10/12/27 神山みさ ヒグチアイ 秋風センチメンタ | 音楽偏遊

音楽偏遊

最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

年末です。いずこのライブハウスも、今年1年出演したアーティストたちが次々登場する忘年会ライブを企画。これから連日、どこかで9組、10組、15組と大量に出演するライブがあります。ということで本日は、渋谷Milkywayへ。

この日の出演者は総勢9組。16時過ぎスタートで、ミヤザキナオコ→あずままどか→島村秀男→神山みさ→上野まな→ヒグチアイ→間慎太郎→リトルタートルズ→秋風センチメンタルと、豪勢な顔ぶれがそろった。これは見逃せないね。

しかし、勘違いして18時スタートだと思っていたので、最初の2組を見逃してしまった。ごめん、まどかさん。久しぶりに今日はあずままどかを堪能できると思っていたのに、午後5時からの出番だったそうで、まだその時間は仕事していました。残念。

少しおしており、島村秀男が始まるところに到着。あと少し早く来れていればなあ。島村秀男は耽美的なナルシスティックなステージ。うーん、芸がないなあ。歌が上手いとか、徹底して耽美的なステージを作り上げるとか、伴奏に使ったアコーディオンがチャランポランタンの小春ちゃんばりに上手いとか。何かあればまだ聞けたのだが、どれも中途半端。まだ自己満足の域を出ていない感じだ。

さて、続いて登場したのが神山みさ。待ってました。1曲目「カタチのないもの」を歌い始めた途端に会場の雰囲気を一変、彼女の力強さと慈愛溢れる音楽が、こちらの心を包み込む。

ギターの音作り、深みのあるその声、歌唱力、そしてメッセージ。彼女は一人一人のお客さんに、歌を通じてしっかり語りかけ、心を動かす。「対話」があるのだ。引き込まれる。そして、やはりカタチのないものは名曲なんだな。

セットリスト
1)カタチのないもの
2)ケンカは嫌い
3)一日一生
4)レース
5)また会う日まで

今日は今年最後のライブハウス出演で、しかも短い出演時間とあって、ぎゅっと珠玉の5曲そろえてきたねー。彼女の曲は沢山あるし、先日発売したベストアルバムの曲数だけでも17ある。絞り込むのはなかなか難儀だが、その中で、僕なら必ず入れるだろう曲が4曲も入っている。これは嬉しい。勿論、このほかに「ただ前に、進め。」「その涙が渇くとき」「バースデー」などなど入れたい曲は多数あるのですが。

ちなみに、教会などで年内あと3回歌うそうです。ほぼ毎日、大晦日まで突っ走るようだね。

個人的には、みさちゃんの曲で初めて聞いたの「ケンカは嫌い」が好き。その時の記憶があまりにも鮮烈で衝撃的だったから、今でもケンカは嫌いの前奏が始まると、思わず顔がにやける。みさちゃんと一緒に口ずさんでしまう。

最近定番の「レース」では、一人一人が自分の土俵で精一杯がんばれば良いのだよ、というメッセージが心に沁みる。久しぶりに聞いた「また会う日まで」(尾崎紀世彦でなく、神山オリジナルだよ)も、しみじみと人との出会いの素晴らしさを思わせてくれる名曲。これはPVがYou Tubeで見られるから、ぜひオススメです。

最初の曲中にストラップがずれ、ギターの位置がガタッと下がるトラブルも。「キャッ」と彼女にしては珍しい声で驚く。自分でそのあと、「いつもは男っぽいとも言われるが、今日はキャという女の子らしい路線で」と話し笑いを誘う。さらに、「一日一生」だったかの途中で、今度はギターの絃が切れるハプニングも。即座に親友あずままどかが自分のギターを持って参上、次の曲へスムーズに入れた。いろいろありましたが、落ち着いて切り抜ける2人の姿が、経験の豊富さを感じさせたね。

2010年、何度も神山みさのライブを見て、そのたびに心を洗われてきた。そして1年の終わりにも、またこうして彼女の歌を聞ける幸せ。本当に彼女に感謝であり、彼女に会えた幸運に感謝だなあ。出会えて良かった。そして、来年もまた会いましょう。


次に登場したのが、上野まな。2010年の始めから路線を変更、ボサノバ調の曲などを中心に、やや大人路線へと舵を切っているよう。まあ、まだアイドルのように「ドロフィン」という曲では、イルカの振り付けをファンのみんなと毎回やってますが。

でも、なんだかんだいって、今年彼女のライブ4回目だなあ。こういっては彼女に申し訳ないが、すべて彼女以外のアーティストが目当て。でも、今日実感したのは、見るたびに彼女の歌が上手くなっていることだ。

年初にボサノバの曲を歌っていた時は、思わず「それはボサノバの歌い方ではない」と突っ込んでしまったが、1年たって自分のものにしつつある。勿論、小野リサのような域に達するには、もっと根本的なところからやらないといけないだろうが、ライブで十分聞ける水準に。やるなあ。

そんな彼女もついに来年4月、アルバム全国発売します、と本日報告が。若いころはアキバ系アイドルだったが、それからずいぶん年数を重ねた。歳をとって、メジャーに行けてなければ消え去りかねないアキバ系だが、こうしてモデルチェンジして、しっかりステップを上がる彼女の努力は評価できる。がんばれ。


続いて登場したのは、本日のもう一人の目当て、ヒグチアイだ。先月、21歳になったばかり。

今年、最も伸びた若手アーティストの一人が彼女であることは間違いない。見田村千晴と並んで、僕の中ではすでにレスペクトすべき存在だ。その力強さは、他をもって代えられない。その個性と強さは十分に近い将来、矢野絢子やいいくぼさおり、ヒナタカコ、小林未郁らに匹敵しうるピアノ弾き語りだと思う。

とても個性的な歌い手で、憂愁を帯びたその声と圧倒的な歌力は、会場を圧する。心をつかまれ、揺さぶられ、震えがくるほどの迫力だ。

セットリスト
1)心ジェリーフィッシュ
2)永遠のウォーカー
3)ポケット
4)証し
5)マッチ

この日は、いつものライブで終盤を飾るジェリーフィッシュ、そして最も盛り上げる永遠のウォーカーを1曲目、2曲目にもってくるという強気な曲順。たたきつけるような迫力のピアノ伴奏と、地を震わすような太いボーカルで、一気に会場を圧した。しかし、ただ強いだけでなく、曲の内容も濃く感動的。素晴らしい才能だと思う。

しかし、これだけ強い曲を最初にもってきたら、もうラストに持ってこれるのは「証」しかないぞ、と思っていたら案の定、終盤に投入。この曲は、冒頭から力強いアカペラで始まり、半分以上そのまま伴奏なし。それでいて、これだけメロディアスで心を揺さぶる歌詞を、これほど力強く歌いながら、音程がまったく狂わない絶対音感とリズム感。初めて彼女を聞いたというお客さんも、この歌には打ちのめされ、ここ数年間で最高の衝撃だと話していた。ヒグチアイファンとしては、すごく嬉しい。

最後の「マッチ」は高校時代に作ったマッチ売りの少女がモデルの切ない、でもどんな状況でも力強く生き抜こうとする少女の懸命さを描いた曲。最近、歌っているという。伝わってくる。

やはりヒグチアイは凄味がある。今日も素晴らしいステージをありがとうだ。

ライブはここから男性の部(笑)へ。まず間慎太郎の登場だ。

ご存知、間寛平の長男で、そして本当に実力あるギター引き語りシンガー。男っぽく、ノリノリの分かりやすい曲で会場を湧かした。

この日、世界をマラソンで一周しながらその姿を通じ、人を勇気付け、世界平和を訴えるというアースマラソンに挑んでいる父親、寛平さんが、ついに米大陸に次いでユーラシア大陸を横断しきったと報じられたばかり。米州から欧州に渡ったところで、ガンが発覚。それでも日本に帰らず現地で治療を受けながら、走り続け、ついに中国も横断したのだ。

この極限にストイックで、偉大な挑戦に感動を禁じえない。すごいよ。間慎太郎も、関西弁のMCで笑いを取りまくっていたが、最後に「個人的なことなのですが、父親が今日…」と話し始め、息子として父親の達成に喜びを表した。そんな息子の姿がまた感動的だった。


トリ前は、リトルタートルズ。今回、聞くのが3度目。男性Duoで、2人とも声が高いばかりか、ボーカル専念の亀川晃史はオスカルのような衣装で中性的、ファルセットも多用する。男からすると、少し微妙なのだが、2人のコーラスや歌はかなりいい。特にもう一人のキーボード/ギター兼ボーカルの小林真の声が魅力的だ。

最初の曲こそ、女性っぽく、「あれ、こんな路線だったかな」とかなり戸惑ったが、2曲目からは本来の持ち味を出し、少し素朴で美的な、彼らならではの音楽世界を作りだしていた。


そして、今年オープンしたMilkywayの初の年末イベント「Last Tiger Revolution Count 4」の出演者9組の最後を飾ったのが「秋風センチメンタル」だ。

こちらも男性Duoだが、彼らはフォークシンガー。骨太で、掛け合いも息のあった、頼もしいパフォーマンスに会場も高潮。さすが、トリだけあって盛り上げる。フォークといっても、彼らは熱い!

そういえば、彼らも日本テレビ「100日劇場」でメジャーデビューをかけて全国を周ってたんだよなあ。僕が応援しているcossamiと北と南に分かれて、「ストリートライブ1000人ノック」を受けて、100日後に渋谷AXで決戦。結局、cossamiがこの番組をきっかけに「りんご」でメジャーデビューしたのだが。なんとなく、この2組に同じ匂いがするのは、そのせいか。

でもどちらも自分好み。いずれ大箱でぜひ共演して欲しい2組だ。ちなみに、デュオ特集のイベントを開いて、他に「Blue Trike」「iora」「indigo blue」「吉田山田」などとも共演して欲しいな。

この日、秋風センチメンタルが歌った曲の中で、印象的だったのが「オリオン」。これも100日劇場で最初に作った曲だが、ずっと磨かれている。確か福岡の音楽塾VOICEで批判受けてたよなあ。あのマリアが人生をかけて、アイドル路線を捨て生まれ変わる場所として選んだ音楽塾VOICEだ。(普通、絢香やYUIを育てたという所だろうけどね)

旅を経て、さまざまなものを身につけてきた秋風センチメンタルの音は、心に響く。終盤に越路吹雪やモンパチ、Stand by Meなどを取り込んだメドレーがまた楽しかった。彼らはきっともっともっと伸びるね。

いやいや、長いブログになってしまった。でも、それだけ本日のライブは響いたんだよ。

Have a Happy New Year!