10/12/29 代官山NOMAD大忘年会 木下直子ら23組饗宴 | 音楽偏遊

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最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

つ、つかれたーガーン

代官山NOMADの大忘年会!!に行ってきた。総勢23組が競演、なんと12:30スタート、21時半ごろ終了という九時間に及ぶ超ロングランライブ。しかも、あのこじんまりした箱に客が押し寄せること、押し寄せること。ピーク時には多分100人を超し、中はぎゅうぎゅう詰めで扉も開かず、外のロビー・物販スペースも人でいっぱい。身動きとれないほど。

すごい熱気で、ライブスペース内はもはや酸欠状態。これは疲れる。そもそも二日酔いで、睡眠不足だったため、途中何度も睡魔に襲われるし、話す気力も無い時間帯も。考えていた別のライブへのはしごは気力体力不足で、最後まで留まることに。昨夜、gee-geライブ後に飲みに行き、3時過ぎまで歌ったこと若干後悔。

しかし、ライブの内容は極めて充実。楽しい時間だった。持ち時間は各20分。一人3曲程度しか歌わないし、出演者も多いから、歌い手も最初からお祭り気分。飲みながら歌うアーティストもいて、気楽な雰囲気の中で客との掛け合いも活発。ノマドスタッフが旗振役で、会場全体一体になり饗宴を盛り上げまくった。

さすがに23組も出演する長丁場。会場のテンションにも波があり、引き潮の時間も。逆に控え目にみても、廻田彩夏、菅田紗江、ムラタトモヒロ+戸城佳南江、安里~詩の3人、金沢商店街、高橋りゅうた、スモークポーク、木下直子、吉村かおり――この辺りのステージでは会場全体がぐっと盛り上りをみせた。ステージ作りの腕が違うのだ。

出演者は順にこんな顔ぶれ。コメントは順次書き足していきます。

1)スタッフ(オープニングアクト)
 ノマドスタッフによるバンド。たびたび活動しており、実力しっかり。今村店長のボーカル兼ギター、ブッキングマネのカホンなど、みなイキイキと楽しげ。このスタッフの魅力や彼らが作り出す空気があるからこそ、多くの若手アーティスト達がノマドに集まってくるのだ。

2)伊藤ひろの
 山梨から朝車で出てきたという10代のギター弾き語り。明るく元気。「応援歌」で盛り上げる。

3)totorabo
 ピアノ弾き語り。当初、大混乱の会場内で水を取りにバーカウンターに入ったばかりに、そのままドリンクスタッフとして働かされる羽目に(笑)想像力をかきたてる不思議な声が魅力的。「臆病者にヘッドフォン」など。やや滑舌がよくないのか、歌詞が聞き取りずらいのが惜しい。

4)森本真伊子
 ピアノ弾き語り。情念を感じる深い歌声。すでにこの時点でベロベロで、焼酎水割り飲みながらのステージ。声がかすれた感じなのは酒焼けのせいか。安里、詩シスターと同じ血を引くというのもうなずけるぞ(笑)

5)廻田彩夏
 連日のマワリー。この日は大活躍のマービーをドラムに迎えて、明るく元気な忘年会バージョン。「カシグレ」「ピグレット」「地球の迷子」の3曲で会場のテンションを一気に上げる。この明るさ、引き込む魅力。このクラスでは抜け出ているよなあ。本当に彼女にはステージが似合っている。毎回言ってるが、来年3月のライブで活動停止は残念。2010年、マワリー聞き納めできて良かった。

6)ワタナベミユキ
 彼女のステージの間、外にいたので聞けなかった。申し訳ない。

7)マリエ
 小さくスリムな体ながら、絶叫に近い激しいギター弾き語り。うーん、かなり乱暴。それが好きな人も

8)菅田紗江
 いま、注目のネクストエイジを牽引するだろう女性ギター弾き語りだ。かわいい外見からは全く想像もつかない凄みがある迫力、圧倒的なパワー、激しい攻撃性。年100本以上のライブで磨き上げたステージングのレベルが高い!!彼女は間違いなく来るぞー。阿部真央に瞬く間に迫っていくのではないか。

9)ムラタトモヒロ
 エロエロ(ワイセツか?)紳士登場!その歌、そのギターの色っぽいこと。風間洋平が「もてたくて仕方ない盛りのギター」と評した腕前は抜群。おしゃれなリフ、いやらしいばかりに惹きつける囁くようなボーカル、女性アーティストとの共演でみせる気の利いた掛け合い。やるねえ。
 ソロで2曲歌い、3曲目はマービー、戸城佳南江が加わり3人で演奏。これがまたいい。佳南江ちゃんの新作アルバム「Unadultrated」でも見せる二人の作り出す男と女のいやらしくないけどエロチックな掛け合い、たまりません。

10)戸城佳南江
 ムラタ君が下がって、彼女のステージ。「白い足跡」「あなたがいて、私がいて」を通常のピアノ弾き語りで聞かせた。彼女の初恋の初々しさを残しながら、大人の女性になってきたような姿勢や歌声、楽曲は本当にドキドキさせてくれる。実力もあり、今やピカピカの中堅。何度でも聞きたくなるアーティストだよなあ。

11)飯田舞
 美声のピアノ弾き語り。佳南江ちゃんの声が初恋なら、彼女の声は現在進行形の恋人のようなリアルさ。耳元で歌われたらクラクラきそう。完全にタイプな声だ。「月の雫」「夕立」「そばにいて」をマービーと。いったい、マービーは何人の女性のパーカッションサポしたかって?最終的に8組と共演してたよー。このモテ男!

12)斉藤麻里
 その飯田舞と前夜から午前5時まで飲んでいたため起きれず、入りがギリギリになってしまったという彼女。今年はバースデーワンマンもやって、めきめきと存在感を増しているギター弾き語り。「ダイブ」「光」「夕焼けセンチメンタル」を歌ったが、個人的には「光」がかなり良かった。また聞きたいシンガーだ。

13)吉崎硝子
 
14)是方貴美子

15)安里麻紀
結構好き。斜に構えた歌詞も歌いっぷりも。酒飲み過ぎか?やや不安定だが、そこが気を引く

16)北川友紀
盟友、安里麻紀に続いて同じピンクのノマドTシャツで登場。この日の出演者は、みなお揃いの忘年会記念Tシャツ姿。ただ色はそれぞれ選べた。その結果、仲良しは相談もしてないのに同じ色を選んでいたという。安里、北川、詩の3人がピンク、飯田、斉藤が黄色、花粉症姉妹はベージュ、といった具合。
北川も着実に歌がうまくなっている。発声がきれい。何よりその明るい性格はチャーミングで人を惹き付けるね。

17)詩-uta-
 うたちゃんは、何度かここノマドで聞いているが、今夜もさすがのパフォーマンス。もっとも、一番沸かせたのは彼女が来るまでの間。朝イチでくるとスタッフに大見得をきっておきながら、いつまでたってもノマドに現れず電話にも出ない状態。「間違いなくまだ寝てるね。昨年も送れて土下座したけど、今年もやってくれるね」と転換の間ごとに登場して進行役をつとめた社長と店長が、時事刻々と「最新の詩ちゃん情報」をレポート。みんなで、彼女の遅刻を楽しみにしていた(笑)「なのに間に合うとはね」と、彼女が出番どおりに出演できて落胆の社長コメント。詩ちゃんネタがこの日の前半戦で一番盛り上がっていた。
 歌は、ご存知のとおり、説得力あり見事。歌詞が心にすーっと入ってきて、迫るものがある。これだけの歌唱力と表現力をもつインディーズアーティストはそういないぞ。「もう遅いから」「イルミネーション」など、良かったよ。

18)金沢商店街
 今日、唯一のバンド。ボーカル&アコギのやん君と、ゲストサポートで入ったオトホリックの井出くんの二人がギンギン盛り上げ、ひとつのピークを作る。ビギン似のボーカルがいいねえ。楽しいやつら。

19)高橋りゅうた
 何にも持たない捨て身の30代後半、ギター弾き語り男は熱かった。前回の彼のライブでも歌ってくれた「ロールオーバー・チャック・ベリー」では、佳南江ちゃん中心に(笑)「ロール!」の黄色い歓声も。何でか大人気。でもそれだけのものを持っている。魂が歌に宿っている。ノマドの光景を歌った「ノマディアン」では、会場にいるみんなの共感を誘い、本人はこれでおしまいと帰ろうとしたのだが、まだ他の出演者がいるのに大アンコールが。これだけの魂こもったパフォーマンス見せてくれる歌手が2曲で下がるなんて、みんな納得できないよね。
 戻った彼が歌ったのが、岩手から東京に出てきて15年だが、俺、結構今の自分も東京も好きだぜ、と「東京の風」。これが、本日の23組が歌った多数の楽曲の中で、一番ぐっときたなあ。マジで涙が出そうになったよ。また、絶対聞きたいなあ。

20)辻有沙
 彼女とは別の目当てで行くライブでよく出くわす。今年2回、確か「晴れたら空に豆巻いて」で彼女のライブを見た。見た目通り湘南の風。湯河原の海の近く在住で、海を愛し、サーファーで、潮風の香りがする音楽作りに勤しんでいる。まだ、道半ばなのだろうが、才能はある。きっと、素晴らしい曲をいつの日か彼女が生み出すだろうと期待中。歌ったのは、彼女が自分の代表曲になる予感がするという近作2つ「Brown Hair」と「Major」、そしてアレンジしたユーミン?の「A Happy New Year」

21)スモークポーク
 ライブでこのグループを聞くのは今日が初めて。女性ボーカルみかちゃんと男性ギターのコンビ。昨年の月間ノマドのCDで聞いて以来、ずっと気になっていた存在。そして、ライブも期待にたがわず、すごい才能を見せてくれた。どこかEgowrappin'とかに似ている、おしゃれで特徴的なサウンド。そしてボーカルがすごい。さまざまな表情をくるくる変えながら、それを表現できるみかちゃんのセンスに脱帽。可能性の大きいユニットだと思った。「もぐらの~」「リトルモンスター」「ロングピース」。

22)木下直子
 今年1年、何度も聞いた木下直子のライブ。その1年の締めくくりに彼女を聞けて嬉しい。なんとこの日は、ギターサポートが今村航!ノマド店長自らの演奏だ。直子ちゃんといえば風間洋平なのだが、彼が今日は都合悪いため出演できないとノマドスタッフに飲み会で話したところ、社長命令で店長がギターやることになったとか(笑)。しっかり、息のあったところ見せてくれました。大人だね。
 しかし、何より彼女の持っている音楽のスケール感、歌い手としての安定感、そして伝える力、いずれも水準高く、感動的なステージ。今日は風邪のため、ブリーズライトつけて歌う姿を久々に見れたのがおいしかった(笑)声もややかすれていて全開ではなかったが、それでも「ワルツ」「白昼夢」では見事にライブハウスの空気を自分のものに染めた。そして、ラストが「私を守るもの」。この曲を今年の終わりに聞ける幸せ。暖かいものが心に溢れてくる。名曲だなあ。直子姉さん、風邪を治して、31日のライブもがんばってください。

23)吉村かおり
 さあ、そして長い長い一日の最後を締めくくるオオトリの登場。吉村かおりが、このポジションを任されるということに感動するなあ。彼女の才能は素晴らしいのだが、木下直子のような正統派の大物とは少し違う。軽やかで、独創的で、ポップ。そういう持ち味でありながら、スタッフが、ノマドの2010年を締めくくるアーティストとして彼女を選んだことの重み。わが事のように嬉しい。
 「いろはね?」「チョコレートが止まらない」とマービーと二人で歌ったところで、ムラタトモヒロを呼び込み、今年発売したファーストアルバム「ハツ」の中でデュエットした「おやすみ」。これは名曲だよー。「ハツ」を聞いて、まず最初にびびびっと来た曲だった。それを生で聞けるなんて大ラッキーだ。そしてラストは今年、ノマドで何度も歌ってきた「あざやか世界」で、彼女なりのスケール感をしっかり出してライブを締めくくった。
 もちろん、お客さんはよく分かってる。割れるようなアンコールの手拍子。戻ってきた彼女が演奏したのが「きみのあした」。アップテンポな曲だが、実は死に行く者が、残るものへ「幸せなあしたが待っているぞ」と、託す重いストーリー。すごいよ、吉村かおりは。

そんなこんなで、長い長いライブだったが、最後はスタッフから締めの言葉があり、そして恒例というブッキングマネの一発芸の3連発があり、最後は一本締め。ノマドになぜ、親近感や安心感を抱き、何度となく来たくなるのか、本当によく分かるライブだった。

疲れたけど、サイコー!ノマド、ありがとう。出演の皆さん、サイコーです!!