お昼のNHKスタジオパークに、ゲストで幸田浩子さんが出ていた。世界的なオペラ歌手。ソプラノで本当に素晴らしい美声を持ち、見事な発声で技巧的な曲も軽やかに歌い上げる。ホレボレする。
彼女は、ソプラノの中でもコロラトゥーラで、高音を超絶技術で華やかに歌う。コロはカラーと同じ語源からきていて、色彩たっぷりに歌うという意味だと説明。彼女の歌には、声にも歌い方にも色彩感があり、欧州の本場で高い評価を受けているのも納得だ。
ところがオペラの、特にコロは、短いパッセージの中で音階が上がったり下がったりする恐怖のジェットコースターのようなもの。ビブラートでは駄目で、究極的な歌い方が求められる。勿論、クラシックなので、その激しい上下動の中でもピタッと楽譜通りの音階を出さねばならない。
日本人女性は声が高めで軽いこともあり、コロに挑むソプラノが割合多い。でも、実際に技術が伴い、声質もピッタリで、苦もなく歌って色彩感を出し、感動させられる歌手は数えるほどしかいない。それだけに幸田さんは稀有な存在だ。
しかも関西人で、トークも面白い。ビジュアルもなかなかなので、今後、益々人気が高まるだろう。
そんな番組を見たためか、飯田橋ラムラでソプラノ四人組の「Festinalente」のフリーライブがあるので覗いてみた。
グループ名の意味は確かラテン語で「悠々として急げ、急がば廻れ」だったかと思う。昔、心のゲームといわれるゴルフの漫画で、主人公がその言葉を頭の中で繰り返し、平常心を保つシーンがあったのを記憶している。
それで演奏だが、うーん、皆さんゆっくりでいいからもっと技量上げようね、という感じ。幸田浩子さんの歌声を聴いた後だけに、余計そう思ったのかもしれないが。
日本の童謡や「涙そうそう」は、まだ技巧が必要ないので聞けた。最もソプラノばかり4人集めたグループなので、コーラスの音域が狭く音質も幅や深みが足りない。アルトとか1人いると良いのだけど。
しかし、オペラやオペレッタ曲はいただけない。シュトラウス「こうもり」よりシャンペンのうたを冒頭で歌ったが、うーん、という出来。特に一番高いパートの2人の発声が…
ドイツ風でもイタリア風でもない発声。日本風なのだろうか。雑味が混じり、とんがり過ぎ、きれいでも芳醇でもない日本酒のような、というか。わかりずらい比喩ですいません。
場所が駅ビル内のホールという不利ももちろんあるのだが、問題の第一はテクニックの不足と発声の狂いだと思う。全国で演奏をして回っているようだが、そうした活動を続けるうちに発声などが荒れてきているのではないだろうか。しっかりとした指導者やトレーナーについて(勿論クラシックの)、ソプラニスタとして磨く作業は継続しなければいけないと思う。がんばれ。