そんな気分を癒し、元気付けてくれるのは、やはり音楽。興奮するようなライブならなおいい。ということで、渋谷gee-geへ。そこには、ヒグチアイと京田未歩というメシアがいた。
やや遅く到着するとメインアクト1番手の杉恵ゆりかが演奏中。相変わらずちっちゃい(笑)が、元気一杯で、エネルギーに溢れている。バンドを率いて、今にも跳び跳ねそうなご機嫌なナンバー。思わず微笑んでしまう。ガンバレ~

転換時に最前列端の席に移動して、小柳ゆかりの登場を待つ。と、本人がニコニコとアンケートを配り歩いてる。出番直前なのに珍しくフレンドリーな感じ(笑)今夜の彼女は和みモードか?
実際、歌にもふわふわ感があって楽しげ。これまでの彼女のステージの印象は、あくまで僕の感想だが、尖んがって攻撃的で、自由で、迫力があるというもの。今夜のステージは、そんな印象と少し違った。
また、座った場所が悪かった。目の前のスピーカーからピアノの音ばかりが強く聞こえてきて、ボーカルが聞き取りづらい。やはり、中央から後方にかけての方が、音のバランスは良いんだよね。誤ったなあ。小柳ゆかりは、音の強弱をはっきりつけるタイプだけに、彼女の音楽を存分に堪能しようと思ったら、位置取りも気を付けねばな。
でも、おかげで桑井麻友のピアノは存分に楽しめた(笑)サポートのピアノ伴奏者は数多くいるが、そのピアノに聞き入ってしまうほど僕好みの鍵盤弾きは3人ほどしかいない。その一人は間違いなく麻友ちゃんだ。
彼女のピアノは実にダイナミック。力量がないアーティストに、この伴奏をつけたら、間違いなくピアノが食ってしまうだろう。桑井麻友が力一杯弾いて、ステージのバランスが崩れないという事は、いかに小柳ゆかりが優れた歌い手かの証拠だ。
麻友ちゃんのピアノの真髄が遺憾なく発揮されるのが、震災以降、小柳ゆかりライブで最後に歌うことが多い「Scilla」だ。何度か書いてるが、この曲の終盤は、ビアノが咆哮をあげ、断末魔の苦しみにのたうち回る。救いの歌を襲い来る破壊。その先に、人類はどんな希望を見つけるのか、問いかけてくる小柳ゆかりの代表作となりそうな鎮魂歌だ。
芸術は爆発だ。岡本太郎の渋谷駅に掲げられた「明日への神話」のような演奏の爆発で聞かせる名曲になるか。Scillaの花言葉は「あなたの死を悼む」だそうだ。
セットリスト
1)宿り木
2)ウソツキと三日月
3)熱病
4)Honesty
5)Scilla
続いてgee-ge初登場のchocolatre。女性ボーカル&キーボードがメインで、男性ベースとドラムが彼女を支えてる感じの3人組。
その名前はよく、strobe cafeやmona recordsで見掛けていたが、僕は初体験。出ているライブハウスは、どんなアーティストか想像する手掛かりになるが、chocolatreは推測通り、柔らかいカフェ音楽だった。
そういう音楽も好きだが、個人的には、chocolatreの刻んでいく時が乾燥気味なのが気になった。抽象的ですまん。何と言っていいかわからないのだが、潤い、色気、いや艶かなあ、みたいな何かがもう少し欲しかった。賢そうなんだけどね。
それはボーカルだけでなく、ベースとドラムにもいえる。特にベースにはもっと色気のあるリフを挟んで欲しかった。大きくくくれば同じ領域にいる、ハモハモやcossami、つばめcafeに比べ、何かが足りなかったかな。
3番手にヒグチアイ登場。
この日、個人的に彼女には感謝した。昨夜、天窓で今夜聞きにいくと本人に約束した(させられた?笑)ことが、この日の収拾のつかない仕事を早く終わらせる原動力になったのは間違いないからね。
時間的タイムリミットを強く意識すると、仕事をいかに効率的に片付けるか、頭がフル回転する。逆にリミットなしだと、だらだら終わりなく働いてしまいがち。生産性が悪化していく。加えて、結果としてのアウトプットも、効率的に動いた時の方が経験上、良いものになっている事が多い。かけた時間ではなく、閃きがいかに重要なことか。
さらに俯瞰すれば、生産性に限らず、競争力の向上には滅私奉公よりイノベーションの方が、実は大きな役割を果たすことが多い。おっと、音楽から大分脱線してしまった。戻ろう。
で、ヒグチアイのセットリスト。
1)巡る季節
2)合鍵(出番直前に完成させたという新曲)
3)ココロジェリーフィッシュ
4)東京
5)永遠のウォーカー
いきなり巡る季節。この曲、最近は最後にもってくることが多いのだが、最初に出してきた。新しいことに挑む予感にワクワクする。
すると案の定、2曲目に僅か数分前に完成したばかりという新曲を持ってきた。それが、今までのヒグチアイと少し違う、恋愛ソングなのだ。勢いに任せず、日常の中のリアルなシーンを切り取ったような、さりげなさ。
彼が合鍵をポストに残して去っていく。裸で別れようと切り出した彼。悪い人だわ、あなたは。私があなた無しでは生きていけないの知ってるくせに。リビングに残された片方だけの靴下……つんくか!ヒグチアイに何があった(笑)聞いていて何故か赤面ものだね。
歌から


新曲に続いて早くもココロジェリーフィッシュ。雨だからね。って、そんな簡単な理由で選曲した訳ではなかろうが、最近のライブの最後を飾る事が多い巡る記憶とココロ~をこの時点で歌ってしまった。とすると、もしや本日の最後はあの曲か?
彼女のMCは、次に歌う曲への導入の場合が多い。今夜のイベント名は「東京うたの日」。渋谷界隈の複数のライブハウスが同一タイトルで開催中とのトークを聞けば、次は東京だね、とわかる。で、やっぱり(笑)
また、次にやる曲を意識しながらトークしてるので、手が先回りして次の曲の始まりの和音を弾いたりもする。ラストの曲前トークで、ポロンと鳴らした和音はやはりあの曲だった。永遠のウォーカー。
最近封印してたのか、この曲に頼らぬライブを自らに課していたのか、とんとご無沙汰だったこの曲。久し振りに聞くと、その過剰なまでの強引さの内、「過剰」の部分が抑えられ、力強さを巧みに表現していた。うん、上手くなったのかな。やはり、ヒグチアイは聞いていて興奮するし、面白い。今夜も良いライブだった。
さあ、そしてラストは京田未歩。自分は彼女のライブ初めて。でも、彼女は昔から活躍している歌い手。トリを任すに足る何かを聞かせてくれるだろう。そんな期待を胸にのぞむと、期待を上回るナイスパフォーマンス!ここにも、いいアーティストがいたあ。
曲名はさっぱり分からないのだが、サビのフレーズは

1)

2)

3)

4)Stand By Me(高3の時作ったという彼女のオリジナル)
5)

6)東京タワー
京田未歩はピアノ弾き語り。ジャズ用かと思える、きれいなピンクのワンピに白いシースルーのトップ。そこにドラム、ベース、そして楽器持たないイケメン1人=男性コーラス?という編成。どんな音楽かワクワクしてくる。
ジャズっぽい曲を想像していたら、最初の2曲のタイトルからも想像できるように、ちょっとオールディーズっぽい、ご機嫌な大人のロック!ノレルぜ!
男性コーラスも格好良く、京田未歩との掛け合いも絶妙。いや、彼女が彼の音を絶妙なインアウトで引き出す。また、3人のサポート陣と良いタイミングでアイコンタクトを交わしながら、音楽を作っていく。コンダクターのように。なんかいい感じ。
3曲目では、コーラスの彼がメインでラップ。そこに彼女が被せていく。その間合いがぴったりで、聞いていて嬉しくなる。21歳の若者らしい青さと勢いがある彼のラップも上手い。
しかも、感動的に素晴らしいのは、ドラムとベースのリズム隊の実力。ドラムだけ切り取って聞いても楽しめる。元メジャーバンドの一員と紹介されてたが、リズム一つ刻むのも、こんなにアマチュアドラマーと差が出るのかと驚き。だって叩いてる太鼓は同じなのに、手数が特に多い訳でもないのに音の厚さや表現の豊かさが段違い。
最初のうちは、ボーカリストの魅力が伝わってこなかったが、そのパフォーマンス全体で、ステージを作る力や皆で作り出すグルーヴの要でうまいフレーズを効果的に決める歌で、京田未歩にぐいぐいと惹き付けられていく。彼女の陽性で弾けるエネルギーと、心から音楽を楽しんでいる姿に動かされた。
楽しい。間違いなくまた聞きたいアーティストだ。さすが、ヒグチアイの後にトリを努めるだけある。今後もgee-geで直ちょく歌うというから、またgee-geに来る日が増えそうだ(笑)