ハッピーカフェ企画No1.の最後に登場したのが、神山みさ。
いつものハッピーカフェのように、お客さんと交流しながらリクエストを聞いたりしつつ歌う曲を決めるスタイルで考えていたそうで、何をどの順番に歌うか考えていないと告白。そこから、彼女がこの場を考えながら選んだ曲目は、いわば彼女のこの日のメッセージ。次はどの曲を持ってくるのか、固唾をのみつつMCを聞くのが楽しかった。
結果として、彼女の様々な配慮が感じられた素晴らしい曲順だった。
曲順は以下。そこに込められた意図読み解いてみて。
1)海のうた
2)あなたは生きて
3)バースデイ
4)たんぽぽ
5)ただ前に進め
6)カタチのないもの
まずは晩夏の夜ということで、神山みさの夏の歌の代表作「海の唄」。
スローバラード。
小泉恵理子ちゃんがテンション上げて、休憩でざわついていた会場を、
アコースティックなギターイントロですっとオンステージへフォーカスさせる。
そう、これが百戦錬磨の戦いぶりなのですな。
あくまで押さえ気味ながら、ぴーんとした緊張感。
リズムに安定感がなく、音色がばらけていると、観客の気もそぞろになってしまう。それをキュッと集中させるのは、やはり一定以上の技術が必要なのだと改めて認識させられました。
歌いだしから緩みがない。つかみはOK。
ここが一番大事だよね。ライブでは。
これで、前に歌った二人とは自分は違うんだと、観客にも伝わるし、自分自身も冒頭から高い水準に持っていける。
それに、この歌の波が揺らいでいるような、ゆるやかなメロディーは、ほーっと放心させてくれて、癒してくれる。今夜、すでにここまでに3時間近くこの会場にいるお客さん思いの曲でもある。
2曲目 あなたは生きて
小泉恵理子ちゃんのお客さんには分からなかったかもしれないけど、これ、多分、恵理子ちゃんが歌った「DearFriend」への応答歌。
なぜなら、この曲は彼女の友人らが作り上げた舞台「dear friend~引き継いだ文字を想いと共に~」のテーマ曲として、彼女が作った曲なのだから。(実際に舞台の終わりに彼女がステージで歌ったよ)
舞台初演日の前日にも、ここデシジョンカフェで、できたてほやほやのこの新曲の初披露をしてくれた。そのときは、まだしっくりしていなかったけど、
その後何度も歌う中でしっかりチューニングされ、磨かれ、今夜は思いがひしひしと伝わってきた。
それにスローバラードを最初に続けるのは、こうしたライブの定石の一つ。抑えて歌っているだけに、おのずと期待感が膨らむのです。
3曲目 バースデイ
毎曲終わるごとに、「次は何を歌おう」と演奏の最後になると考えながらやってますとMC。場当たり的に曲を選んでいるようでもありながら、やはり3曲目にはアップテンポの曲をもってきた。
これは本日のお客さんからのリクエストということでもあったけど、今夜初めて神山みさを聞くお客さんとコミュニケーションをとる口実にもしやすい。
「8月誕生日の人いますかー」とふると、3人いて、それではみなさんの誕生日を祝ってと歌いだす。
すかさず会場に拍手を求めて、新しいお客さんたちと一緒になって盛り上がった。こうゆう所、ストリートライブとか何百回とやってきた経験が生きてるよね。初めて神山みさを聞いたお客さんたちも、もうこの時点で相当、神山みさファンになっていたね。
4曲目 たんぽぽ
この流れで引き続きアップテンポな「ケンカは嫌い」とか「スタンド」とかに行くかと思ったら、素朴な曲を持ってきた。違和感。のりかけたお客さんの中にも少し引いた人もいた様子。それだけに、この一曲を選んだみさちゃんの心情が興味深い。
曲間のMCで、自分は二十歳そこそこで東京に音楽がやれるかもと不確かな思いを抱いて上京。そして幾多の壁や苦しみを乗り越えてここまできた。今、心の中にある夢の芽、すなわち武道館ライブという大きな目標を水をやり、肥料を与え、太陽の光を注ぎ、大きく育てていきたいと考えている――と語った。
そして、上京前から歌っていた自作の「たんぽぽ」を歌った。
つまり…
今日、初ライブだったHannahちゃん、音楽に没頭していこうとしている小泉恵理子ちゃんの二人への、先輩(?)神山みさからのメッセージだったのではないかな。
がんばれ。自分は最初、こんな歌を歌っていたよ。それがここまで来たよ。
がんばろう!
この流れできたら、次の曲はもはや自明。
5曲目 ただ前に進め
二人への賛歌であり、お客さんへの励ましであり、自分自身の決意の宣言でもある。
力強く歌い上げたこの曲に、会場のお客さんはすごくのっていたと。体を左右に揺らす人、足でリズムとる人、手をぎゅっと握る人。いろんな形で曲に共鳴しているお客さんの姿が目に入ってきた。
そして、一つ気づいたのだが、今回というかいつも、教会以外で歌うとき、神山みさはクリスチャンであることとか、それに関するエピソードとかあまり語らない。今回、前の二人がそのことを強調している場面が多かっただけに余計、対比されて印象深かった。
お客さんがの信仰は人それぞれだ。それだけに、教会以外の会場ではそれを訴えることは、別の信仰の人たちには居心地の悪い思いをさせかねない。だからこそ日本では特に注意が必要なんだ。多分、みさちゃんはよく分かっている。
言葉にして訴える必要はない。曲の中で「神様」を賛美しなくてもいいんだ。その歌を聴くだけで、聞いた人たちにSalvationがあるのだから。神山みさの歌は決して癒しやヒーリングではない。もっと強い。祈りであり、救いなのだと僕はとらえている。
一応、断っておくが、僕はクリスチャンではない(無宗教だ)から、こうした言葉を多分信仰の中で使う場合と少し違う意味で発している。
けれど、神山みさの歌の世界には、宇宙や地球や季節や人を優しく見つめる愛がある感じがする。あらためてそんなことを思った夜だった。
ラスト カタチのないもの
3人でセッション。即興に近かったからだろうが、あまりコーラス部分はうまくいってなかったけど、みさちゃんの歌を、hannahちゃんも恵理子ちゃんも歌詞も見ずに歌っていた。きっと、この曲がとても好きでよく聞いているのだろう。それぞれが歌うパートで思い入れを感じた。
まあ、そのなかでみさちゃんが歌うと、やはり姉御の貫禄でしたが。
そんなこんなで、大賑わい。
みさちゃんもCDたくさん売れたようで、新しいファンもできたのでは。
楽しい一夜でした。