10/3/30 清家千晶 他 @表参道FAB | 音楽偏遊

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久しぶりの清家千晶ライブ。しかも対バンは拝郷メイコではないですか。ファンとしては見逃せません。で、桜咲き、今月2回目となる満月=ブルームーンの輝く夜、表参道FABへ繰り出しました。

この日のFABの音楽景色はちょっと想像と違ってた。出演者は意識してなかったと思うが、4組出演して、使われた楽器が全部でわずかに弦6本のみ!!誰もパーカッション系やキーボードを入れてない。ブッキングの狙いかもしれないが、だとするといつもはバンドの清家千晶がなぜ入るの?となる。その結果、見事にアコースティックな、穏やかな一夜になった。逆に言えば、ちょっと盛り上がりに欠けたきらいはあるが。

まあ、メイコちゃんはいつものギター一本弾き語りなので分かる。ほじょりんも、ギター伴奏がスタイル。しかし、fuwalaはもっと色々な編成でやってなかったかな?トリを努めたのに、ミニギターだけの弾き語りとは。

何より驚いたのが清家千晶。サポートはいつもバンド編成でやっていたのが、この日は弦3本のみ。エレキギターにガットギター、ウッドベースだけ。いや、他の3組がアコギ1本だけだったので、それでも音の面で贅沢(?)ではあるのだが。

本人曰く「エヘヘ、私がやってみたいと言ったんだ。でも、やってみたら難しかった~」って。確かに苦労してたかな。

この構成で音楽の完成度を何処まで高められるのか、その模索をご本人は「戦い」とか「ボクシング」と表現してたけど、お客さんのその言葉への反応は「?」だった。初編成の音と戦っているなどの説明が無かったからね。しかも、あの清家千晶の胸を刃物で抉るような歌唱が、アコースティックで珍しく丸い柔らかな感触だったものだから、ボクシングという言葉とどうも結びつかなかった。僕も後から話していて、やっとふにおちた次第。

しかし、千晶ちゃんは今年は色々と新しい事にチャレンジする考えとのこと。前向きだー。そのポジティブさが音にも現れていた。全体的に明るく、彩りがあった。

セットリストは以下。
1)オルゴール
2)スミレ
3)endless
4)幻
5)この体。
6)裸で煙草

まず、注目はスミレが2番目って所。最後に登場したfuwalaがMCで、学生時代に清家さんのスミレに感動して、シンガーソングライターという生き方に憧れた、だから「今日始めて同じ舞台に立てて、生きてきて良かった」(笑)と話していました。ウワー。そんな前から清家千晶はメジャーだったのかあ、と思ったお客さんもいたと思う。

その通りなんだが、ポイントは、その頃からずっと「スミレ」は彼女のライブのエンディングを盛り上げて締める決め歌だったという点。それを、前の方に持ってくるようになってきた。何かが清家千晶の中で変わり始めてるのだろうね。それがいいな、と思える空気。親しみやすく感じれたのです。

そしてこの日のステージは彩りに満ちていた。昨年のいくつかのライブでは濃い墨を落としたような、闇のもつ迫力と圧迫感が魅力的だった。デビューした頃の彼女がインタビューで、彩りや光景を歌で映し出すことを考えてる、と話し「花唄」などを歌っていた頃とは、多分、違うモードにいたと思う。

それが昨年末ころからだろうか、彼女の音楽風景に光量が増してきたと感じるのは気のせいか。この日のスミレがセピア色で、エンドレスは萌える緑色の光景が見えた。幻は金色に輝き、裸で煙草には煙の向こうに桜色の景色が浮かんだ。あまり、今までになかったことだ。

前のライブ評やアルバム記でも書いたけど、確かなものは手で触れるモノだけ、と微かな手触りに希望を託す切実にゾワゾワして、逆に目を閉じた先に世界が広がっていた。それが、心を感じられるようになったと「フワー」を歌い始めたのが、歌に彩りが出てきた時期と一致するようだ。

アコースティックは、確かにこれまでの清家千晶には似合わなかったかもしれないが、今は何となく合っている。いいんじゃない?

この日のお気に入りの一曲は「endless」。幾千の夜を越えて出会いたい。なんか希望を感じたな。音に対するこだわりは、以前と変わらず天才的だと思う。今日ガットギターを弾いていた自身もアーティストの樽木栄一郎君にこだわりが強くて「面倒くさいシンガーソングライター」と評されたこと、彼女自身喜んでいるけど、そういう芸術家肌に惹かれるね。

明るい千晶ちゃんは、とても面白そう。飲み会とかで、その「面倒くささ」を一緒に楽しみたいなあ。変!?

多分、この日のファンの数では、拝郷メイコが一番多いと思われ、活動の幅が広いfuwalaも一定の集客力があるよう。千晶ちゃんのこだわりや、奥手?なところが集客に繋がらない一因とは思うけど、新しい清家ワールドを磨いていけば、ファン層広がりそう。彼女は多くの人にもっと聞いてもらいたい歌手です。

他の3人については次稿で