Happy Valentine Day!は間違い。正しい言い方を教えます。
今日はバレンタインデー
「キリスト教圏の祝いで主に欧米で、毎年2月14日に行われるカップルが愛を祝う日」です。
(出所:バレンタインデー - Wikipedia)
SNSを見ていると、多くの人がお祝いのメッセージを書いていますね。
みなさん、良い1日を過ごされましたでしょうか?
ところで、SNSを見ていて気になったのですが・・・
Happy Valentine Day!
というメッセージを少なからず見かけます。
実はこれ、ちょっと間違いが含まれています。
正しくは・・・
Happy Valentine's Day!
「Valentine's」のように「's」が必要です。
日本語で「バレンタインデー」と言うので、そのまま直訳してしまう人が多いのだと思います。
英語では「Valentine's Day」です。
聖バレンタインの日
「の」が必要です。
「聖ウァレンティヌス」というキリスト教の聖人にちなんだ日で、所有格を表す「's」が必要となります。
これがないと、ちょっと変に聞こえます。
所有格とは「~の」という意味の言葉です。
たとえば、「ポールの本」(ポールの持ち物である本)という意味では「Paul's book」と言います。
「Paul book」ではありません。
「Paul book」と言うと、ちょっと変です。
「ポールとうい名前の本」とか「ポールについての本」とか、意味不明ですが、「ポールの本」という意味ではとられません。
「's」が必要です。
「バレンタインの日」も同じです。
バレンタインのお祝いの言葉は、
Happy Valentine's Day!
と言うようにしましょう。
ところで、英語で「~の」というときには持ち主の名詞に「's」(アポストロフィー+S)を付ける場合と、「of ~」とする場合と2通りがありますが、なぜ2通りあるのか不思議に思ったことはありませんか?
そして、どっちが正しい?
どうやって使い分けるの?
たとえば「ポールの本」Paul's books といいますが、books of Paul と言うのは間違いでしょうか?
実は、books of Paulという言い方は、間違いとは言えないと思いますが、あまり聞きません。
英語ではPaul's booksと言う方が多いです。
それには理由があります。
英語では、伝統的には「Paul's books」という言い方がされてきました。
これは、古英語の時代(5世紀ごろ)にまでさかのぼるそうです。
で、当時は books of Paul という言い方はなかったようです。
当時の英語(古英語)は、所有格を表すとき、名詞に「es」という語尾を付けて表現していました。
文法的に言うと、名詞の「格変化」です。
格変化について知りたい方は、ネットで調べればたくさん出てきますので、調べてみてください。
Wikipediaにもあります。
スラブ語など、現代でも格変化を行う言語はたくさんあります。
古英語も含め、ゲルマン諸語も昔は格変化を普通にしていたようです。
現代語ではほとんどなくなりましたが、それでもまだ名残があるわけです。
それが英語の「's」です。
また、必ず格変化をしなければならない単語は、今でも英語にあります。
代名詞は、基本的に格変化が必要です。
I my me mine
You your you yours
He his him his
She her her hers
などなど
これは格変化です。
格変化をしないと変ですよね。
しかし、現代の英語では、固有名詞(Paulなど)や一般名詞では(ほとんど)格変化をしなくなりました。
格変化をしないと、その単語が「主語」なのか「目的語」なのか、あるいは所有格なのか判別が難しくなります。
語順次第となってしまいます。
(一方で、格変化あある言語は、語順がわりと自由)
1つ例を出すと・・・
古英語で「王様の本」は「cyninges bōc」
「cyninges」は「cyning」(王様)の所有格です。
「es」が付いているので、これが「王様が」でも「王様を」でもなく「王様の」という意味になります。
この「es」がないと「cyning bōc」(王様本)となり、意味が通らなくなるのです。
Cyning biþ bōc (King is book)かな・・・ともとられてしまい兼ねません。
ともかく、文法的におかしくなります。
格変化をする言語では、格変化はとても大事です。
格変化がなくなると、意味が不明瞭になります。
しかし、格変化は覚えるのが大変。
英語も、時代と共に複雑な格変化を嫌うようになり、名詞が格変化しない方向に進んでいきます。
それでも、意味が不明瞭になるのを避けるために、今度は語順を変えて、明瞭に伝わるように変化していきます。
それが「books of (the) King」と、「of」という前置詞を使うようにあったのです。
この言い方は、どうやらラテン語の影響のようです。
たしかに、ラテン系の言語(フランス語やスペイン語など)では、今でも「the king's books」という言い方はなくて「books of the King」です
ラテン語も「格変化」の言語でしたが、実は、ラテン語も時代が進んで各地に広まってくると、「俗ラテン語」という各地の一般市民が話す言語(ローマ教会などの正式なラテン語とは対照的)にバリエーションが広まっていきます。
それが、フランス語やカタルーニャ語、スペイン語などになるわけですが、庶民の間では、格変化が少なくなる方向へ変化していきます。
で、今では、フランス語やスペイン語など、ほとんどのラテン語系の言語で格変化がほぼなくなっています。
英語もこのような傾向を示したか、あるいはラテン系の諸語の影響(多くはフランス語?)を受けたか、いずれにしても、格変化を減少させていきました。
しかし、「所有格」は今でも残っているのです。
それが「's」なのです。
「王様の」という「cyninges」(cyningの所有格)のように、所有格の「es」を語尾に付けているのです。
ただ、現代語では「es」とする代わりに「's」と表記するのあ正式な書き方です。
「es」とは書きません。
「king」の所有格は「king's」であり「kinges」とは書きません。
「Paul」の所有格は「Paul's」であり「Paules」ではありません。
これは「発音」の問題です。
「king」の所有格は「キングス」と発音し、「キンギス」とか「キンゲス」(kinges)とは発音しないわけです。
このように「es」と表記するけれども、「e」の音が欠落している(飛ばしている)ということを表すために「'」(アポストロフィ)が入っているのです。
「アポストロフィ」」は、英語では音の省略や、単語が短縮されるところに使われます。
たとえば、 it is を短縮して「it's」とか、did not を短縮して「didn't」とか。
これと同じ理由で、「kinges」の短縮形として「king's」、「Paules」の短縮形として「Paul's」と表記されるのです。
ですから、必ず「アポストロフィ」が必要です。
Kings booksとかPauls booksではダメなのです。
特に、「kings」と書くと、「king」の複数形と混同してしまします。
ですから、名詞の所有格を表す場合、発音は「kings」であっても「king's」とアポストロフィを入れて、本来は「kinges」という所有格であることを表記しなければならないわけです。
ということで、名詞の「所有格」にあたる「~の」を表すときには「's」と表記するわけです。
そして、英語では、名詞の所有格を表すとき「's」で表す方が一般的であり、「of ~」という前置詞句で表すのは、所有格で表すと紛らわしくなるときや、所有格を作ることができない場合に限られるということだそうです。
ところが、『「's」よりも「of~」の方が一般的だよ』とおっしゃる現地の人も少なからずいらっしゃるようです。
現地でそう言うということで、もちろんそれは正しいことです。
ただ、なぜ「of ~」の方が一般的かというと、それはラテン系言語の影響を受けている人が多いからということになるようです。
まあ、言語は生きていますから、変化することは悪いことではありませんし、間違いということではありませんので、問題ないですね。
しかし、「バレンタインおめでとう!」は「Happy Valentine's day!」であり、「Happy Day of Valentine!」と言う人はまだいないようです。
Happy Valentine's Day to You All!
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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