2011/5/13 坂本麗衣 小柳ゆかり 久乃@渋谷gee-ge | 音楽偏遊

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坂本麗衣と小柳ゆかりを聞きに渋谷gee-geへ。

仕事が20時過ぎまでかかると分かっていたので、ライフハウスに着くのが早くても20:40。最初から聞ける人は?と探したら、なーんと聞きたかった2人がいるじゃないですか。うれしや、ハレルヤ!

早くから時間空いてたら下北沢Each Feelingsか新宿sactに行ったかな、行かなかったかな。まあ、人生「もし」と振り返っても意味ない。今夜は渋谷へ一直線。麗衣さんの前、久乃の途中から聞けた。


石垣島出身の久乃は、島唄特有のこぶし、節回しと鍛えた声帯から響く太い声が魅力的。素朴なんだけど、歌詞はシンプルで都会的。逆に拙くもあるが、わかりやすい言葉がはっきりした声にのって、心にぐっと飛び込んでくる。

途中からだったけど、「似顔絵」「待ち合わせ」「ウソ」「輝き」などを聞けた。個人的には、一番シンプルな歌詞だった「待ち合わせ」がなんか、楽しかった。ああ、この女の子、待ちぼうけくらってるんだなあ、とまるで身近な街中の光景が目に浮かんできた。リアルな感覚を呼び起こされたのは、彼女の歌に説得力があったということなんだろうな。

面白いのは、力を入れ過ぎず、同じ表情で歌っているところ。表情というよりポジションが同じというか。表情の代わりに手の動きが声帯とリンクしているようで(笑)、それが強弱硬軟を強調それでいて、曲の表情を強調していた。島唄の魅惑的な節回しとあいまって、南国の海風も感じる。軽やかな奄美の我那覇美奈より、元ちとせに近い感じ。

5月25日に初アルバム「はじめての春夏秋冬」をリリースするとの告知。1980年11月24日生まれ。初というのはメジャー初という意味なんだろうなあ。これまでの彼女の音楽活動は知らないが、これから伸びれば、面白いアーティストになるかもしれないね。


さあ、そして待ちに待った坂本麗衣だ。

なぜか最近、急にに好きになってしまった。最近一番聞いてるアルバムは、もう間違いなく彼女の近作「自画像」。前回、このアルバムを購入してiPhoneに入れて聞いているうちに、ずぶずぶと底なし沼にはまっていくような感覚。ちょっと例え方が悪いか(笑)

彼女の独特の歌い方(伊藤サチコにも似ている)から繰り出される、不思議な響きをもった高音がかなりやばい。美人なお姉さん風でありながら、魂を投げ出すようにその高音を響かせて歌い上げる。ロマンのない想像をすれば多分、彼女は相当広い鼻腔があって、共鳴版のように声を響かせているのだ。その結果、声の波動の振幅が人並み以上に大きくなり、聞いている僕らの脳を揺さぶる。まあ、あくまで僕のイメージで、鼻腔の大小が分かるわけないが(笑)

何より僕が好きなのは、その音楽との向き合い方。本当に魂をぶつけているかのように、一音一音に力がこもっているのだ。曲の中に音譜僕らに必要なのは情熱というパワー 心を振るわせる沸いてくるパワー音譜とか、音譜かき鳴らし魂を込めて歌うんだ 感じるままに心のさまを歌え 愛の歌音譜とか、その歌詞にガツーンと打たれて、ノックダウンしそうになる。

さらに、さらに、彼女の存在がトータルに美しい。美形といえば美形なのだけど、そこがポイントではなく(そこがポイントの男子が多い点は否定しませんがw)、たたずまいというか、心の持ちようというか、目に見えない魂が美しい感じ。またまた彼女の曲の歌詞を借りれば音譜いつでも美意識は持っていたい 芸術は挑戦です音譜という事なのかな。

美意識を持って芸術に望むということは、とても大変なハードルを自らに課す。それは挑戦であり、自己との戦いでもあると思う。その戦いに、多分彼女もいろいろ紆余曲折はあったのだと思うけど、削ぎ落とし研ぎ澄ました境地に達している感じなのだ。潔く生死をかけた戦いに臨む武士のような美しさを感じると言ったら過言かなあ。

でも、だからといって、広く世に受け入れてもらえるかというと違ったりして難しいよなあ。それに人間、堕落するのは簡単で、毎日、半端じゃないと自らに言い聞かせ続けないとね。まだまだ終わらないよ、ここから攻めないと。明けない夜はないから--って、こうした文句も全部彼女のアルバム「自画像」の曲からの引用(Try Again)。

多分、ライブだけではここまで彼女にはまらなかったかもしれない。アルバム「自画像」の彼女自身に魅入られたのだ。アルバムに坂本麗衣が詰め込んだ歌詞、感性、魂の叫びが、自分と共鳴しているとつくづく思う。こうなってしまったら、もはや虜。本人に直接、そんなこと言えませんが(笑)

セットリスト
1)空と海のように
2)Oh!ダーリン
3)或る午後の日の衝動的なロック
4)
5)月明かりの部屋で


本日、オオトリは小柳ゆかり。

うーん、gee-geでこの日ブッキングしてる鉄平さんとかなり趣味が近いんだよなあ、多分。彼女も僕のどストライク。麗衣さんと同時に彼女も聞けるなんて、なんて至福。

セットリスト
1)アサガオ
2)
3)ドライブ(曲紹介でキライと言った気が…その方が通じるのは確かw)
4)ウソツキと三日月
5)オネスティ

さっき麗衣さんの歌詞で音譜いつでも美意識は持っていたい 芸術は挑戦です音譜というのを紹介したけど、これに通じるものを小柳ゆかりからも感じる。ただ、アプローチがこの2人では違うかな。

麗衣さんが理知的に、魂傾けて挑戦しているのに対し、小柳ゆかりは感性で挑んでいる感じ。小柳ゆかり独自の美意識が高いハードルを作りだしていて、そこに到達しようと音符で満ちた空間を泳いでいるようなのだ。もちろん、理性も感性もどちらも重要で、しかも両方持ち合わせていない人はいないから、その配分の違いが2人の個性の違いとして感じられているだけだけど。

また、その高いレベルに達するには、基本的な歌唱力がとても大事。思うように歌えないと、まったく気持ちよくないし、美しくもないからね。2人とも、しっかりした歌唱力・表現力を持っているのだ。

自分はそんなすごい美意識や感性を持ち合わせていないから、高い次元で音楽空間を泳いでいるアーティストがいると、もう嬉しくなってしまい顔がほころんでくる。小柳ゆかりは、間違いなく僕の顔をほころばす。

そして、彼女のステージにはもう一人、桑井真友というピアニストが強力な音楽を作り出している。その演奏は単なるサポートの域を超え、ダイナミックで攻撃的。生半可な声しか出ない歌手では全く太刀打ちできないだろうが、小柳ゆかりという素材とぶつかり合うことでプラスの化学反応を間違いなく引き起こしている。

ジャズのインプロビセーションのように掛け合いの中でお互いを高めあうような好演だと、彼女にも話したが、2人の組み合わせがいい。最近、よく歌っているSillaや、今日のドライブ(きらい?)のように彼女のピアノも聞き所の曲があって、その演奏がまた素晴らしいのだ。魂の彷徨のような演奏で、こんな訴えかけてくるピアノを弾くのは、女性ポップスでは矢野絢子やいいくぼさおりぐらいではないか。ジャズでは沢山いるけどね。

ああ、思い入れたっぷりに書き過ぎたなあ。ライブ直後は、いつも少しテンションが高い文章になりがちなので、少し割り引いて頂ければとも思いますが(笑)でも、この2人は今後も聞き続けたい存在であることは間違いなしだね。