

ライブは期待に違わぬ大盛況。客数だけだったら、もっとぎゅうぎゅうの満員になる日もあるが、出演者の皆が口々にMCで話していた通り「今日はすごい」ノリなのだ。鉄ロック史上、1、2を争う盛り上がりだったのではないか。とにかく、お客さんの手拍子のボリュームが飛び抜けており、しかもみな暖かい!出演者が煽ったからでなく、出演者と客が一体となって昂ぶっていく。こうなった時のライブは間違いなく、素晴らしい。
最初の2人、伊藤ひろのとayacaがライブハウスの空気を暖めた。そこに火を着けたのは、間違いなく3番手のRihwaだ。一気に室温を上昇させたと思いきや、続く荒牧リョウが大爆発。さらにその先へ先へと客をのせていく。そして、沸き上がった会場のエネルギーを、ゴロゴロと木下直子が転がし揺らし、オオトリの横田良子が美しく昇華させた…………まさにそんなライブだった。
まるで、水が液体から気体へと転じていく様相を、音楽で表現したかのような太い空気の流れが、今夜のgee-geにはあった。今にして思うと、この順番でなくてはいけなかったのかな。「起承転結」を作り出した出演順の妙というものが、僅か2~3時間のライブを、大河ドラマを凝縮したような濃い夜にしてくれた、と言ったら過言か。
その着火役となったギター弾き語りのRihwa。今夜は、さらにサポートギタリストとツインアコギで、ノリノリのステージを繰り広げた。
北海道在住のため、東京のライブは回数が多くはない。でも、すでにかなりのファンが間違いなく東京で彼女を応援している。その理由は、一度でも彼女のライブを体験したら分かる。その底抜けの明るさとチャーミングな笑顔、それでいながらSuperfly越智志帆にも追いつきそうな歌唱力、明るく伸びやかな声、グルーヴ感満載な楽曲。今夜も1曲目の「キリン」から、心をつかまれてしまった。
1)キリン
2)ギルティ
3)ディープスリープ
4)Right Now
5)カワイイお願い
6)My Way
カナダに住んでいる間に多分身につけたのであろう英語と、アメリカンロックやフォークロアのセンス。そんな体験もあって磨かれた楽曲作りのセンス、歌による表現の仕方が卓越しているのだ。2曲目のギルティでは、彼女のグルーヴに会場全体が引き込まれ皆力いっぱい手拍子をし始める。「ディープスリープ」の英語の歌いだしに、きっとお客さんの多くは「本物」を感じたことだろう。少なくとも自分は、そこで震えた。
そしてノリノリのRight Now~My Wayへの終盤は、こんな素晴らしいアーティストの歌を、こんな間近で聞ける喜びに満たされた。もはや感動レベル。あ、ちょっと褒めすぎか(笑)そのクオリティは十分メジャー級なのだ。
ギター弾き語り業界では、20歳のmiwaが大いに注目されているが、自分的にはすでに21歳のRihwaの方がその音楽性やステージング、タレント性でも上だと思ってる。同じギター弾き語りでは、今年ブレークを期す見田村千晴も大いに注目しているが、Rihwaの方が先に火が着いても全く不思議ではない。すごく期待している。
熱くなった会場に、次に登場したのが、これまたギター弾き語り、荒牧リョウだ。サポートにカホンを入れた彼女が、Rihwaに輪をかけて熱いステージを繰り広げ、会場は沸きに沸いた。
とにかくロックで、オープンで、格好良い。ストレートに彼女のハートが伝わってきて、その存在に共感している自分がいる。そのグルーヴに、体が踊りだしたくてウズウズする。声がまたいい。声帯は玉城ちはると似ているが、音楽はずっとガツガツ。そう、ルックスも含めあずままどかに近いか。いや、そんな他の誰かとどうこうでなく、荒牧リョウという存在が単独峰として屹立している。
1)輝いて
2)What Is My Life
3)Tears in The Earth
4)神様
5)I Just Say
最初の「輝き」でgee-geの壁が震えるほどの手拍子の嵐。そのまま、最後まですごい盛り上がり。彼女も会場のレスポンスの良さに気を良くして、会場にガンガンぶつけていく。それに又、お客さんも応えてのっていく。そんな双方向のコミュニケーションが、彼女の歌とギターを通じて繰り広げられていく。ああ、いいなあ、ライブって。
彼女の告知で知ったリリースしたばかりのフルアルバム「Colorfull」を早速ゲット。聞くのが楽しみだー。よくよく見ると、ベースサポートは板やん。おお、さすが。その板やんのブログでも「Colorfull」を紹介しており、こんな文章を転載していた。
「初めて『リョウ』の歌声を聴いた時に、まだ、これだけの自分を表現できるシンガーが日本に居るんだ。と、思わせてくれたのが最初のリョウ体験でしたね。それから、生で歌を聴くチャンスがあって、リョウの弾き語りで聴かせてもらったんだけど「もっと、リョウの歌を引き立たせるギターがあるハズ」って思って、その場で、ギターをあげる約束をして、後日、我が家の近所まで取りに来たリョウに「ボロボロ」になるまで使ってあげてよ」って、その頃僕がメインで使ってたマーティンをプレゼントしたんだけど、きっと僕の元に居るより、リョウにかき鳴らされて、幸せいっぱいなんじゃないかな?このアルバムの曲も、そのギターとかで作ってくれたりしたら、僕的には、本当に正しいプレゼントを、
的確なアーチストにプレゼントできて嬉しいです。これだけの、自分を歌い上げられるアーチストとは本当に、一生のうちに出逢えるか。出逢えないか。CDを手にした人がリョウを感じてください。ちなみに、僕はリョウの歌声に一目惚れの代表ですから。 野村義男」
おおっ、野村義男じゃないか。よっちゃんからギターもらったという話は、荒牧リョウ伝説になりつつあるよう。他の色々なところでも見かけた。
さらにYouTube見て驚き。リョウさん、毎月のように支援物資持って東北訪れ、避難所などで演奏しているんだね。素晴らしい。ますます、荒牧リョウという存在に惹かれた。
勿論、ライブ聞いていただけで、そんなことまで分かる訳はない。だが彼女がとても前向きなオーラを発している事、自分の歩んでいる道に疑いを抱いていないこと、誰にでも手を差し伸べられる人柄だということ、とても豊かな感受性を持っていること、そして勇気を振り絞って立ち向うタイプだということ――そんな彼女の魅力は、ステージからじわっと伝わってくる。だからこそ、彼女のアップテンポなナンバーに、お客さんも力強く応援したくなるのではないか。それが手拍子となり、会場をヒートアップした要因だったと思う。
さて、そんな嵐のような大手拍子の後に、木下直子が登場。
ピアノ弾き語り。ロックではない。「この出演順は何?私にどうしろって?」と笑いをとっておもむろに演奏を始めたら、もはやそこは彼女の音楽世界。いつもの、力強く懐の深い、暖かい音楽があふれ出てきて聞き入ってしまう。横田良子ではなく、木下直子を荒牧リヨウの後に持って来たのは正解だ。
1)ひまわり
2)夢の島
3)強がり、弱虫(新曲)
4)赤い靴のワルツ
5)愛ひとつ
6)生きとし生けるもの
久しぶりに聞いた「ひまわり」。ああ、夏だなあ(笑)この曲は木下直子の楽曲の中で、なんとなく気に入っている。いきなり最初に歌い出しものだから、ちょっと嬉しくなってしまった。彼女の演奏はドラマチックで、歌に表現力があり、とっても骨太。だからこそ、荒牧リョウで熱を持った会場もしっかり、どっしり受け止める。そして、彼女の繰り広げるドラマの中で、また新たな感動に包まれる。
特に「赤い靴のワルツ」は、


包容力がある、とは木下直子のようなうた唄いを言うのだろう。強いけど、癒されて、また聞きにいきたくなる。それはまた、彼女の人間力でもあるのだ。だから彼女は後輩のアーティストたちに姐さんとして慕われている。ついていきたくなるんだよね。
そして、オオトリはピアノ弾き語りの横田良子。
その柔らかくきれいな声、暖かい楽曲、心にすっと入り込んでくる歌詞。正統で、それでいてエモーショナル。いいなあ。
1)優しい花
2)僕の人生指南書
3)空
4)陽炎
5)?くじらになりたい?
自分に笑ってしまったのは、「僕の人生指南書」と気づかずに2曲目を聞きながら、ああこの歌詞いいなあ、なぜ頭の中にすっと入ってくるのだろうと思っていたら、サビで人生指南書と気付いたこと。実は前に聞いた時も、今夜とまったく同じ反応した(笑)


間違いなく素晴らしいのは、彼女がきれいな声で、一言一言をとても大切に歌っている点だ。そして、メロディ優先でなく、詩がもっとも伝わりやすいメロディになっているということだ。ソングメーカーとしての彼女の矜持なんだろうか。だから、伝わる。心によく響く。
ちょっと慌しく帰ってしまい、彼女に挨拶できなかったのが心残り。でも、また何度でも彼女のライブは見たいと思っているから。荒牧リョウと横田良子のツーマンもいずれ実現しそうで、その時はぜひ聞きにいかねばね。また、新しい楽しみができたな。
そんなこんなで、今夜のgee-geは充実満腹の一夜だった。
この場にいられて幸せだった、そう思えるライブは必ずしもそう多くはないが、今夜は間違いなくそんな一夜になった。