10/6/24 marina 倉沢桃子 初田悦子 @代官山LOOP | 音楽偏遊

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最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

日本戦やら、飲み会やら、Motherやら、仕事やら、水曜日見たライブのレポ書いたりで、時間がどんどん過ぎていく~。もう代官山LOOPに行ったのが、遠ーい昔のよう。感動がセピア色になる前に、早く書き留めねば。

LOOPのイベントは、矢沢洋子とライブハウスの共同主催企画「Naturalism」の第10回目。毎月開催だから、企画始まって10カ月たってるんですね。毎回、キラキラ充実の女性アーティストが出る魅力的なイベントです。

その節目の今回のラインアップは個人的には外せない出演者揃いで、楽しみにしてました。出演はmarina、倉沢桃子、初田悦子、森恵、矢沢洋子の順に5組。桃子さんは2日連続、悦子さんは先週土曜に聞いたばかり。森恵も5回目くらいかな。実力があって、惹き付ける何かを持つアーティストたち。旬です。さらに矢沢洋子がまた魅惑的で、自分のツボにはまってる。この夜の演奏はみな充実しており、満足度高いイベントでした。

その中にあって、オープニングに聞いたことなかった歌手、marina。会場に到着すると、客席最前列は親衛隊のような熱烈ファンが多数占拠し、マリナコールの打ち合わせ中。会場間違えたか?ガーン彼女が登場すると盛んに声援送り、MCではバンバン掛け合い。まごうことなきアキバ系。

この日は彼女が歌うアニメ挿入歌などを披露。ファンが大喜びという展開で、少し引くぐぅぐぅ。サポートにドラム、キーボード、ベースを揃え、歌は声を張り上げ元気一杯にガンガンと。声帯、お大事に(笑)

続いたのが静かでやや暗いガーン倉沢桃子。1人でギター弾き語り。しかもアルペジオ中心。ノリノリな曲は殆どない。マリナとのギャップが可笑しくて、1人ほくそ笑んでしまった。

アキバ系ファンが、倉沢桃子についてこれるか逆に心配になったが、意外に真面目に聞いている。後で1人に聞いたら「いつもは後の出演者聞かないが、今晩は他の人も素晴らしくて最後まで立てなかった」と殊勝。2番手の倉沢桃子が彼らを引き留め、一気に客が引いて場が白ける事態を回避できたといえるかも。彼女の演奏は、静かだけど、心を捕らえるんだよね。

最も倉沢桃子は、客が立とうが、寝ようが「どうぞご自由に」という感じでいつも超然としてる。いつも通り、いきなり演奏を始めようとしたが、ざわついていたので珍しく「こんばんは、倉沢桃子です」と自己紹介に切り替え。会場が落ち着くまで間を取った。珍しいこと。ただ、周りに期待して裏切られる位なら、最初から全く期待しないよ、みたいな風情は変わらなかったが(笑)

そんな不器用な生き方が、歌にも現れて、魅力となっているのが彼女。人間誰しも思うようには生きられないもの。人には言えないが、心の中に灯すささやかな喜びの炎や、悲しみや悩みの紫煙。倉沢桃子は身を削るように、そうした内面に光を当てた歌を歌い続けている。

セットリスト
1)未完成
2)人間らしく
3)名前を呼んだ
4)命
5)つなぐ力
6)鶏肉と塩コショウ

引きこもりと自称する彼女が書く詞は、「未完成」「人間らしく」など大上段に構えず、あるがままの体験を描いており、共感しやすい。ただ、その視点は非凡。あの詞は逆立ちしたって自分には書けない。素人は虚飾や観念を詞に混じえてしまいがちだ。

そうしたものを削ぎ落とした彼女の詞は、淡々としていながら、心にグサグサ突き刺さる。飾り気のないギターの演奏も効果的で、彼女はまさに現代におけるフォークの王道を示していると思う。


3番手は初田悦子。

彼女の持ち味もユニークで、前の2人に勝るとも劣らない存在感で、会場の雰囲気を一変した。すごく単純に言ってしまえば、彼女は大人なのだ。

前にも書いたが、現在子育て中。年齢は「非公開ということで」とコメントすると、すかさず会場にいた姉から「○○路っ」と突っ込み。息のあった姉妹です。実際、年齢隠してなくて、それどころか、現在子育て中のママさんアーティストとして、娘への想いを歌った曲がデビュー曲なのだ。

元々が関西人らしい笑いに長けた明るい性格。さらに子供を持ち、人に対する愛情がより豊かになったのではなかろうか。包み込むような優しい笑顔に、人類愛や包容力が溢れてる。それを類い希な歌唱力で、会場全体に行き渡らせていく。

1)星のピカリ☆
2)Rainy Blue
3)Calling You (Holly Cole版カバー)
4)Nightingale(カバー)
5)君のママより
6)僕らのららら

メルヘンちっくな1)とデビュー曲の5)は、まさに母として子ども達への優しい眼差しに満ちている。デビューアルバムにはそうした想いを込めたオリジナルの楽曲が多数収められていて、ママさん層のファンが多いというのも頷ける。毒がないのも、彼女らしくてよい。(関係ないが、小林未郁の「毒」という曲に最近はまってますが)

この夜はさらに、そうしたオリジナル曲以前に、命のいとおしさを切に感じて歌うようになったというカバー曲「Nightingale」も披露。「『君のママより』と合わせて、歌いたいという念願がかなった」とのこと。

しかし、初田さんは晴れ女なのだろうか。梅雨入り後の東京ライブツアーということで、「Rainy Blue」をセットリストに毎回入れてたのに、ライブの日は必ず晴れ。この曲の「しとしとしと」という所が大好きなのだが、雨降りの日に聞いてこそ一層雰囲気がでるのだが、今日も残念。雨が降り、家に引きこもりながら貴方を想う。そんな情景がありありと浮かぶ優しい曲なのだ。多分、若い子がこの曲歌うと、切実になりすぎ、こんな余裕ある空間作れないだろうな。

そして、大人の魅力を最も魅せてくれたのが「Calling You」。ホリー・コールは真っ暗闇ね空間から助けを求めているような切迫感かあるが、初田版はやや優しく、しっとりと。ジャズ歌手ではなくポピュラーだが、聞かせる。歌唱力が素晴らしい。もちろん技巧ではいくらでも上はいるのだが、彼女が歌うとHeartwarmingなんだよね。また、いわゆるJPOP歌手の中では、かなり上手い部類に間違いなく入る。

最後は「ららら」。この曲で会場と一緒に盛り上がるのを、ライブの定番にしていくようだ。明るく前向き。土曜に続き又一緒に歌ったよ。初田悦子らしい、歌い出したくなるハッピーな曲。これで、彼女は今回の東京ツアーを締めくくった。次は8月かな。

個人的な希望ですが、その際は「ららら」と「光」両方歌える構成考えて欲しいなあ。「光」は激しくて、初田さんも大変だと思うけど、あれも名曲。生で聞きたい、というファンのお願いでした。


この後の森恵、矢沢洋子は次の日記に続く→→→