2011/6/20 坂本麗衣 干場かなえ 詩 オガワマユ | 音楽偏遊

音楽偏遊

最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

今夜は久し振りに坂本麗衣が聞けると、ワクワクしながら、またまた渋谷gee-geへ。その他の出演者も粒揃いで、楽しみなブッキングだ。特に鍵盤弾き語りの個性派4人の競演(1人は王道派だがw)が、興味深い。

その前に、2人の若手ギター弾き語りが登場。

最初の伊藤ひろのは終わりの方しか聞けず。明るく伸びやかな声で頑張ってるが、まだこれから。発声と腕を磨こう。

2番手は郁彩。最初から、ファルセットでバラード調の導入部をきれいに、魅力的に歌いあげる。地声にも張りがあり、声量もある。何より、色々な声を巧みに使い分け、その声質もなかなかセクシー。エロくはないけどね。スケール感が出てきたと思う。

これだけ歌えるなら、もはや駆け出しとは言えないな。鉄平さんの言葉を借りれば、どのライブハウスに出ても見劣りしないはず。どんどん活躍の場を広げたら良い。

しかしgee-geで、何度も彼女の歌を聞いてきたが、今夜が一番感銘した。上達したのか、僕の気分にはまったのか。新しい音源は早速ゲット。CDでもよく聞いてみたくなった。

セットリスト
1)?
2)フリー
3)デッドライン
4)赤い糸


さあ、そしてここから個性的な豪華鍵盤歌姫たちの競演だ。そのトップバッターは、いきなり濃い「詩~uta~」。gee-geのブッキングライブに初登場だ。

詩ちゃんはノマドとO-crestで何度も聞いているが、濃いんだよね~。キャラも曲も声も。その全てが見事に一致していて、独自の濃縮果汁のような、というかアルコール度数の高い酒のような世界観が秀逸。低い強い声がボディブローのように響いてくる。最初のうちはどうってことないと油断していると、じわじわ効いてきて、段々やばくなる。

彼女の歌の特徴は、豊かなイメージと色調。彼女自身が役者のように、役に入りきって演じるように歌うことで、単なる歌を超え全身表現活動のよう。

その色彩は淡い水彩ではない。濃い色を混ぜ、塗り重ねた油絵のようだ。これだけこってりした絵を描ける女性シンガーソングライターは、日本では珍しい。違うスタイルだが、ピアノ弾き語りのヒナタカコも濃い油絵だが、彼女は色使いがもう少し明るいかな。

1)無人のパレット
2)月ときどき太陽
3)ドミノ倒し
4)新しい朝
5)6月

この日は、ピアノいっくんのサポートを得て、最後の「6月」を除きハンドマイクで、のびのびと全身で表現していく。個人的には、ドミノ倒しが好きだ。


続いてオガワマユが登場。彼女も8月のクアトロワンマンを見据えて、連日精力的にライブしている現在売り出し中の存在だ。

彼女も、素晴らしく個性的で独特。声がポップスというより薬師丸ひろ子のようなクラシック。しかし、声楽的かというと全く違って、彼女しかできない不思議な発声で特徴的な金属的な音を出す。

何だろう。多分、他の人と違い、鼻腔のみを楽器のように使う発声に、幼い頃からはまってしまったのだろう。だから、彼女が歌に強弱をつける時に、段階的に目盛りを上げ下げするのではなく、ホゥワーンと空気の押し出しで調整している感じ。まるでアコーディオンのように鼻腔を広げたり縮めたりしているイメージを抱いてしまう。

セットリスト
1)魔法
2)rhythm
3)新しい奇跡
4)モンスター
5)singing like baby

その発声が、意外と面白い効果を生む。モンスターやsinging like babyなど、不思議な余韻をひく。Rhodesピアノのようだね。


さてトリ前は干場かなえ。

彼女は個性派というより王道派。正しい綺麗な発声で、伸びやかな美声、温もりある歌いまわし。それに、端正なピアノ伴奏も加わり落ち着きがあり、聞かせるステージ。

前に晴れ豆で見た時は、ハンドマイクで豪華サポート陣を従えミュージカル曲に挑むなど、芸域を広げるようトライしていた。今夜は、1人でピアノ弾き語りで古典的な選曲。それがとても安定感があり、癒される。企業がCMに起用したくなるのもわかるなぁ。

今夜はそんなCM曲も2曲披露してくれた。浜辺の歌は言わずとしれた日本の古典。よく、声楽家もコンサートで歌い高貴な空気を醸すが、干場かなえの歌は優しさを感じて、より身近。誰にでも親しんで欲しい互助会として、特に年配層が郷愁なくして聞けない浜辺の歌を、彼女の柔らかな歌声でさりげなく背景に流すのは合ってるよ。

セットリスト
1)高速道路
2)?フィジカル(オリビアじゃないよ、笑)
3)浜辺の歌 (for互助会CM)
4)Life Is Smile(forバンダイ・アンパンマンKidsコレクションCM)
5)アズキイロ

個人的には、曲名が分からなかったが、フィジカルという言葉が印象的な2曲目がかなり気に入った。抽象や空想ではなく、リアルな人の声や温もりを求める人間のサガみたいなものが現れていた。確か高校時代に作ったと言っていたが、才能だよね。

そして、才能が際立ってくれば、色々なところから声がかかるものだ。彼女のように、次々とCM曲の依頼も入るのだ。そう言えば、やもなおもアンパンマンやってたな(笑)


オオトリは貫禄の坂本麗衣ビックリマーク もう、前出3人の鍵盤弾きと役者が違う感じだ。

1枚も2枚も上手と思うのは、坂本麗衣ファンの身贔屓ばかりではない(はずw)とにかく、聞き手を引き込む吸引力が違うのだ。一つ一つの言葉が、彼女の血肉のようで、聞き漏らせない。それを独特の歌い方で詩を絞り出すように歌い、体を投げ出すようにピアノを弾く。声の強さでなく、演奏のスタイルに迫力がある。

例えば詩ちゃんも能力を傾けて歌ってるが、坂本麗衣は全てをさらし、ぶつけてくる感じ。芸術系と体育会系の違いがある。その体育会的な側面は、無心に球を追う高校野球の球児のよう。それに加えて、楽曲が無茶苦茶良いのだ。切なく、やるせなく、無上のカタルシスで、うーん聞かせる。

Aメロの静かに抑えた導入部から、徐々に高める最初のサビ、少しテンションを高めたBメロ、さっきよりぐぐっと盛り上げる2度目のサビ、そこから汗を振り乱さんばかりに盛り上がるクライマックス。1曲の中でドラマを作る基本的な歌い方だが、彼女がこれをなんとも効果的にやるんだなあ。今夜も、僕も大好きな「空と海のように」や「遠くから」で格好良く魅せてくれた。

セットリスト
1)月明かりの部屋で
2)空と海のように
3)新曲(土砂降りver.)
4)遠くから

特に「1曲減らしても、今日は私の歌で一番長いこの曲をやりたかった」として最後に持ってきた「遠くから」が、今夜のライブのベストソング。感動的なクライマックスだった。うーん、ライブを見れば見るほど惚れるなあ。

サバサバした性格で、とても話しやすい。人間的な魅力もある。公式プロフによると、シンガーソングライターとして音楽活動を始めたのが1994年。1999年にメジャーデビューで、それから12年たっている訳だ。しかも、美形だよね。なんで、もっと華やかな活躍をしていないのかなあ。それが不思議。まあ不思議でない理由をいくらでも思いつくけど。

ま、そんなバックグラウンドは全く関係なく、自分としては「いいものはいい」。それだけです。そして、坂本麗衣の音楽は間違いなく良いのです。なんか力入ってるなあ、自分(笑)今後も聞き続けること間違いなしのアーティストに、いつのまにか自分の中でなっているなあと自覚する今日この頃、みなさんお元気ですか?熱射病で倒れませんように。