しかも今夜、晴れ豆デビューとなったのは麗衣さんだけではなく、吉村かおりも初参戦。さらに斉藤麻里も出演し、まるでgee-geかnomadのよう。となれば、客も昨日見た面々がずらり(笑)かおりちゃんも麗衣さんも、アウェイ感をあまり感じずに、やれたのでは?
実際ステージでは、吉村かおりも斉藤麻里も、持ち味をしっかりアピールし、ポテンシャルを見せ付けた。その2人に輪をかけて好演したのが坂本麗衣。今夜も一段と熱を感じる素晴らしい演奏に、惚れ惚れしてしまった。
この日の出演は五組。一番手に登場したのが、スラッとした長身のピアノ弾き語り、田野崎文だ。
どことなく一ノ宮頼子に似たピアノだが、それほど暗い訳ではなく、むしろしっとり。顔は鈴木京香似で、声は鈴木ふき子似か。みな長身だから似ていると言ってるわけじゃないよ(笑)
歌の印象は、感受性が強く繊細。亡くなった母を想い作った「暖かなもの」では涙を流し、近くあるワンマンのタイトルとなった曲「Ajisai」は儚く淡い色彩を表現できていたと思う。いい歌い手です。
2番手は、ピアノ弾き語りのみょん。本名の一部をとったという。彼女も晴れ豆初出演。ステージ経験が少ないようで、トークも固い。曲は明るく元気だが、自らの遠距離恋愛や友人をテーマにした詞は、やや私的。ちょっと普遍性が足りないので、共感しずらい。同じような作詞スタイルでやるなら、どう説得力を持たせるかが課題かな。
3番手の19:50に出てきたのが、パーカッションにまあびぃを従えて、またまたピアノ弾き語りの吉村かおりだ。
なんと彼女、この後に同じ代官山とはいえ約800m離れたLOOPに21:40から出演予定。ライブはしごという。しかーも、どちらも初出演の箱。客じゃないんだから(笑)そして、さらにその後、深夜バスに飛び乗り、明日からの大阪ライブ5連チャンに雪崩れ込むという。
自分だったらへばるな。しかし、彼女は意欲に満ちていてキラキラしている。この程度のこと、夢のためならへっちゃらよ、とでもいうように。今の彼女はきっと気力体力ともに充実しているのだ。
この日、ワンマンライブの件で新しい告知があった。春先に宣言したとおり、3ヶ月ごとにワンマンを開く計画で、その会場も徐々にステップアップしていきたいという。第一弾は7月10日(日)のランチライブ@北参道strobe cafe、第二弾は10月に恵比寿天窓.switchという所まで公表済み。今夜は来年1月に開くというその第三弾を、なんと???で開くというのだ。まだ確定じゃないので、?にしたが、それはswitchより広く、そしてO-crestやduo Music Exchangeなどよりは小さい、とてもおしゃれな街にある、変わった名前のライブハウスらしい(分かる?笑)
そしてまだ未定の第四弾開催予定は来年4月。多分、O-crestやduoクラスになるのではないだろうか。O-crestで230人。1年という短期間でそこまで集客力を伸ばせるのか、それはチャレンジでしかない。しかし、今挑まずしていつ挑むというのだ。そんな前向きな彼女を応援するファンは続々と増えつつある。この日も、晴れ前からLOOPへと吉村かおりと一緒にはしごしていった客が少なからずいた。
そんな吉村かおりの晴れ豆のセットリストはこちら。
1)ロマンチカ
2)雨傘
3)さよなら愛しき
4)海月
5)野うさぎかける
6)テールランプ
1時間後に開いたLOOPでのライブでは、まったく重ならないセットリストを披露している。これまで、鞭打って新曲を作り続けたことで、その持ち歌はかなり分厚くなってきた。例えば2時間のワンマンで15曲ぐらい歌うことになっても、今なら毎回違う趣向でセットリストを組めるだろう。アルバム「ハツ」を出した頃から、徐々に走ってきたが、今ターボに火が入り、一気に加速しつつある。このワンマンシリーズをやり遂げる来年4月時点で、どこまで彼女が成長しているか、それはそれは楽しみだ。
さきほど、みょんの音楽が私的と書いたが、吉村かおりの音楽は詩的、というか妄想的というか(笑)勿論、彼女も作詞の際には自らの体験に基づくところも多いのだろうが、それが作品として我々に披露された時、その歌詞の意味は………さっぱり分かりませーん、みたいなことが往々にしてある。
だって、普通は人が出てきて恋愛したり失恋したりするのだが、彼女の歌には人が(というか人の感情が)出てこないことは珍しくもないんだから(笑)かといって甘くもない。
普通の理路整然とした思考回路では判じきれない存在。楽曲が作り出すイメージは時に鮮烈であり、喜怒哀楽(特に喜が)強い。彼女は天才なのだ。その天才の描き出すおもちゃ箱のような音楽世界は楽しく、時にアリスの魔法の国のようであり、時に江戸の光景さえ浮かぶ不思議さ。それが、彼女の魅力であり、聞かずに語れない理由といえよう。
続いて4番手に登場したのが、斉藤麻里だ。本日、唯一のギター弾き語り。
吉村かおりがいま、上昇気流にのるべく加速中と書いたが、仲良しの斉藤麻里も負けてはいない。というか、先を行っている。すでに9月のO-crestでのワンマンに向けて、全力で走り出しているのだ。チケットは230枚。すでに40枚をさばき、今後どこまで伸ばせるか。彼女も全力疾走中だ。
最近、この世代のやる気が横溢していて、見ていて楽しい。お互いが刺激しあう友人であり、ライバルであるのだろう。この2人に、木下直子と詩~uta~の2人を加えた4人でハイフォーなるグループ?を作り、7月18日にライブを予定している話は書いたと思う。木下直子も昨年、O-crestでワンマンを開き、詩ちゃんもそこで定期的に自主企画ライブを開いている。周囲に刺激が溢れていいるのだ。
勿論、皆が目指しているのはもっと上だ。阿部真央とかmiwaとか植村花菜とか、こないだまで近くで歌っていたアーティスト達がどんどん階段を登っていくのをみると、やるしかないという気にもなるのだろう。見田村千晴もタワレコから全国デビューだしねえ。ヒグチアイとかRiwhaとかも続くだろうしね。
さて、そんなやる気に満ちた斉藤麻里の今夜のライブも、充実した内容だった。歌い始めた途端に会場を自分の世界に変えられるアーティストは、伸びる可能性があると思うが、その力では彼女は出色の存在。最初の曲から一気に自分のペースに持ち込む。
今夜はその出だしでアンプトラブルがあり、歌い出しで中断。作った空気が乱れたが、すぐ気を取り直しトークで修正した。「夕焼けセンチメンタル」は大好きな曲で、楽しめた。
セットリスト
1)夕焼けセンチメンタル
2)人魚
3)タイムカプセル
4)前髪の記憶
5)ダイブ
個人的には、今夜1番良かったのが「前髪の記憶」。聞けば聞くほど、好きになる。駅のホームで別れる切なさが伝わる。
しかし、晴れ豆だからか、今夜はなかなか手拍子が起きない。それでも最後のダイブは、斉藤麻里の勢い勝ち。ノリノリの手拍子+コール&レスポンスに持ち込み、「イエーェ、イエーェ、イエーェ」の大合唱。会場はおおいに沸き立った。
それで火がついたのが、トリの坂本麗衣。ギターのイッフィー、パーカッションのなちゃんと3人編成。いつでも熱い演奏なのですが、「麻里ちゃんが盛り上げてたから、私も…」と力が入った演奏を繰り広げ、しびれたな。
で、のなちゃんのコーラスがまたいいんだ。コーラスというより、一緒に歌っている感じで、歌の中で力が入るところ、優しく響かせるところ、麗衣さんと同じ表情でハモっている。女性DUOみたい。女性太鼓たたきって、どうしてこう格好良くみえるのでしょう(笑)
セットリスト
1)愛のうた
2)I'm in Blue
3)風の向こうへ
4)明日の向こうへ
5)J-45
6)I love you,Because you are you
en.遠くから
もう、惚れてしまいます。いや、すでに惚れてます。このところ、かなりの頻度で彼女のアルバム「自画像」をエンドレスで聞いている。聞けば聞くほど、新たな発見があって面白い。彼女の書く歌詞が、すごく赤裸々に今の彼女自身を語っている。
自らをさらすことは勇気がいる。この「自画像」というタイトルのアルバムで、こうした曲の数々を世に出せるようになるまで、彼女の中にもいろいろ葛藤があったのかな、と想像してしまう。そして、今それを出せているということの強さを思わずにはいられない。
こないだJー45について書いたが、今夜もこの曲で最高に盛り上がった。全身でぶつかってくるような勢いで迫るこの曲は、まごうことなくロック。音楽を「ここが生きる場所」と断じる姿が格好良すぎる。作品は多くの場合フィクションなのだが、この曲は1人の歌に命をかけているシンガーソングライターのノンフィクションにしか聞こえない。そこがすごい。
そしてアンコールで歌った「遠くから」もすごい好み。


彼女のメロディラインが、すごく心に響く。どこか懐かしくもある。その辺りは世代なのかな。最近の若いアーティストの作品が、冷めてたり、おしゃれだったり、かわいかったり。それもいいんだけど、全身全麗というのが、僕らのスポ魂漫画世代は結構好きなんだな。だからヤバいんだ、坂本麗衣は。
今夜も素晴らしいライブであった。いつまでも、こんな音楽に浸っていたいよ。