10/7/20 服部祐民子、いいくぼさおり、佐藤ひろこ@M | 音楽偏遊

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最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

19日夜の渋谷めぐワンマン盛り上がったよー。でも、そのレポの前に20日に見た南青山MANDALAでの佐藤ひろこ企画「音風」について書くよ。シブメグワンマンは、そのあと朝までしこたま飲み、ちょっと頭が整理できてないのですよ。記憶が一部飛んでるともいう(笑)

どの位飲んだろ?生ビール4杯、カクテル5杯くらい飲んだ後に、四人でウィスキーをボトル一本半は空けたな。ちょっと余計だったな(笑)寝不足になったし。

さあ、そんな二日酔いもようやく覚めた夜、また素敵なライブが南青山で待っていた。

トップは企画者の佐藤ひろこ。今日はちょっと驚きのスタート。なんと、グランドピアノ弾き語りだ。

ご存知の方も多いと思いますが、彼女はいつもギター弾き語り。ちょっと武骨に、そして明るく、会場と一体となって盛り上がるアーティスト。いつからピアノも?という疑問に、MCで1年半前から自宅のアプライトピアノで練習していると回答。意外と板についていてビックリ。

2曲ピアノで歌い、そこからギター弾き語りへ。本日のテーマは「チャレンジ」で、ピアノ弾き語りはその一つ、自分に限界を設けてはいけない、そんな話に同感。僅か1年ちょっとで、ここまでうまくピアノ弾き語りできるのだから、音感あるんだよね。さすがだ。

1)small world はじまりの歌
2)くれますか
3)?
4)Your Love
5)ハレルヤ
6)壊れない私
7)君は1人じゃない

手拍子求められ、不快な歌手もいる。グルーヴも歌唱力も乏しく、勢いだけのアーティストだ。佐藤ひろこは逆。すごく好感度が高く、一緒に盛り上げていきたくなる。

宇都宮で農業やってるだけのことはある(関係ないか?)。地に足がついていて、暖かく、パワフルだ。彼女はいつも楽しいよ。


2番手にいいくぼさおり登場。いやあ、卓越したピアノ伴奏と、一声で彼女独自の世界に会場を塗り替えるウタ歌いの能力はさすが。今日は、その透明で伸びやかな声が、一段と力強く出ていて迫力ある。出過ぎていて、彼女には珍しく、叫びに近い箇所も。それが、彼女の歌により差し迫った緊迫感を与えていて圧巻。

今日、初めて彼女を聞いたと話していた近くのお客さんに、最後には「絶対今度のワンマン聞きに行くわ」とまで言わせしめてた。

1)街に濡れたいくつもの響き
2)それで良かった
3)パノラマ
4)うさぎ
5)最後に笑おう
6)叫び
7)ひまわり

彼女の今宵のチャレンジは、最近のライブで歌っていない曲を4曲もリストアップしたことかな。それが1)から4)。この1年ぐらいのライブで、長丁場のワンマンを除くと歌っていないらしい。

驚くのは、そういう昔の曲であっても、まったく現在も歌っているだろうというクオリティと、同じ世界観で、ステージから投げ掛けてくる。全然違うメロディーラインと歌詞なのにね。確固としたいいくぼさおりがすでに、できてあがっているのだ。それはとてもエンターテイニングで、他にいない抜きん出た才だ。


トリは服部祐民子さん。美声で美人。30代後半というが、若々しい。しかし、その歌とステージは、大人の魅力たっぷりで、これまた独自の世界を築き上げていて魅力的だ。

「若い、いいくぼさおり達には負けられないよ」といった自負がぴしぴし鳴ってる。そう思って当然の実力を備えている。

これぞ、まさにザ・フォーク。社会問題に対する批判意識を、鋭利で心に真っ直ぐに刺さる言葉でずばっと歌い上げる。好きだなあ。

特に気に入ったのが「幸せになりたい」。たったそれだけの事なのに、どうして忘れてしまうのだろう。親が子を殺し、子が親を殴り殺す。幸せって何だよって真面目に問いかけてくる。

セットリストはこんな感じ
1)バイバイ
2)4号線
3)幸せになりたい
4)天才
5)青虫
6)マリア
en. 三日月と星

最初の2曲は最近リリースしたCDのカプリングだ。冒頭から惹き付けられた。バイバイは高橋真梨子をちょっと彷彿させる、ノスタルジックなメロディーがいい。

盛岡出身。江戸から北へ北へと伸び、青森までつなぐ国道4号に彼女の思いが詰まっている。長く住んだ環七沿いから故郷への道。雨雲はやがて雪雲に代わり、故郷を白く染めるだろう。そんな歌詞が、東北出身者には切なく響く。

何より彼女が素敵なのは、その決然として真正面に挑みかかるかのような表情。歌に強い意志を込めて歌っているのが、伝わってくる。一つ一つの言葉を大切に歌っていて、全てが彼女からのメッセージなのだといずまいを正して聞き入ってしまう。

会場がぴーんと緊張し、彼女に引き寄せられていく。ファンとか、初めてとかもはや関係ない。泣けるねぇ。

アンコールは「三日月と星」。17年前、この歌を引っ提げて彼女はソニーの音楽コンテストに挑み、メジャーへの道を切り開いたという。そのコンテストに居合わせた人からのリクエストに応じて、予定外の選曲に。これが泣ける。同じ空に寄り添うが、けっして交わらない存在。ああ、いろいろ考えさせられる。

こういう本物の大人のウタ歌いを集めたライブが、もっとあればと願う。もしブッキングできるなら、一番手の服部祐民子に、伊太知山伝兵衛、木村充輝が続くスリーマンとか。バーボンを片手に、きっと最高に幸福な夜になることだろう。