2011/3/18 見田村千晴 @新宿sact | 音楽偏遊

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見田村千晴が10日ぶりのライブ@新宿sact。彼女のライブ間隔がこれだけ空くのも珍しい。先日も、恵比寿駅前バーでの吉村かおりとのツーマンをキャンセルにするなど、余震や計画停電への配慮を続けてきた。ようやく始動だ。

勿論、節電モードで照明などは最小限。やや薄暗いステージで、今宵もパーカッションとベースのサポートでトリオ構成だ。

サポートの音は、こないだのLOOPライブに比べて、見田村千晴のボーカルとギターにタイトに絡み合い、一体感ある好演。sactのPAの良さや箱の適度なサイズも演奏に合っていたのかもしれない。

そんな演奏にのって、歌いたくても歌えなかった鬱憤を晴らすように、見田村千晴もご機嫌なノリ。トレードマークの帽子をかぶり、キリリとした表情で、芯のある骨太な声でずしりと訴えかけてくるところは変わらないが、どこか楽しげだ。

決してポップでカラフルな歌い手ではなく、モノクロやアースカラー系の彩りの鮮明さやグラデーションの表現の深さが卓越していることが持ち味。そこに今日は、ワンポイントのような原色が鮮やかに差している印象なのだ。

セットリスト
1)渋谷駅東口歩道橋
2)明日がバスに乗って
3)ラブソティー
4)エピローグ
5)ナイト
6)ハルジオン
7)始まり
en. 歩いて

彼女の声は、抑えて歌っていてもよく通り、歌い出した途端にsactの空気がその歌声に支配されるのがわかる。客がステージの彼女一点に集中していく感じが心地好い。

改めて彼女の曲の歌詞を聴いていると、そのテーマに「始まり」があると感じる。先日タワレコから発売した「始まり」は言わずもがな、渋谷駅東口も音符ここからまた始めよう、確かにここに生きよう音符とあるし、「歩いて」も「明日がバスにのって」も未来へ力強く進もうと、聞くものを勇気付ける。

今、こんな時だからこそなお、そんな歌詞が心に沁みる。彼女の楽曲がこれから復興へと向かう東日本に広く鳴り響けば、多くの人が力付けられることだろう。彼女の歌には間違いなく、その力があるのだから。