恵比寿・天窓スイッチへ。柊奈緒が3年前から毎月開いている「柊の部屋」も今回が36回目。継続は力なり。このイベントを毎月楽しみにするファンで、毎回ほぼ満席。間違いなく彼女の力になっている。
今夜は途中で代官山Nomadへはしごしたので最後までいられなかったが、彼女の歌声が少しでも聞きて良かった。その美しく、かつ鋭く尖った声から繰り出されるファンタジーは一級品。時々、麻薬のように無性にその幻想に溺れたくなるのだ。
セットリスト
1)白い声
2)ロバみみ
3)人魚の瞳
4)夜の囁き
5)Ghost
6)Angel (カバー)
7)漂うきみ
8)宝石箱
…………ここで退出。申し訳ない…………
(以下、柊さんのHPから)
9.黒いキャンバス
10.Ballerina
11.pierrot
12.宇宙旅行
13.アクアマリン
14.闇泳ぐ魚
15.ファンタジア
~encore~
15.虹が見えた日に
16.Days
17.帰り道
タイトル見ただけで、彼女のファンタジックな世界が推測できるというもの。人魚姫にロバのみみ、ピエロにゴーストだ。当たり前のようにナイトや姫がでてきて、城の塔や深い水の中へと連れて行ってくれる。そして、その情景をリアルに映し出し、登場人物の苦悩や心の移ろいを伝えてくる表現力が、彼女ならではなのだ。
多くのアーティストがファンジックな曲を聞かせてくれるが、舞台セットの上で繰り広げる恋愛劇のようで中途半端だ。柊ワールドは作り物のセットではなく、中世の城へタイムスリップさせてくれる。世界観の造形がしっかりしているのだろう。だからお姫さまが出てきても面白い。
そんな世界感を感じさせてくれる「アクアマリン」や「ファンタジア」も聞きたかったのだが、8曲目までしか聞けず。でも最新CDに入っている聞く耳を持たなくなった人間を風刺する「ロバみみ」、深い闇の森に響く「夜の囁き」も聞けてた。さらに最近の代表曲、「宝石箱」のきらびやかな輝き、人魚の憂いも心に響いた。
しかも、最初から最後まで途切れず、心を躍らせてくれる。優れたエンターテイナーだ。予想を大きく裏切ってくれるところは、小林未郁にも通じる。彼女は現代におどろおどろしい人間性を表出する京極夏彦のようで、その点は本当は怖いグリム童話的な柊奈緒と微妙に違うが(笑)
一見暗く地味にみえますが、彼女が作り出す音楽世界は、決して薄っぺらでも、単に暗いだけでもないよ。