個人的には、応援しているヒグチアイがオープニングアクトに出る事も、何よりの楽しみだった。デビュー10年クラスのキャリアを誇るお姉さんたち4人を向こうに、平成元年生まれがどれだけインパクトを残せるかが注目ポイントだ。
ヒグチアイの歌には、短時間でも、誰もがその力技(笑)に驚きを覚えずにいられない衝撃がある。好き嫌いは人それぞれだが、先輩らとがっぷり四つに組んでどこまでやれるか、現在の彼女の力量を推し測れるいい機会だ。1回目の見田村千晴も健闘したしね。

とまれ、今夜は連れがいたので、開演の18:30まで酒を飲み色々話す。1人でないと、待ち時間も楽しい。その代わり、こそこそ曲名とかメモるの気恥ずかしいので、ゆったりライブを楽しむ事にする。なので今夜のレポはセトリなしで。

1曲目は青い春だったが、その太く強く深い声で、パワフルに歌いはじめるや、会場がざわつく。このイベントの前身、FlowerVoices時代からの音楽ファンは、そのままその世代のミュージシャンを応援している例が多く、ヒグチアイのような新世代を知らなくても珍しくない。でも、昔から音楽ライブに頻繁に足を運んでいる、そんな耳の肥えたファンにも、ヒグチアイは鮮烈だったようだ。
2曲目&ラストは「巡る季節」。まだ音源にしてない最新の2曲を持ってきた。今の自分の到達点で勝負しようという意気込みが感じられる選曲。先輩らの演奏後、本人は「まだまだです」と、すっきりしていない様子だったが、それは彼女がかなり高いところを目指している証拠。少女よ、悩んで大きくなれ!(笑)
それでもSHUUBIらを差し置いて、たった2曲しか歌わなかったヒグチアイを一番気に入ったという知人もいた。その言葉、自分の事のように嬉しかった。

まあ何と比較するかだが、ライブハウスのブッキングで4~5組が出演するライブでは通常、上手い人もいれば、そうでない人もいるもの。しかしFlowersは、SHUUBIと辻香織という実力派アーティストがホストとして、彼女達がリスペクトする女性シンガーソングライターを毎回2組招くという企画。必然的に粒揃いになる。
1回目のゲストがハセガワミヤコと拝郷メイコ、今回が伊藤サチコと柳田久美子だ。次回以降は玉城ちはるやヒメノアキラ、興梠マリ、池田綾子、松本英子クラスが出演するのだろう。誰が出ても楽しみな限りだ。
また、gee-ge推薦枠のオープニングアクトも興味深い。見田村千晴、ヒグチアイは予想通りで、納得の人選。3回目以降、gee-geが誰を持ってくるか。個人的にはRihwa、斉藤麻里、小柳ゆかり、宝美、変わり種ならチャラン・ポ・ランタン辺りをリクエスト。鉄平さんなら、小南泰葉ら押してくるかな。木下直子、戸城佳南江、坂本麗衣らはニューフェースではなく、ホスト枠だろうしね。

辻香織はバンドもやるし、アイドルのようなポップスも似合うなど色々な顔を持つが、今回はフォークで攻めてきた。最近、原点回帰を意識しているそうで、どこか懐かしさに満ちたメロディーを、優しくギターアルペジオで綴っていく。それは、ロックのように盛り上がるものではないが、彼女ならではの優しさに満ちていた。
また、ボケを自認しながらも、トークで巧みに笑いをとる。一方で、とても生真面目に進行をコントロールする。沢山のステージ経験をしっかり自らのものにして、ここまで生きてきたしたたかさと努力の裏付けを見る思い。
小さな体も、酔ってよく千鳥足になるから「千鳥先輩」と今回呼ばれまくったキャラも愛嬌。決して単なるボケじゃないから、ファンもずっと着いてくるのだ。
そんな彼女の、フォークなトリのパフォーマンスから逆算したかのように、この日の他の3人とも、落ち着いたアコースティックな展開。
むしろ、少し歯車が噛み合ってないところも。何かちょっとした事が原因なのだろうが、SHUUBIも辻香織も演奏で小さなミスを連発するという珍しい光景が度々。どうしたのかな。まさか、ヒグチアイのインパクトが大きかった?そんなことはないだろうが。

岩手出身ということで、震災で色々あったというトークは重い。しかし、それを影とすることなく、一本のアコギでグルーヴを作り出していく様はさすが。最近はミルキータンジェリンというバンドも率いて活躍しており、芯の通ったボーカルは、安定感がある。
イーハトープの歌を、SHUUBIのリクエストでホスト2人と楽しそうに演奏。先輩、先輩と2人をたてて恐縮しきりだったが、演奏ではがっつり自曲はリードしていた。

少し甘ったれたような声を独特の発声で絞り出す。最初聞いた時は何がすごいのか、よく分からなかった。しかし、聞けば聞くほど、その歌は甘ったれたところが一つもない。それどころか、恐ろしいばかりに峻烈で、とことん突き詰めた先を描こうとしているのが、ヒリヒリと伝わってくる。
くしくもこの日、SHUUBIがコラボの際に言ったが、伊藤サチコの歌の魂は「ロック」なのだ。常在戦場。とことん、音楽に向き合い、音楽と戦っている戦士なのだ。若いアーティスト達でここまで戦っているのがどれだけいるか。こういう所はぜひ、見習って欲しいよね。そして、どこの誰にも真似できない、近づけさえできないような単独峰としてそびえて欲しい、伊藤サチコのように。ヒグチアイならできると思ってる。道は険しいけどね。
この日は、彼女の歌の中では優しい「花の気持ち」や、If The Girls Are Unitedや感情と水にも収録した「くすんだ壁」などとっつきやすい曲で惹きつけた。どこか心にも、頭にも残るんだよね。ぱあーっと明るくするタイプではないが、彼女を同世代のアーティストがみなリスペクトするの気持ち、分かる気がする。

こうして聞き比べると、本当に面白い。さすがにメジャー級で10年歌ってきただけあり、皆が皆、それぞれの確立した世界を持ち、それぞれの方法でしっかり訴えかけてくる。完成品のすごさ、それにこれほど間近で接する事のできる幸せさえ感じる。
ただ、今夜のSHUUBIは十分素敵なのだが、いつもに比べるとグルーヴがない。歌詞を忘れ、演奏し直すなどのトラブルも。どうしたのかな。絶好調の彼女のライブでは、抗うことできないほど引き込まれるのだが。まあ、そんな日もあるさ。
そして先述、辻香織のフォークなトリで締めた後の盛大なアンコールの手拍子の中、2人のホストが再登場。ゲスト&OAをステージに招き上げ、全員でイベントのテーマ曲「Flowers」を全員で演奏。


次のvol.3は8月13日。ゲストはまだ発表がなかったが誰になるのかな。ただ、この日は旅行中で多分行けない。うーん、残念。