2011/3/13 代官山NOMAD発 今できること | 音楽偏遊

音楽偏遊

最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

この未曾有の事態が東日本を襲う中で、アーティストは何をできるか、何をなすべきか。そして僕らファンもどうすべきか。

できるものなら、災害地へ向かい救助活動に役立ちたい、困っている人を助けたい、と多くの人が思っているだろう。音楽家であれば、自分の歌で勇気づけたい、笑顔を浮かべられる場を作ってあげたいと思うことだろう。

しかし、混乱の最中に、組織だった救援活動が何より求められている現地を、個人で向かうなどもってのほか。只でさえ足りない燃料を浪費し、緊急車両のために空けておきたい道路を塞ぎ、現地で何より必要な水や食料を浪費するだけだ。

さらに今回の巨大地震が特に影響を大きくしている要因が、被災地の福島第1原発1~6号機と福島第2原発は、女川原発、その他多数の停止した火力発電所が、東日本の電力供給のかなり大きな割合を占めていたことだ。

ことは被災地の停電だけでなく、東日本全域の電力供給不足という事態であり深刻なのだ。いまは、被災地方面には少しでも早く、少しでも多くの電力を回して、避難者に光を、救助活動に機動力を欲しい。有限な電力を無駄なネオンサインや過剰な事業所照明、家庭やオフィスの待機電力に回している場合ではない。

計画停電も、その唐突さによる準備不足や配慮の欠如、不手際などあったにしろ、国民は受け入れている。国や自治体、企業などに限った生半可な対応でどうにかなるレベルを超えていると、みな分かっているから。

それだけに遊興での電力消費には非難の声が大きい。例えばパチンコ屋が開店しているだけで、ネットでも現実でも非難ごうごう。ファストフード店の多くも夜間営業を見合わせている。余力のある企業が協力することを当然という人もいるが、これが簡単な話ではない。企業や事業所は収益活動を続けることで、従業員に給与を払えるのだし、企業が元気になることで日本経済が活性化する。ひいては中長期的には人々が安心して暮らせるようになるのだ。

また短期的には、流れるニュース映像に、計画停電による電車運休に、そして無言のプレッシャーに、多くの人が一日中、家にこもってしまい鬱々とした日々をすごしている。あまりのショックに恐怖にとらわれたり、いつ何が起きるかわからないとビクビクしたり、何もできない自分に無力感を感じたり、何もしない自分を責めたり。でも、そうしてみんなが元気を失うことは、本当に日本のためになることなのかな。

被災地の救助や、その後の復興支援は喫緊のミッションだ。日本は傷ついた。傷ついた日本を元気にしていくためにも、日本という体全体が元気を失ってはいけないのだ。今、目の前で元気を失っている場合ではない。元気を出そう。力強く危機に立ち向かおう。今はそういつ時だと思う。

太古の昔から、ネットも電話もテレビも無い時代でも、音楽は常に人々を元気付け、鼓舞し、癒してきた。楽器が無くても、人は歌える。楽器が無くても、何かを叩けば打楽器だ。元気になって頑張ろう。音楽家ならそれができる。さらにファンを集めることができるアーティストなら、人の力を結集する旗頭にもなれる。

こんな時だからこそ、みなが自分のできることをやっていこう。多くの原子力関係者はいま、真剣に戦っている。被災地では、電力関係者は電力の復旧に戦っている。ガスや水道などのインフラ関係者も復旧に努めている。自衛隊や警察や消防の人たちも、医療関係者も、寝る間も惜しんで救命救護活動をしている。

この事態に株価は急落しているが、日本の経済は止めるわけにいかない。金融関係者は企業活動や個人の生活を止めないよう、お金の流れを確保しようと奮闘している。土木関係の方々も動かせる建機などを動員して、寸断された交通網の復旧に努めている。流通関係者は食料や飲料を届けようと、お店の再開へ動いている。

じゃあ音楽関係者は何ができるのか。

アーティストたちと代官山NOMADがこんな試みを始める。
『Pray of musician, Pray for Japan.』
http://ameblo.jp/daikanyamanomad/

今、できること。すばらしい試みだと思う。

また、さっきも書いたけど、アンプや照明がガンガンないとライブができないわけではない。アコースティックでいいじゃないか。それでいて人を集める力、人を力づける力がアーティストにはある。そこで寄付金を募っていくのも良い。アーティストの力で集客するチャリティーライブもいい。

そんなライブが13日の夜、代官山ノマドで開かれた。ライブハウスの照明は最低限のため薄暗く、空調も入れず、照明もわずかばかり。客席にはキャンドル。そして、アンプは小さなスピーカー1つだけのストリート仕様という超節電モード。それなのに、50人以上の客が集まりノマドは超満員。ライブハウスの中は熱気でムンムンだった。

こんな時だからこそ歌いたい、歌を聞きたい。そんな想いが一つになって、暖かい空間がそこにはあった。

今村店長をはじめノマドのスタッフ、出演のアーティストたち。「こんな時に」との批判を覚悟でライブを慣行してくれてありがとう。

出演したのは、delphinus、りおん、木下直子、戸城佳南江、小林未郁、詩-uta-の6組。りおんからしか聞けなったが、みんな自分らしく、気持ちをこめて歌ってくれた。音はシンプルだったけど、感動的だった。

例えば、前の日の深夜に急遽代役で出演を決めてくれた木下直子。
「愛の大きさ」「私を守るもの」「うたのことのは」などを歌ってくれたが、特に心にしみたのが、彼女が最後に歌った「生きとし生ける」
音譜今日もどこか遠くの国で 消え行く命に僕は気づかない
生きとし生ける僕らに何ができるだろう
そう、空へと届けとばかりに愛のうたを歌おう音譜

彼女によるとこの歌は19歳の時から歌っているという。でも、まるで今歌うためにあった曲のようだ。いつにも増して、彼女が一つ一つの言葉に力を込めて歌っている。ひしひしと、ああ自分に何ができるのだろうかと思わされる。生きている自分が何かをしなければ、家でテレビを見ているだけでは感じられない強い思いを喚起させられた。

この木下直子からの4人はみな実力派の中堅ピアノ弾き語りアーティストたち。アコースティックな夜にもってこいの歌を披露してくれた。

続いて登場した戸城佳南江は、いつもと少し違うセットリスト。
「春風の中で」を歌ったあとに洋楽カバーを挟み、3曲目に選んだのが「花」。
「オフマイクでも声届くよね」と確認して、おもむろにマイクをどけて歌いだした。
音譜川は流れてどこどこ行くの
人も流れてどこどこ行くの
そんな流れがつくころには
花として花として咲かせてあげたい
泣きなさい 笑いなさい
いつの日か いつの日か 花を咲かそうよ音譜

歌詞が心にするっと入ってきて、色々なことを想像させる。人間にしかないという力こそ、この想像力だ。それがあるからこそ、明るい未来を想い描いて頑張れる。想像力をかきたてられる所に歌の素晴らしさはあると思う。

この後、「明日へ」で希望を綴り、最後はいつもの「愛のうた」。歌っている最中に感極まり涙がこみ上げていた。抑えていた感情、溢れる想い。想いは人それぞれだろうが、ライブってそんな様々な想いを共有できる一体感があって、素晴らしいなあと感じる。


そして小林未郁。かわいらしい外見だが、「私なんかが出てもいいのかな」と彼女の毒を知っているひとは、この状況で思わず笑わずにはいられない言葉。「それでも、自分は自分らしくいきたい。だから歌います」といつも通りの弾き付けるパフォーマンス。彼女は、平常心であることが大切と強調したかった様子。伝わってます。

「歯車」「飼育小屋」「毒」「つまみ喰い」「さよなら、おやすみ」と本当にいつも通りのセットリストで5曲歌ったが、「毒」の最中にも小さな地震が。それでも平常心を忘れず、「いつも通りのライブをやる事、そこからみんなの気持ちの強さが生まれ、結果としてその先に被災者の方々を助ける実質的な行為に繋がって行くんじゃないかと」(彼女のブログから)。

そんな彼女が、昼ドラも見ずに真剣にブログで、twitterで被災地の人たちの助けになるだろう情報をどしどしアップし、募金活動を紹介し、自分のできることを全力でやろうとしていることを知っている。不言実行なのだ。


最後は「詩-uta-」のステージ。彼女の歌の力強さは、前から知っていたが、今日ほど頼りがいを感じたことはない。背筋が伸びて、どっしりしていて。

歌ったのは「春色前線」「ドミノ倒し」「笑って」「サーチライト」「東京タワー」。最後の東京タワーの歌詞でまた力づけられた。
音譜舞い降りた粉雪に 願いをこめてにぎりしめた
この声涸れつきてしまうまでは歌い続けると誓う
君と歩幅に差があろうとも僕は僕らしく行くよ
下を向くこと無いように
今はただ上へ 上へ音譜
がんばれ、ニッポンビックリマーク彼女の歌には人を力づけるパワーがあった。

さっきの「Pray of musician,Pray for Japan」については、彼女のブログにも、その経緯を詳しく書いてあるので、一読してみてください。

勿論、いま立ち上がりこうした活動をしているミュージシャンが実は沢山いて、全国で彼ら、彼女らがチャリティーライブなどを企画・決行しつつある。音楽好きな方で、趣旨に賛同できるなら、ぜひぜひ音楽を通して、いま自分にできることしてみませんか。

さあ、音楽で心に元気を取り戻し働こう、動きだそう。心ある人に戻って思いやろう。みんなのために、自分のために。

追伸 世界の人を音楽で力づけたいとこんなustream生放送も。例えばチャランポランタンが頑張ってます。ぜひ、見てみてください。
http://www.ustream.tv/recorded/13321665