2011/8/19 Rioko 初ライブ&ワンマン@三軒茶屋 | 音楽偏遊

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「This Is Me」@三軒茶屋グレープフルーツムーン
Rioko 初ライブ(ワンマン)
w/叶高(vo)小林真人(key)榊原長紀(gt)
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「今日初めてライブハウスというものに入りました」という、熊本出身の驚きの20歳がこの日、人生初のライブに挑んだ。しかもワンマン!しかも三軒茶屋GrapefruitMoonーー!!だ、大丈夫か?

ところが、彼女は僕の想像を大きく上回った。縁あって居合わせた40人超のお客さんが多分そこで感じたのは、Riokoという新たなスター誕生の可能性だったろう。そう、可能性だけどね。

粗削りだが、初ライブで歌と表現だけで会場を堂々と自分の色に染める。いくつかの曲では、聴くものを圧倒さえした。何十回とライブしていても、それができない歌手もいる。天真爛漫のようでいて、打ち出される日本刀のように固い決意を持ち、その熱意は真っ赤だった。面白い存在!

ライブのタイトルは「This Is Me」=これが私よ!だ。歌手を目指して、一人熊本から上京してきて半年。その第一歩を踏み出した今の自分のありったけを見て貰いたい。そんな気持ちが込められていた。

その狙いは成功しただろう。ライブは2部構成。1部7曲は全て洋楽カバー。2部7曲(詩の朗読含む)はオリジナル3曲を含め全て日本語。この前半戦で、今の彼女の立ち位置が鮮明になった。

お客さんが席に落ち着くのを見計らってやや暗くなった会場に、カラオケでアッパーな曲が流れる。その音にのって、後部の入口からハンドマイクで歌いながら、加藤ミリヤのように登場だ。曲はThis Is Me。

初ライブのタイトルに貰ったこの曲は、ディズニー制作の青春映画「Camp Rock」の中で歌われたポップなナンバー。主役のDemi Lovatoが元気一杯にステージ上から「これが私よ、本当の私を分かって」と力強く訴える。

これが今のRiokoにぴったり。黒のハットに赤毛のウイッグ!、黒Tシャツにデニムのショートパンツ、長い足を若々しくさらす。洋楽だけの青春チューンを聞かす1部の構成を考え付いた時に、もうこの衣装を思い付いていたのかもね。

そして、1部のハイライトが師匠とのデュエット3連発だ。師匠とは、あのサーカスのメンバー叶高だ。

Riokoの声は、伸びやかで若々しいが、けっして軽くはない。中低音がとくに力強く、時に黒人のような唸りさえ響かす。その歌いっぷりは、スケールが大きい。小さくまとまらず、大きく歌え。それはまさに師匠が伸ばそうと考えてる点なのだろう。

デュエットの最後に選んだBeauty&Beastでは、プロの師匠の声さえ飲み込み、美女と野獣の世界を十分に堪能させてくれた。英語の歌でボーカルレッスンすると良いのは、よりスケール大きい発声を身につけられる点だ。日本語だと声帯の使い方が小さくなりがちだという。叶さんも、そんなこと意識して彼女を育てているのかもね。

<セットリスト>
1)This Is Me
2)Super Driver
3)ムーランルージュの曲(たぶん、Roxanne)
4Spain(チック・コリアの名曲)
5)I See The Light(塔の上のラプンツェルから、英語でね)
6)HELLO (Rionel Richieの僕も大好きなヒット曲)
7)Beauty&Beast

~休憩~

8)朗読ー小さな少女の物語 (Rioko中学時代にいじめにあっていた頃の作)
ーーオリジナル3曲ーー
9)Risky Blood
10)Happy Birthday To Dear My Friend
11)王子様へのラブソング
ーーカバー3曲ーー
12)ハミズキ
13)キスして抱き締めて
14)Everything

en.1 ピアノソロ「ゴンドラの船頭歌」
en.2 This Is Me

後半戦は日本語で。冒頭に詩の朗読。彼女が中学生のころに書いたというその詩は、空を飛びたくてビルの上から飛び降りてしまった少女の話。瑞々しい感性を感じさせることば。それを、表情豊かに読み聞かせる。とても上手い。メロディはなくても、音楽になっているのだ。その表現力や感性に期待が膨らむ。

そして、初めて書いたというオリジナル曲「Risky Blood」。上京して、東京の冷たさや疎外感を感じる中で、想いを込めたというが、クールでハードな曲調がなかなか格好良い。曲作りも期待。「王子様へのラブソング」は、ちょっとラブラブであれでしたが(笑)

そしてラスト3曲が再びカバー。特に最後のMISIAの「Everthing」が聞かせる。前に書いたようにスケールが大きく、太さと艶を合わせ持つきれいな声で熱唱。これだけ感動的なカバーは聞いたことがない。鳥肌がたった。うーん、また聞きたいぞ。

アンコールがまた彼女らしい。幼い頃から弾いてきたピアノこそ、彼女の音楽の原点。小学生のころに弾いて、母親から「心が温かくなる曲ね」といわれた練習曲を、この日熊本から彼女を応援しにきた親のために。そしてまた、自分のルーツを紹介するために、このクラシックの小曲を軽やかに弾いてみせた。

そしてラストは再び、今度はアコースティックにサポートメンバーと「This Is Me」。この曲で始まり、この曲で終わりたかったという彼女の気持ちとはなんだろう。

曲の歌詞にこんなフレーズがある。音譜No more hiding who I want to be~I'm exactly where I'm suppose to be, now音譜(どんな人間になりたいとか、もう隠したりしないわ ~ 今、私はまさに居るべきところに居るのだから)。稚拙な訳で申し訳ない。でも、そういう気持ちなのだ。

「歌手になるため東京にきました」「大きな歌手になります」そう、堂々と宣言した彼女のこれからに大いに期待したい。

次のライブは冬ごろとのこと。オリジナル中心にするらしい。さあ、どんな歌を聞かせてくれるか楽しみだ。