仕事が忙しくなってきた。送別会の予定も続々入り始めた。多分4月も忙しく、これは暫くライブに行く回数も減るだろう。致し方ない。
そこで、時折、最近聞いているアルバムに関する雑記をブログに書いていこうかと思う。評といえる程のものでなく、ごく私的な、そう日記のような感じで。
その一発目は、ヒナタカコの「花筺」ではなく、峰香代子の「十三夜の月」を書き留めておきたい。3月13日にレコ発ライブがあるので、その前にね(発売は先月)。
このアルバムは13曲を収録している。この数に意味がある。彼女は長くインディーズでは歌っていたのだが、2007年にモバゲーが実施したミュージックオーディションで、応募1250組のなかからグランプリを獲得した。そこが起点になり、現在avexから売り出し中の彼女がいる。グランプリ受賞曲こそ、このアルバムの1曲目「child」だ。
そして、彼女の売り出しのため始まったプロジェクトが2009年の挑戦、12カ月連続の毎月新曲ダウンロード発売という試練だった。シンガーソングライターである峰香代子自身が、当然全曲を自分で作詞作曲するのが原則だ。
毎月、一定のクォリティの楽曲を完成させ、レコーディングまで仕上げることが彼女に課せられた。勿論、アレンジはプロが助けるのだが、ネットや携帯で有料で、コアファンでもない一般大衆の前に提示するのだから真価が問われる。当然、恥ずかしい曲は作れない。そのプレッシャーや難苦は幾多あった事だろう。
そして12回、月が満ちて、また欠けて、12の作品が紡がれた。年が明け、起点となった「child」から始まり、リリース順に12曲、計13曲を収めて発売したのがこの「十三夜の月」だ。それだけに、彼女の現在に至る人生の一部を切り取った作品ともいえるだろう。
改めて最初からアルバムを聞いて抱く個人的な感想は、昨年10月というタイミングで初めて彼女のライブをしっかり聞く機会に出会えて「ラッキーだった」という事だ。なぜなら彼女が9月にリリースした「ガリレオの月」を聞かなければ、彼女のファンになっていなかったと思うのだ。
勿論、彼女の代名詞ともいえるchildは、心に残る曲だ。5月の「ひまわり駅」はメジャーデビューシングルにもなった。4月の「ラブレター」は、峰香代子らしさをすごく上手く表現できている大好きな曲だ。9月の「妄想恋愛中毒」のアップテンポな曲調も
ただ「ガリレオの夢」をあの最初のライブで聞かなかったら、「そこそこいい歌手だなあ」くらいの認識止まりだったかもしれない。ガリレオの宇宙スケールの歌詞世界と、それをひたむきに表現しようとしていた峰香代子に引き込まれたんだと、今改めて思う。
前に書いたが、彼女は3週連続、深夜番組「音龍門」で取り上げられた。そこで、昨春に一度、全く詞が書けなくなる大スランプに陥った姿が描かれていた。その壁を越えて、一つ上のステージの曲が作れるようになったという。
もし僕が4月頃に彼女のライブを見ていたら、「また彼女を見たい、聞きたい」と思わなかっただろう。最初の1月から3月までの曲はまだ発展途上で、彼女自身の個性ともしっくりしていない気がする。ひまわり駅もガリレオもない時点で、チャイルドとラブレターだけだったとしたら、そんな歌手もいたなあと素通りしかねなかった。
続けて翌月、また彼女のライブに足を運び、その時は10月リリースの「Mr.Smily」が聞けた。これもなかなか良かった。峰香代子にはまり始めた。そして年初に比べ、ぐっと大人びた感のある「オブジェ」や12ヶ月を締めくくった「月とくじら」。しり上がりではないけど、「十三夜の月」は彼女の成長の軌跡ともみれるし、多彩な月の姿と揺れる女心も楽しめる。
多分、彼女については好き嫌い出てくると思うが、アルバム制作の経緯などを想像しながら聞くことで、いっそう楽しみが増すと思う。