わら人形(笑)
いま話題の小南泰葉のワンマンライブを、東京・南青山のライブハウス「月見る君思フ」へ見にいった。3月24日に予定していたが、大震災の影響で今日まで延期になっていたやつだ。
そのタイトルは、奇才スタンリー・キューブリックが映画化した「時計仕掛けのオレンジ」ならぬ「時計仕掛けのざくろ」。無軌道な暴力が迸り、善人の顔をした非人間性を痛烈に皮肉る「~オレンジ」をもじり、さらに弾けた果肉が毒々しい「ざくろ」にした彼女は何を思ったのだろうか。
ちなみにざくろの花言葉は「優雅な美しさ」で、婚姻と財富を象徴する吉木なのだという。小南泰葉の蒼ざめた禍々しさと美しさに、確かにざくろは通じている。その彼女から発する強烈なエネルギーはなんとも魅惑的。その不完全さ、いびつさ、妖しさが自分の心のどこかと共振する。
この日はバンド構成。メンバーはベース・菅野信昭(FoZZtone)、ギター・戸高賢史(ART-SCHOOL)、ピアノ・ハジメタル(ex.ミドリ)、ドラム・吉澤響(セカイイチ)といった顔ぶれ。なかなかすごいよね。その演奏は、まとまりがあり、うまく、客を見事にのせていく。さすがだ。
その音にのって、最初はとても素直なポップスに聞こえる曲を彼女が歌っていくにつれ、徐々に小南ワールドに。だって曲名が「藁人形売りの少女」や「世界同時多発ラブ仮病捏造バラード不法投棄」だったりするのだ。おどろおどろしく、そして厳かだ。
転換では、ベートーベンの第九が流れ、その壮大だが暗鬱とした雰囲気が小南泰葉と似合っている。ステージが進むにつれ、彼女の声が掠れ、ボーカルで聞かせる状況ではなくなっていったが、存在感があり、彼女の言葉には惹きつけられた。面白い。
会場の月見る君思フは150人も入れば満員だ。そこに多分200人ほどの客が入り、身動きもできない混みよう。彼女のカリスマ的な魅力がこうして人を集めているのだろう。
彼女を好きかそうでないか、個人的には実はまだ判断留保にしている。自分の中の琴線がもう少しで響きそうなので、今日こそと期待して来たが、自分の体調もよくなかったこともありまだ鳴り響かなかった。心のどこかは共振したのだが。まあ、彼女を聞く機会はまだまだあるので、引き続き要ウオッチ。今後の彼女がどう展開していくのかは、それはそれでとても楽しみだから。