと抱いた僕らの大きな夢 どんな困難も乗り越えて行こう 共に~音譜

そのままじゃないか(笑)彼女は行動と、歌詞と、話すことが一致している。何のてらいも隠し立てもなく、全身でぶつかっていこうという姿勢。いいよね。ふてぶてしく歌っていって欲しいな(笑)


続いてショートアクトの最後は京都から来た松尾優、ピアノ弾き語りだ。

ここにも才能がいた(笑)そればっかりで恐縮だが、gee-geの1周年ライブを後半の3人と共に飾るにふさわしい実力。なかなかチャーミングなお嬢様風の彼女。この手のライブでは珍しい、ピアノのインストを1曲入れるなど、多分幼いころから学んできたクラシックピアノの素養を強調したセット。

ただ、東京のライブシーンには、ピアノ弾き語りに関しては、奇才天才異才がゾロゾロ。彼女のお嬢様風の試みがその中で飛び抜けられるか、ちょっと判断留保。特に今夜、この後に出てきた本物の異才、いいくぼさおりと比べ、松尾優の印象はかなり薄れてしまった。クラシックの弾き手としては、いいくぼさおりの方が上手に聞こえるし、そのエンターテイメント性は断然、いいくぼさおりが上だからな。

同様にギター弾き語りの若きエース、河合杏林とRIKOも比べられたろうが、こちらはタイプが違ったし、杏林ちゃんが不調だったのでそれほど、差は目立たず。しかし、ショートアクトとメインアクトで同じタイプを揃えた鉄平さんの、親心みたいなものを感じる今夜のブッキングだったね。

<松尾優セットリスト>
1)チョコレートキス
2)追いかけて
3)楽園(ピアノインスト)
4)私があなたにできること


さあ、そして本日のメインアクト3人の登場だ。トップは杉恵ゆりか。広島(福山)出身。今夜はベースとカホンのサポート有りで3ピースだ。

小っちゃい(笑)それに続いて、いつもは「幼い」という感想を抱いてたのだが、今夜のステージを見て、彼女への認識をおおいに改めた。今夜の彼女はとても大人っぽかったのだ。終盤2曲をサポート抜きでピアノ弾き語りしたが、嘘をつかれ切なくても大人の反応をする女性になりきっていて、もう惚れてしまいそう。

ダイナソーとか、マワリーの妹分として歌っていたころ(といっても、この1~2年の話だが)から彼女のステージは時折見てきたが、その声がアニメ系ということもあり、どこか対象外だった。ところが、今夜はスイートスポットに入ってきたものだから驚いてしまった。

ライブの後、本人にも言ったら「私も20歳になりましたから」と返されてしまった(笑)20歳になったから禁煙するみたいなノリ。勿論、ノリノリの元気POPs路線を捨てた訳ではないそうなので、これまでのファンの方もご安心を。

で、改めて聞きなおすと、彼女の王道ポップスなメロディーメーカーとしてのセンスに感心しきり。うーん、彼女は自分をよく知っている。自分の声で歌った場合、どうしたら印象的なフレーズになるか、すごく考えていて、とてもキャッチー。彼女の曲は、歌う人を選ぶと思うが、はまったらけっこう強力ではないか。例えばZONEが杉恵ゆりかの曲を歌ったら、ヒットするのでは。

今夜の選曲で特に気に入ったのは、「あなたはあたしに嘘をつく」。まだ音源になっていないのが残念だが、まさに大人の杉恵ゆりかがそこにいた1曲だ。また聞きたし。ライブに行くしかないね。

そして、最後に歌った「風になりたい」。今夜は全体的にバラードでまとめてきたが、それが一本調子ではなく、決して飽きることはなかった。これだけ、バラード続けると達者なアーティストでもだれるのだが、彼女の歌声が惹きつける。ポップな曲では、敬遠したその声が逆にバラードにこんなにはまるとは、考えてもみなかった。心に響いてくる。この曲はまた切なさと力強さが同居した、印象深い曲だった。

そんなわけで今後、彼女の優先順位は上げようと思った次第。初めてCDも購入しました。いままでスマン。

<セットリスト>
1)夢中少女?(♫愛してるって言われたいお年ごろ)
2)虹の小道
3)ポカリ         
4)?(♫メトロ どこかへ連れて行って)
5)花びらのラブレター
6)あなたはあたしに嘘をつく
7)風になりたい


メインの2番手は、こちらも20歳のギター弾き語り、河合杏林だ。

彼女のライブも時おり見ているが、その透明感ある美声はやはり今夜も印象的。かわいいのだけど、がっつりギターを弾き、エフェクターやループを使いこなして奥行きある音を作り出す音楽性と実力はさすが。天は二物を与えた。

ただ今夜は声がちょっと不調。ときおり喉にひっかかったようになり、ピッチもずれる。ポリープとか出来たりしてないと診断受けているそうだが、声帯って実は結構繊細な筋肉だから、大切にして欲しいな。杏林の声は、本当に素晴らしいのだから。

実際、その声があまりに伸びやかに響き、エフェクターで増幅するギター音やループを使ったリズム音の密度が濃いため、1曲聞いただけでフルコースを食べたような満腹感。3曲、4曲と聞いていくと、お腹がはちきれそうな感覚さえ。

でも、最後に一服の清涼剤のような「また、明日。」で、改めて彼女にほれぼれ。この曲は、文句なしに爽やかで、癒される。彼女に1番ぴったり。この曲をこういう風に歌えるというだけで、河合杏林は合格です!(って何の、笑)

<セットリスト>
1)?(♫魔法をかけて~)
2)Shutter
3)蝉の声?
4)左胸の短冊
5)MONSTaR
6)また、明日。


さあ、そして今夜のオオトリは異才のピアノガール「いいくぼさおり」だ。

もはや「」で囲みたくなる、記号のような存在。いいくぼさおりという一つのジャンルを確立していて、何人にも似ていない絶対的存在。「小林未郁」というジャンルも怖いが(笑)、いいくぼさおりの才能もまた恐ろしい。その楽曲とエンターテイニングなステージを、「私、何で歌っているのか、いまだに分からないんです」と独白する思索家が生み出していいるのだから、その才能の底は全く見えない。

発掘し、育て、共に曲と音を作り出すプロデューサーの保坂さんの力も勿論あるのだが、ステージの上では彼女1人。彼女がピアノと共に紡ぎだすステージは、笑いあり、興奮あり、コール&レスポンスあり、切なさあり、涙さえ溢れる。

いまや定番、名曲とさえ言える?風格の「ベランダでボー」を始め、「最後に笑おう」などのコメディアンヌ的な見せ方は素晴らしい。作詞が工夫されているだけでなく、それを絶妙な間や抑揚で歌い上げる彼女に脱帽。ベートーベンやモーツアルトを換骨堕胎して、軽やかな指使いで難易度高いパッセージを取り込み聞く者をはっとさせつつ、自らのオリジナル曲にしてしまう技量はさすが。

だが、何よりもその真骨頂はやはりバラードだ。切々と歌い上げる「風が変わる」や「歯車」では、本当に心をつかまれるよう。でも、何より今夜聞きたかったのが「叫び」であり、アンコールで歌ってくれた「向日葵」。特に後者は夏が終わる前に聞いておきたかったのだ。

「向日葵」は、もう前奏から涙が出そうになる。彼女の感受性が、伝染する。絶対音感を持っていても、その音を外さずに歌うことは難しいものだが、彼女はピタッと音を当ててくる。その上で、抑えて絞り出すように出す細い声を、微妙にゆらがせるから、聞く側は不安や心細ささえ感じてしまう。音程には絶対的な安定感があるから、歌い手への不安などは微塵も感じず、その不安はすべて自分の心に返ってくる。切々と、一つ一つの言葉に心をこめ、命をこめて絞り出すその声に感動を禁じ得ないのだ。

0)Happy Birthday gee-ge
1)最後に笑おう
2)ベランダでボー
3)風が変わる
4)恋?(新曲)
5)アイガクライネ
6)叫び
7)歯車
en. 向日葵

うーん、gee-ge1周年の9月一発目を飾った鉄ロック。今夜は最高のスタートとなったのは間違いないね。素晴らしいぜ!








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