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恐れていたことが起こりました。
あるMTPE(マシントランスレーション・ポストエディット)の案件で、クライアントからたくさんの修正(いわゆる赤入れ)をされて原稿が戻ってきました。
さきほどプロジェクトマネージャーから、「あなたが翻訳した原稿にミスがたくさん見つかり、クライアントからクレームが来た」とメールが来たのでした。
これは、もう何年もやっている長期定期案件なのですが、ここ2~3年前から機械翻訳が導入され、作業の「効率化」が図られたのでした。
観光関係のウェブサイトの翻訳なのですが、マーケティングのキャッチコピー的な要素もあり、私は当初からMTPE化には反対していました。
しかし、それはもちろん聞き入れられず。
せめてもの抵抗として、TM(トランスレーションメモリ)に入っている既存の訳文や機械翻訳ツールが生成する訳は無視して、自由に翻訳するようにしていたのですが、1年ほど前から「機械翻訳になるべく沿って欲しい」とか「機械翻訳のエラーレポートに従って欲しい」とか「TMを使ってほしい」と言われ続け、「それでは致し方ない」ということで、その通りにしていたのでした。
当然、私のモチベーションやダダ下がりでしたが、プロジェクトマネージャーがそれでいいというのだから、従うしかありません。
いろいろ努力しても、翻訳料が上乗せされるわけでもないですし。
最初はこの案件自体が気乗りせず、仕事の打診が来ても「忙しい」といって断ることもしばしばだったのですが、徐々にメールで直接仕事を引き受けてほしいと、納期を延ばしてくれたり、いろいろ配慮してまでこちらに依頼したいようだったので、引き受けるようになっていました。
そして、ここ1年くらいは何も言われなかった(クライアントからのフィードバックなしだった)のですが、突然、「クライアントからクレーム」とのメールが来たというわけでした。
プロジェクトマネージャーの説明では、「私の誤訳が多くありすぎてクレームが来た」ということになっていました。
しかし、実際に「クレーム」がついた内容を見ると、機械翻訳っぽくなっているところが編集されていたり、用語がTMと違うものに変更されていたりといったものがすべてでした。
クライアントが、機械に頼らず編集した結果であり、MTPEの世界で言う「誤訳」は1つもなかったのです。
このクライアントのクレームには、私も同感です。
クライアントの修正(編集)は、すべて理に適ったものだと思います。
しかし、私にクレームを持ちかけられても、なんとも答えようがないわけです。
しかも、プロジェクトマネージャーさんも、問題の本質が分かっていないので、どうやって説明しようか、現在悩み中です。
恐らく、クライアントからの「クレーム」自体を、見ていないと思います。
「誤訳」と言っている時点で、おそらく見ていない。
クライアントも、コメントの中で「誤訳」とは一言も言っていないのです。
こういう状況で、プロジェクトマネージャーにどうやって説明しようか・・・
どういったら分かってもらえるか・・・
ちょっと悩みます。
このフィードバックにあまり時間を書けるのも嫌なので・・・
最近思うのですが、翻訳の仕事でこのところよく遭遇するのは、翻訳自体の問題とかクライアントの理解不足とかいう問題ではなく、業界内部にいるプロジェクトマネージャーさんの(翻訳の仕事に対する)理解不足。
今、仕事をもらっている翻訳会社はかなり大規模で、人の出入りも激しいようなので、おそらくトレーニングも追いついていないし、そもそも翻訳のことをあまり知らないで、学歴とか職務経歴だけで採用されてくる人が多いような気がします。
そういうところも、翻訳の質のネックになるということはあるのではないかと思います。
今日はもう遅いので、この「クレーム」のメールに返信をしないのですが、さて、何をどうやってプロジェクトマネージャーに伝えようか・・・ 悩みどころです。
最後に蛇足ですが・・・
日本語で「クレーム」と言いますが(「苦情」という意味で)、英語でclaimというと違った意味になります。
英語では、complaintというのが一般的ですね。
claim と言うと、「請求」とか「要求」とか「主張」とかいう意味になり、日本語の「クレーム」という意味にはならないので注意してください。
最後までお読みくださり(愚痴にお付き合いくださり)、ありがとうございました。
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