10/10/29 大黒美和子 玉城ちはる 二足サンダル@赤坂 | 音楽偏遊

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大黒美和子の初企画ライブ「猫レストラン vol.1」を見に、赤坂グラフィティへ。玉城ちはるに二足のサンダル、そして大黒美和子と、みな気にしている出演者ばかり。行かない訳にはいかない。

ライブ後の感想を一言で言うと、「これを見てしまったら、大黒美和子を好きにならずにいられないだろうビックリマーク」だな。いやホントに。

とにかく、この日の彼女は素敵だった。大黒美和子が大黒美和子になって2年余。この間、何度も彼女のライブを見たが、今夜ほどイキイキとして、素そのままで、気合いが入っていて、それでいてリラックスしていて、感情をほとばしらせている姿を見たのは初めてだ。

扉が全開、アイ・アム・オープンといった感じ。これまでを振り返り、本当によかったね、と美和子ちゃんに声をかけたい。ラストで「私にもこんな素敵な仲間ができて、こうして私のイベントに出演してくれて…しょぼん」と涙する彼女を見て、もらい泣きしそうになった。

ライブは、自分の企画だからこそ、やりたかったこと全てやるぞパート1の「アニソンをバンドで会場総立ちの中で歌いたい」から幕開け(笑)。この日のために結成した美和子バンド「トレスフルール」でステージに上がると、「お願いしま~す。みなさん、立ってください」と懇願。


「総立ち」の会場を見回して、幸せそうな彼女は、気合い入りまくりで、ガンガンのロック3曲。8ビートの激しい手拍子にのって、全てアニメの曲。ゴメン、アニソンの曲名はさっぱり分からん。しかし、ステージ狭しと動き、手を大きく振り、目を爛々と輝かせる姿は、これまでの彼女には無かったものだ。(空色デイズ、God knows、ETERNAL BLAZEでした)

常々、アニメ好きを公言していたが、この日は似た経歴の水樹奈々をバリバリに意識してること判明(笑)。といってもライバルとかではなく、「水樹奈々は私の神だから」。彼女の歌唱力は折り紙つきだが、さらにリズム感あるから、ロックも難なくこなす。歌い込んで声帯を強くすれば、かなりいい線いける。この時点でも、そこらの声優の兼業歌手より、かなり良い激しさとテンションの高さ、ノリがあった。歌ってる本人が楽しそうだから、お客さんも引き込まれ、楽しげ。彼女の古くからのファンには高齢の方も多いが、みな楽しんでいたのではないかな。


汗をたっぷりかいて、2番手の「二足のサンダル」にバトンタッチ。あべさとえちゃんと斉藤恵ちゃんのデュオで、二人は相変わらずのマイペース。他のどんなデュオとも比べられないオリジナリティ溢れるほのぼのステージだ。コーラスが絶妙なだけでなく、 様々な楽しい試みが歌に盛り込まれていて、微笑みを広げる。

1)コーヒーの味わい方
2)温泉~Hot Springs~
3)賞味期限
4)下駄箱のラブレター
5)チョコレートひとつで

本日の企画タイトルが「猫レストラン」ということで、食べ物系の歌3曲に定番の温泉と下駄箱。温泉は、毎度ほんとに楽しい作品。二足のサンダルって何?といぶかって見始めるお客さんも多いが、「湯布院、別府、有馬、湯河原、箱根~♪」(順番違うかと思いますが)というサビは強烈で、一度聞くと頭にこびりつき、リフレインが止まらない。なんとなく好感を抱かされるという恐ろしい存在だ(笑)

それに「賞味期限があと3時間で過ぎてしまう♪」みたいな歌詞をまじめにハーモニーで歌ったりするから、思わず吹き出しそうになる。恵ちゃんがキーボードで旋律をしっかり押さえながら、さとえちゃんがアコーディオンやトライアングルや、鐘や、なんやら色々な小道具で曲を演出。サービス精神旺盛なプチエンターテインメントになっていて楽しい。


続いて登場したのが村上通。ザッツ好青年。すごく、優しく礼儀正しく、思いやりがありそうな彼の声もまた、じんわり心にしみる。しかも、ギター弾き語りで2曲、ピアノ弾き語りで3曲と器用で、その演奏技量の水準も確かなもの。5曲歌ったが、個人的に気に入ったのは、大黒美和子も大好きという「会いに行け」。なかなか良いよ。「次へ続く歌」「君の光」「all right」「響きあい、響く愛のうた」などを熱唱した。


さあ、そしてついに大黒美和子いわく「怖い姉さん」、玉城ちはるの登場だ。

この日の玉城は一味違った(笑)突っ込んでくれる松本英子や拝郷メイコはいないし、突っ込める溝下兄さんやカオリンもいない。ピュアに慕ってきた大黒美和子は突っ込みずらい。二足のサンダルはあまり知らない。ということで、トークがマジメ。

トークでは、ファンなら誰でも知っている話だが、7年前から「自分でできる平和活動」として始めたシンガーソングホストマザーの活動を紹介。かつて日中問題がこじれ反日デモが中国で広がるのを見て、ホストマザーとして留学生を受け入れ、少しでも日本のことを理解し笑顔でつきあえる人間関係を築けるようやってきたが、昨今の反日デモを見ると心が痛む――とMC。

JICAの「なんとかしなきゃ」キャンペーンにも参加していることも紹介。黒柳徹子や野口健、高橋尚子、王貞治、伊達君子、道端ジェシカ、川嶋あい、平原綾香らとともにホームページでもメッセージ動画が見られるので、ぜひご覧くださいと話す。なんか、国際活動に身を投じているすごい格好よい女性のようじゃないですか。拍手、パチパチパチ。

いや、事実そうなので、自分もその面では本当に心から玉城ちはるを尊敬しているのです。しかも、この日はサポートがキーボードだけで、選曲も穏やかなもの中心に割としっとりしたステージ。幸福のダンスも踊らず、愛の種もまかず、風にもならず。格好良いお姉さんぶりを終始発揮。そういえば、こないだの弦楽と合わせた時も、すましていたが、やはり「絡み、絡まれ、玉城ちはる輝く」なのだなと実感(笑)

1)ピンホールカメラ
2)胸の振子
3)前を向いて
4)Sunny Day
5)凛音(?、違ったかも)
6)EMILY

ひさびさにEMILY歌ったのが驚き。Flower Voices以来かな。個人的には、この歌は清家千晶バージョンの方が浮遊感があって好きなのだが、玉城バージョンも力がこもっていてなかなか良かった。ハセガワミヤコさんが提供したSunny Dayも、あの明るくPOPな感じが最初は玉城ちはるに合っていなかったけど、だんだん自分のものにしている。さすがだなあ。

彼女はここで、格好よいお姉さんのまま一度退き、大黒美和子にステージを託す。しかし、実はこのあと、一発やってくれるのだが、それは置いておき、美和子ちゃんへ。


大黒美和子としてのステージは、しっとりとキーボードのヨッシーの伴奏でスタート。最初のアニソンバンドバージョンで見せた陽気でのりのりの舞台と一転、本来のどっしりと情念の詰まった、やや暗い「Call」という曲で心を震わすステージが始まる。

ただ、その後は、次々と彼女自身が好きだというアーティストを呼び込みコラボ。
第一弾は暮部拓也を迎え、ギター&コーラスを委ねて、彼女の曲の中では比較的楽しい「初恋」を軽やかに。

第二弾では、「ああ、怖いなあ」とつぶやきながら玉城ちはるを呼び込む。歌ったのはアニメから「ラムのラブソング」で、「あなたが好き、好き、好き」とお互いに歌いあい、客席からは大爆笑の渦。二人とも芸達者だ。特に、玉城ちはるさんのステージ後に僕が余計なこと言ったせいか、そこまでやらなくてもという弾けぶりで下ネタ用語連発(笑)いや、そこまで期待していた訳ではないのですが、恐縮です。

おおいに盛り上がったところで、再び大黒美和子ならではの情念の世界へ逆戻り。最近の定番となっている「透明な私」。ラムちゃんからの振子の幅の大きいこと、大きいこと。心の準備が追いつきません(笑)。さらに続けて、この日のために書いたという新曲「まばたき」。両曲とも情念のこもったすごい迫真の表現力。会場の空気が一気に張り詰める。

大黒美和子は今、ポップス歌手ではあるのだけど、その心にはやはりずっしりとした演歌の魂があるのだなあと感じずにはいられない。坂本冬実や石川さゆりばりの情念の込め方は、長い長いキャリアに裏付けがあればこそだ。

彼女は現在28歳だが、同年齢のポップスの歌手でこれだけの世界を作り出すアーティストは希だよね。ヒナタカコとか小林未郁とかも味わいがあり個性を発揮しているが、歌唱力の洗練さはプロの演歌歌手として10年間歌ってきた大黒美和子がより磨かれている感じがする。


さて、ラストに「君に歌う」でぐーっと感情を込めて、大拍手でエンディングを迎えた。アンコールでは、出演者全員を呼び込み、小田和正の「たしかなこと」。ここでも村上通くんの歌声が秀逸。小田和正によく合っていて、ずっと彼の歌声で聴いていたくなった位だ。さらに二足のサンダルの二人が勘所で美和子ちゃんとハモるシーンも、決まっていた。玉城ちはるも貫禄の歌唱力で聞かせた。

いやいや、本当に素晴らしいライブでした。美和子ちゃん、初企画成功おめでとう。第2弾猫レストランでは、大の猫好きという渋谷めぐみ、佐藤ひろこさんらとどうでしょう。楽しみにしてます。