まず、オープニングから3人による合作「宝箱」。桜の散る町で、また明日会えるかな♪と前向きな希望を、パートごとに違う組合わせのコーラスや、競うように歌うソロパートで、表現していく。即席と思えないクオリティ。前夜も11時過ぎまで練習したとか。力が入っている。
さあ、そしてソロ1番手は横田良子だ。こないだ誰かが王道という言葉を使っていたが、彼女はまさにそれ。伸びやかで温かみのある魅力的な声で、癖のない見事な発声と歌唱力で感動もたらす。心地良い風のようだ。
1)かげろう
2)空
3)そのままの君を
4)僕の人生指南書
5)今ここにいる
6)小さな奇跡
1曲目のかげろうから引き付ける。歌詞が心にすっと入ってくる。歌心があるんだなあ。2曲目の空に虹がかかるイメージとか、鮮やかな水彩画のよう。小さな奇跡では、日常の中に繰り返し訪れる小さな奇跡があれば、前向きに生きていけるよ、と優しく微笑む。とても素敵なアーティストだ。
2番手は見田村千晴。
相変わらずの存在感。艶のある通る声で、「暗い月をイメージしたような」(by木下直子)曲を歌い上げる。横田良子が押し付けない優しさを持つなら、見田村千晴の歌には、耳を塞いでもこじ開けて脳に響いてくるような貫通力がある。どこか尾崎豊にも通じるような。
ややもすると傲岸不遜に聞こえなくもないが、その声の魅力には抗えない。今は彼女自身が、歌うことが楽しくてしょうがないようだ。存分に畳み掛けてくる歌が、強い印象を残す。
セットリスト
1)ラプソディ
2)エピローグ
3)紙とペンがこの手にあれば
4)Wed Song made specially for true friend 曲名なし
5)明日がバスに乗って
6)始まり
7)寄り道
例えばタワレコ限定発売シングルとなった「始まり」。


この素晴らしい才能が、どっぷりと音の楽園に浸かれば、すごいことになりそう。逆に知が勝りすぎなければ良いのですが。
ラストは木下直子姐。
うーん、と唸ってしまうほど流石です。ソングメーカーとしても、シンガーとしても大物感が漂いつつある。彼女はどんどん進化してると思うけど、絶対的な木下直子という世界観があって、それが揺るがない。だから新しい曲を聞いても、すぐ彼女の曲だと分かる。
そのことの凄さ、安心感は大きい。そこは戻るべき港のようであり、マイホームのようである。頼れる姉御であり、母性なのだ。なるべくして、女性シンガーソングライター達の母親的な存在になりつつある。そんな持ち味が、彼女の歌の魅力にもなっている。
セットリスト
1)砂の花
2)赤いくつのワルツ
3)私を守るもの
4)ピアスとオレンジ
5)最後のうた?
6)うたのことのは
7)生きとし生けるもの
母性といえば「私を守るもの」。これは名曲で、思わず涙しそうになる。個人的には「ひまわり」も母性感じる大好きな曲で、そちらは夏になればまた聞けるだろうから楽しみだ。
しかし震災以降、多くの人に是非きいてもらいたい木下直子の曲の筆頭は、なんといっても最後に歌った「生きとし生けるもの」だ。
最近、色々な考えが巡る。直接の被災者でない多くの人が、同様に無力感や焦燥感を抱いてる。数年前の作品だから、意識してたわけないが、そんな人々に対してこの歌を通じ、彼女が語りかけているよう。生きている我々が頑張らねば、と。思いを噛み締めて、是非彼女のライブに来て、この曲を聞いて欲しいな。
そして最後に3人+コタロウ君で共作曲を再び。「こんな寂しい曲で良いの?」なんて言いながらバラード「月におやすみ」。
これだけ、個性的な面々が、声を一つにして優しく歌うことで生まれるハーモニー。それを聞ける贅沢。素晴らしいです。
当然のように、満員の会場からは激しいアンコールの手拍子。期待が広がるなか、再登場した3人のかけ合い賑やかに、今宵3曲目となる合作「SUN!」。会場と一緒におおいに盛り上がった。
実力派の3人が揃い、触発しあうと、こんなにも素敵なライブになる。こういうイベント、もっともっと開いて欲しいね。
そういう意味で、かつて表参道FABであったフラワーボイスはいいイベントだった。それが、ついに今週末、形を変えてここgeegeで復活する。全くもって楽しみなこと。
O.A.は見田村千晴だが、あのそうそうたる顔ぶれの前では、駆け出しにしかみえないね(笑)ハセカワミヤコ、拝郷メイコ、辻香織、SHUUBI!歴代ホスト勢揃い。新たな歴史がここに始まる予感。