まあ、そんな時はライブというのが僕のmedicine。ただ、逃避で聴く音楽は、余裕持って聞く時に比べ楽しめないもの。体調不良だとなお良くない。聞く側のコンディションも重要だよね。
この日もかなり疲れていたのだが、今夜のライブは心から楽しめた。僕の好きなアーティストばかり出演していて、興奮もの。ブッキングの鉄平ちゃんに感謝だ。
出演したのは、順に郁彩(イデア)、神山みさ、ゆうみ*ともみ、戸城佳南江、佐藤ひろこ、Tiny Sunの6組。イデアだけ初。神山、戸城、Tiny Sunの3組に至っては何度ライブ見たか数知れず。ゆうみともみの音楽はご機嫌だし、ひろこさんの素朴なギター弾き語りは滲みる。これで楽しめない訳がない。色々書きたいが、6人なので簡潔に。
まずトップバッターは郁彩イデア。若いお嬢様風ギター弾き語りで、今月geegeは5回目。この箱の月間出演回数記録をこの日、更新したという。
「まだライブ始めて日が浅く、修行のため鉄平さんに頼んで出させて貰っている」とか。ステージングは確かにこれからだが、歌は大したもの。特に深さと広がりのある声が魅力だ。極めて正統派(本人いわく王道w)なウタウタイで、自分の色、個性がないのが悩みというのも分かる。それは場数こなす中で、こだわりを見つけるしかないね。
1)三日月 (絢香カバー)
2)?
3)笑顔の向こう側
4)オリジナル (自分らしさを身につけようとしている自らをテーマにした新曲)
5)時を超えて
2番手は神山みさ。geege初登場というのが驚き。2日に一回はライブしてるのにね。生きている領域が、今や大きく違っているのだ。若手女性シンガーの登竜門のようになったgeegeに、みさちゃんのようなベテランは確かに違和感がある。ただキャリアの事だけじゃない。
震災後にボランティア仲間らと沢山の救援物資を集め、すでに2回も被災地に届けに行っている。被災者を思い、涙して、歌に救済への祈りを強く込める姿は瞠目する。その行動力、無私な心は敬意を抱かずにはいられない。アーティストの中では誰よりも「今できること」を実践している1人なのだ。ちなみに玉城ちはるや千早青、廻田彩夏らの行動にも敬意を表する。
今夜、geege初出演の神山みさは、他のアーティストやファンに自らの行為を説明したり、宣伝したり、ましてや押し付けたりしたくなかったのではないか。やや力無く、目立ちたくもない様子。そのため、彼女の思いが濃縮したような代表曲トップ5(偏遊選定)は今日、唄われなかった。それでも神山みさの真髄の片鱗は見せられたのでは。
彼女の心が現れたのが、1曲目にアカペラで歌ったAmazing Graceだ。無神論者の国だから致し方ないのだが、その曲の意味を深く理解できている日本人は少ない。この歌に込められた敬虔な祈りは、大災害に遭遇した我々人類への深い想いに他ならないのだが。
その後にCelebrate。今生きるものへの賛歌だ。みんな元気をだそう、そしてあなた達は1人ではないよ、会いにいくからと歌い上げた新曲。一日一日を精一杯生きていくことの大切さをメッセージにした一日一生。
このライブでは、想いが大き過ぎて多くは語らなかったけど、彼女が今、どれだけの思いで震災に向っているかは痛いほど伝わってきた。
セットリスト
1)Amazing Grace (アカペラバージョン)
2)Celebrate
3)会いに行くよ(被災者支援の気持ちを込めた新曲)
4)一日一生
5)Good night
彼女はフォークでポップだが、そのベースはゴスペルにある。メッセージ性が強すぎるという人もいるが、強い祈りこそ彼女の魅力なのだ。
3番手はゆうみ*ともみ。ギター弾き語りのゆうみ&ピアノコーラスのともみの女性2人組。2人の出で立ち、醸し出す雰囲気はとてもポップだ。
そして、どちらかというとファニーフェイスなので、ファニーボイスなのかと思って聞いていると驚愕。1曲目、


声に雑音が混じってないから、抑えていても歌声がくっきり浮かび上がる。ちょっと素敵すぎる。聞いていて楽しくなってくる。
1)陽のあたる場所
2)Afternoon
3)ララバイ
4)You make me smile
5)Hello
スケールの大きい1曲目と5曲目が特に気に入ったなあ。
4番手が戸城佳南江with ムラタトモヒロ。
この編成ということはピアノ弾き語りではなく、ムラムラギター伴奏にのせ、佳南江ちゃんが腰かけてハンドマイクで歌う、ちょっと大人バージョンだな。といっても今夜は、佳南江姉さんを怖れてムラタ君、アルコールを入れてなかったから演奏のエロっぽさにちょっと欠けたかな(笑)
1)スピロデザイン
2)Steady
3)愛のうた
4)Catwalk
5)あしたへ
佳南江ちゃんは歌がうまい。自分の声をよく把握していて、とても効果的な歌い回し。それが胸をキュンとさせる。このテイストを出せるアーティストは、ちょっと他にいないな。
佳南江ちゃんも、ノマドでチャリティーCDを制作してきた。最後に歌った「あしたへ」だ。この曲だけはピアノ弾き語り。売り上げは全額、震災支援のため寄付するという。


ライブも終盤。5番手は佐藤ひろこだ。
フォーキーなギター弾き語りの彼女は宇都宮在住。都市の芥にまみれてないからこそか、家族の絆とか、自然への明るい諦感とか、規則正しい生活とか、そんな大切な何かを忘れていない人なのだと思う。彼女の歌、トーク、声から、その人柄が滲みでてくる。
セットリスト
1)Your Love
2)私だけ忘れて
3)つよがり
4)RUN (新曲)
5)Small World ~はじまりの歌~ (最後はピアノ伴奏で)
バラード「強がり」がいい。


彼女は強い人なのだと思う。空手有段者というが、健全な精神は、健全な肉体に宿る――それを、実践している。しなやかな強さと健康な精神が、他のアーティストにない魅力を醸す。
さあ、待ってました。オオトリはTiny Sunだ。
今日の編成も、タイニーの2人(key/バンジョー&gt.)+サポートフィドラー(violin)舞ちゃんの美人3姉妹風ユニット。もはや、これが基本形だ。3人が織り成すカウントリーポップスは、極上のご馳走だ。
セットリスト
1)真夜中の想い
2)さよなら、ありがとう
3)悲しい月
4)Music Life
5)カントリーソングの名曲といえば…何だっけ?
元々、姉妹ユニットとしてそのコーラスの美しさや、等身大の女性像を描く楽曲、バンジョーなどを交えた日本では珍しいカントリーなノリの良さでは定評があった。そこに、舞ちゃんのバイオリンが入り、彼女たちの音楽に一段と広がりが出てきたことをこの日、再認識させられた。
そういえば最近、彼女たちのライブといえば、新宿のnavi cafeワンマンばかり。こじんまりしていてアットホームで、アーティストとの距離感の近さが魅力な所だ。ただ、そのため最近の彼女たちの音が、どれだけ広い空間に滲み渡るのか、感覚として想像できていなかった。
この日はgee-geという少し大きめの箱で,最近のTiny Sunらしい選曲を存分に演奏。オオトリに相応しく、見事にライブハウスの空気を彼女たちのものに変えた。これなら、もっと大きい箱でも大丈夫だろう。FM世田谷の公開収録に4月28日に出演するが、その会場となる芝浦Cube326 ARKはgee-geよりキャパは広く、天井も高いが、彼女たちならあの空間も自分達の色に染められるはず。
バンジョーとフィドルが、今夜はgeegeを優しい祝祭の空間に変えた。きっと、芝浦も変えてくれると思う。芝浦の対バンにはチャランポ・ラン・タンも出るし、これは楽しみだなあ。