10/11/17 小柳ゆかり cossami 寺岡歩美 @代官山LOOP | 音楽偏遊

音楽偏遊

最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

さて、代官山LOOPのキャンドルライブ「ともしび」、蘭華のほかにも注目のアーティストが続々出演。中でもトップバッターで登場した小柳ゆかりは、新しい発見だった。

彼女の名前は代官山ノマドなどのスケジュールで頻繁に見かけていて、良いアーティストだとも聞いていた。

そんな折、深夜のオーディション番組「Music Birth」で歌っているのをたまたま視聴、その歌にはビビっとくるものがあった。審査員?の野口五郎らも高い評価で、どこかの音楽事務所が札を上げるほど。他の多くのアーティストが、全く札(番組内では金銀の卵)が上がらず相次ぎ敗退するなかでの快挙。つまり実力はメジャーデビューも可能との、プロの目による折紙つきとなったのだ。

そんなこんなで、一度生で見たいなと思ってた。そこに向こうから、毎回見ている「ともしび」に来てくれたので、イヤでも期待が高まろうというもの。その彼女のパフォーマンスは……想像以上ビックリマークまた1人、大きな可能性を秘めた良いアーティストに出逢えたよ。

この日の彼女は、ピアノのサポートを得て、ろうそくに囲まれたステージ中央でマイクを握り、ゆらゆらと体を揺らしながら、自身の歌世界の中へ沈殿していく。彼女の歌には心地好い浮遊感があり、バラード調の曲でも心と体が浮き立つ。率直に言って、顔やファッションが際立ってるわけではないが、不思議な存在感がステージに漂い、タダモンじゃない。

声はジュディマリのYUKIのようだが、やや物憂げで曲に陰影をつけるのが上手い。囁くようなウイスパーボイスから大きく響かせるサビのリフレインまで、きれいに声がつながっていく。確かな音感やリズムの上に作り出された、やや影もある音世界の中で、彼女が浮遊している――この感覚はYUKIというより清家千晶や宝美に通じるか。

脳内メーカーではないが、彼女の体は全て音楽でできてるようだ。って、何か意味不明だよね(笑)感覚の話で、うまく文字にできないんだが。で、こういうタイプは万人受けしないことが多いが、一部の人には心に刺さる。僕も気に入ったな。あと少しの、何らかのインパクトが欲しいけど。

5曲歌い、最初の2曲は曲名分からないが、3曲目はテレビでも聞いた「ウソツキと三日月」。その後に「Logic」と「レクイエム」。

特に「ウソツキ~」はすごく心に引っ掛かる曲だ。最後に「僕が囁くまで」と囁く前に、一瞬音が止まる瞬間、感動したのか一部のお客さんが拍手を始めてしまったが、気持ち解る。そこに至るまでに心を捕まれた。彼女のCDも即ゲット。今後の活躍が楽しみだ。


2番手は矢武久実。ポエティック。自分のステージを箱庭音楽劇場と呼び、独自に「蝋燭の森の箱庭案内」と題したプログラムまで制作、配布してた。タイトルなどにはドイツ語。そこまでして作り出すメルヘンとは…

うーん、ちょっと物足りないかな。薬師丸ひろ子のような、少し声学かじってます的な発声でパンチ不足。ファンタジーさも、柊奈緒にはかなわないか。空想世界の構築も言葉が滑っていて、心の奥底から絞り出してくる堀川ひとみのような衝動が感じられない。借り物のような歌詞に説得力がないというか。昭和な感じ。つまり、昔の音楽の影響が強く、オリジナリティの域に昇華しきれてないのかな。

さて、3番手の蘭華についてはすでに前の日記で触れたので次へ。続いて登場したのが、楽しみにしていたcossami。ハーモニーに聞き応えあるガールズデュオ。LOOPは、矢沢洋子のナチュラリズム出演以来かな。

この2人が歌い始めると、会場がほわっと温かくなる。そう思っているのは決して僕だけじゃないはず。ルックスが良いだけでなく、トータルな「女子力」が高いのだ。ウサギを抱くと感じる柔らかな毛の触り心地と、ほっとする温もり、その両方をcossamiは合わせ持っている感じ。

彼女たちの武器は、お客さん1人ひとりに向けられる心からの笑顔。蘭華にも通じるけど、その笑顔にみな癒され、惚れて、またライブに来てしまう。一部の同性からは敬遠されるかもしれないが、確実に新しいファンを増やし続けてる。

そしてこの日は、そのセットリストが彼女たちの現在の意気込みを雄弁に語っていた。

1)りんご
2)Tommorrow(Annieカバー)
3)結婚しよう
4)こんなにもわがままな僕たちは
5)ダリア
6)sun.day

ステージに上がって最初に「りんご」のイントロをギターのひろこちゃんが弾き始めたので、オヤッと思った。この曲は先日のワンマン「りんご収穫祭」まで毎回ライブの最後に歌っていた、彼女たちのメジャーデビュー曲。ほぼ1年、この曲を引っさげて西へ東へと、インストアライブなどを繰り返し、ファン獲得に力を入れてきた。

その曲を最初に歌うということ。こないだの収穫祭を節目に、彼女たちは新しいステージに入ることを意識し始めたのだろう。これからはデビュー曲は名刺代わり。cossamiの新しい姿を楽しんで、という考えかなと推測する。多分、その象徴が収穫祭の頃からカバーし始めたミュージカル「Annie」の代表曲「Tommorrow」だ。

この曲には、僕は個人的に深い思い入れがある。その話はいずれ書きたいが、コッサミが毎回歌ってくれて、ちょっと嬉しい。このミュージカルは、大恐慌下のアメリカの孤児院で、強欲婆さんの院長に虐げられる日々にも関わらず、めげずに明日への希望に胸を膨らませ、明るく元気に生きている少女が主人公。幼い頃、何度Annieを見たことか。そして、何度勇気付けられたことか。

MCでは,先日大阪で開かれた音楽イベント、ミナホに行った際のみなみちゃんの失敗談にひっかけて「ドジでも明日があるさ」とTommorrow歌った。でも、それだけでなく、アーティストとして先へ進んでいく自分たちへの応援歌でもあるのだろう。

そして、「りんご」を経てcossamiらしさを再度見つめ直した結論が、女子力の高い2人だからこそのラブソング、愛の歌を届けるメッセンジャーになることだったのではないか。全部推測だけどね。

でも実際、結婚式出張ライブの受付をHPで始めた。彼女たちが式場に出向いて、愛の歌で幸せな2人を祝ってくれるというのだ。そのため?のコッサミ流ウェディングソングが「結婚しよう」だ。かわいらしい温かい愛にあふれた曲だね。

そして、ラストに歌ったsun.dayは、彼女たちの原点ともいえる素敵な1曲。この歌を初めて彼女たちのステージを見た2年余り前に聞いていなかったら、僕はコッサミファンになっていなかったと思う。

そんな原点の曲を、最後に置くということは、初心に帰って頑張ろう、という気持ちの現れかなと思う。テレビ番組の企画で全国のライブハウスなどを巡り飛び込みで歌うという、試練の旅を続け彼女たちは「りんご」にたどり着いた。そしてまた、形を変えた旅に彼女たちは自ら挑むつもりなのかもしれない。

初めての人からは、かわいいだけの2人とみられがちだが実は違う。彼女達は幾多の試練を乗り越えており、最近とみに思うが、その魅力は隠された強さにこそある気がする。その辺りは次の日記で(実はこの翌日もcossamiのライブ行ってるんだよね)。

そう、この日のトリは寺岡歩美。ギター弾き語り。高校生ぐらいに見える外見も可愛かったが、実力ある素晴らしいアーティストだった。その詳細は、後で書き足します。