10/7/19 小林未郁、倉沢桃子 @天窓comfort | 音楽偏遊

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カンカン照り、まさに真夏という日の昼下り、最も似合わなそうな2人が、そろって昼のライブに出演(爆)この面白すぎるシチュエーションを、目撃せよビックリマークという心の声に従い高田馬場へ。

天窓コンフォートは、ビルの五階。広い窓から見張らせる景色が売り物。今日はもちろん青空。射し込む光で、いつもと違う陰影を顔に浮かべながら、2番手に登場したのが、倉沢桃子。いつもは、その場を暗闇に包むような演奏が魅力だが、今日は軽やかな微笑みが彼女の顔に。昼に聞く少し明るい倉沢桃子、悪くないね。

この日はこんなセット。

1)未完成
2)人間らしく
3)孤独の裏、君の隣
4)あなたが生きるそのやり方が大好きだから、そばにいさせて
5)名前を呼んだ
6)命
7)つなぐ力
8)鳥肉と塩コショウ

人間らしく、という哲学的な曲が、ほのかに明るい人生の応援歌に聞こえる。いや、それが本来のこの曲が産み出された意図なのだ。ただ、いつもはライが夜で、「人間らしくって何?」と突きつけられると、自省していた。それが、昼に聞くと、問いに答えが出なくても、立ち止まらずに進みつづけることが、生きるってことだよ、と勇気づけられる。

また、この日の最も感動した1曲が「命」。何度も聞いているが、頭と体がフレッシュな昼に聞いた方が、体に沁みる。お祖母ちゃんを歌ったのだが、桃子さんが語る言葉がいいのだ。

特に「始まりを見届けたものの終わりを見届ける幸せ」って歌詞。永遠の時の流れの中で、人生の一定の期間を伴走し育んだ愛情や、綿々とつないでいく人類の生命の美しさ、を感じてしまう。

そして最近のライブの定番「鳥肉と塩コショウ」の微笑ましい幸せの光景がいいのだ。いつの間にか共に暮らし始めた2人。会社員の彼が鳥肉を買って返り、彼女が塩コショウして料理する。そんな日常に幸せをかんじてる彼女の視点がかわいい。

こないだまで、定番だった「オリオン座流星群」で2人夜空を見上げる幸せをうたったが、その続編のような感じ。倉沢桃子の歌世界が急速に明るい彩りになっているようで、ちょっと嬉しい。


出演者3人の最後は小林未郁。圧巻ビックリマーク色々な形態で音楽をしていて、どれも良いのだけど、やはりあの美声と技量で歌い上げる毒を散りばめたソロのステージはぐっとくる。

1)ブランコ
2)カタマリ
3)群花
4)飼育小屋
5)はんぶんこ
6)毒
7)まどろみ
en. さよなら、おやすみ

最近、短期間に小林未郁は4回目。ちょっと、彼女の毒に魅せられつつあるな。それに、剣舞やダンスとコラボで演劇祭に出たり、異色の音楽家と3人で組むユニット「鎌倉組」で新しい音世界を紡いでいたり、毎回違う魅力を発見している。

小林未郁ワールドは奥が深く、それだけ奥を覗きたくなる衝動を駆り立てられるのだ。

それだけに、注意が必要だ。飼育小屋に入れられてしまわないようにね(笑)。新しい男が逃げないよう、しっかり飼育小屋に閉じ込めなければ、と歌う4)からの3曲がいい。目や腕もはんぶんこでいい、あなたとならと愛の深さを詠じ、嘘をつくたび一粒ずつあなたの皿に毒を盛ります、と昼ドラかサスペンス劇場かという世界に迫真のリアリティーがある。ピアノ弾き語りでその緊張感を生み出す歌唱力や演技力は素晴らしい。

当然のように熱烈なアンコールの拍手。では明るい曲をといって、手を止めて思案。「やはり、眠たい歌にします」とお昼だけど「さよなら、おやすみ」。しっとり、お別れの曲で、この日のコンフォートのランチライブ締め括った。


さあ、今日はこれから渋谷めぐみのワンマンだ。1930~日吉napだよ。来れる人はどうぞ。オススメです。