フリーランス翻訳者が3月に忙しいもう1つの理由
3月は、1年の中でも翻訳者が最も忙しい月だと思います。
「年度末は忙しい」ということを知っている人も多いかもしれません。
翻訳者以外でも、日本の年度末に当たる3月(年度末=1~3月という認識でよろしいでしょうか・・・)は多くの業界で仕事が最も増える時期だと思います。
最大の理由は、「年度末の会計調整」にあると思います。
つまり、特に日本の官公庁(政府関係)に多いと思いますが、会計年度の最後に、予算消化のための発注が増えるという、独特の事情が(いろいろな業界で)仕事が増える大きな原因です。
あまり優先度は高くないけれども、予算にあまりが出たらやっておこうという仕事です。
翻訳の仕事は、比較的そこに当てはまるものが多いと思います。
特に政府関係ですよね。
これは、日本の場合は伝統的なような気がします。
ですから、だいたい1年の予算の消化状況がはっきりする1月くらいから、翻訳の仕事が増える傾向にあるのです。
この「年度末の予算消化の影響で翻訳の仕事が年度末に増える」というのは、比較的よく知られている事情だと思います。
しかし、翻訳の仕事が年度末に増える原因が実はもう1つあります。
正確に言うと「翻訳の仕事が増える」というわけではなく、「翻訳者の人手が足りなくなる」=「翻訳の仕事が回ってきやすくなる」ということです。
つまり、駆け出しの翻訳者など、翻訳の仕事を渇望している人たちにとっては、大きなチャンスになる時期と言えるでしょう。
3月は特に、実は多くの翻訳者が仕事をあまりしなくなる時期なのです。
翻訳の仕事をしている人たちは、実は多くが在宅で仕事をしている人たちです。
最近では、ローカライゼーションのインフラやソフトウェアが整ってきていて、さらにその傾向が強くなっています。
一概には言えないのですが、家庭の仕事を本業としている人たち(いわゆる主婦の人たち)をイメージしていただければ分かりやすいかもしれません。
3月は、たとえば子供が受験や卒業を迎えたり、家族が転勤をしたり、あるいは子供の春休みの時期に合わせて旅行をしたり・・・
これはほんの一部の人たちの例ですが、全体的に見ても、3月は普段の月に比べて、労働力が足りなくなるのです。
社内翻訳者もこれは同じかと思います。
社内で異動があったり、会社自体が忙しくなって引き受ける余力が減ったり・・・
私も、今月は特に前半、確定申告の作業に追われたりなんだかんだ引き受ける仕事の件数が減りました。
ただでさえ、ワークフォース(労働力)が減るのに、仕事の絶対量はむしろ増えるのです。
こんな事情もあり、仕事を引き受けてくれる人が、喉から手が出るほど欲しい時期が特にこの3月なのです。
ということで、もし「翻訳の仕事を始めてみたい」とか「取引先を増やしたい」と思っている翻訳者の方がいらっしゃったら、この時期は絶好のチャンスと言えるかもしれませんので、積極的に動いてみるとよいかと思います(3月ももう終盤で、ちょっと遅かったかもしれませんが)。
ちなみに、3月に仕事が増える要因は、何も「年度末の予算消化」だけではありません。
たとえば、私がいま担当している「プレスリリース」の翻訳の仕事も、この時期比較的(絶対量が)増える仕事だと思います。
プレスリリースとは、企業や政府などから報道機関向けに情報を発信することです。
「記者発表」などと呼ばれることもあります。
新製品の情報や決算発表、合併の情報など、その内容は企業が公に発表したいあらゆる情報です。
3月は、多くの企業が年度末を迎え、新年度に向けた発表が増える時期です。
海外の企業は、必ずしも4月が新年度とは限らないので、あまり関係ないのでは?と思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。
やはり、日本市場を意識して、4月に向けて新しいことを発表する海外企業も多いのです。
日本語の翻訳を担当していると、特にそういう流れがやってきます。
ですので、プレスリリースの仕事ひとつをとっても、やはり3月はかなり忙しくなります。
プレスリリースの記事は、世界全体の企業が対象となりますので、昼夜を問わず入ってきます。
ですので、世界各地のタイムゾーンに住む翻訳者の間で手分けして仕事をしています。
それでも、このところは人手が足りない感じです。
プレスリリースの記事が届くと、翻訳システムの「プール」に掲示され、手の空いている翻訳者が早い者勝ちで案件を取って翻訳をするシステムなのですが、最近はいくつかの案件が誰にも引き取られずに残っているケースが増えています。
私は、だいたい朝8時くらいにシステムにログインして、当日の仕事がないかチェックするのですが、最近は前日締め切りと設定されている仕事も、複数が誰にも引き取られずに残っているということもしばしば。
ですので、最近はまず朝一で1本か2本のプレスリリースを翻訳して・・・という日が続いています。
まあ、もちろん誰にでも簡単にできる仕事ではないかもしれませんが、プレスリリースの翻訳は、コツさえつかめれば比較的誰にでも(専門知識が少なくても)できる仕事だと思います。
締切がタイトで、背景情報が少ないときもあり、なかなかチャレンジングなのですが、仕事をたくさんこなしたいという人や、安定的に仕事が欲しいという人には、とても良い仕事だと思います。
分野が幅広いので、勉強することが多く大変ですが、そういうのが苦手でない人には良い仕事だと思います。
UnsplashのManny Becerraが撮影した写真
いずれにしても、この時期は、業界としても仕事が増えるのですが、働き手側が少なくなる時期でもあるので、とにかく経験をたくさん積みたいという人にとっては絶好のチャンスだと思いますので、是非この機会を逃さず、さらに飛躍する足掛かりにしていただければと思います。
参考までに、プレスリリースの会社のいくつかを例としてあげておきます(網羅的ではありません)。
翻訳が関わる、国際的なリリースの会社です。
ただ、翻訳の仕事をする場合は、プレスリリースの会社から直接仕事が来るわけではなく、翻訳会社から仕事をもらうことになりますので(それが一般的だと思います)、実際にプレスリリースの仕事を探す場合は、翻訳会社に当たる必要がありますのでご注意ください。
PR TIMES|プレスリリース・ニュースリリース配信で効果的なPRを実現する
プレスリリースとは、どのようなものですか? 【よくある質問】| 共同通信PRワイヤー (kyodonewsprwire.jp)
Global Press Release & Newswire Distribution Services | Business Wire
ちなみに、プレスリリースの会社のことを英語では「Press Release Agencies」と言います。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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