インド数字は桁が欧米と違うので間違わないよう念のため機械に頼ってみた結果、大変なことになりました
今日の翻訳の仕事で、久しぶりにインドの数字が出てきて、ちょっと面食らいました。
インド英語の数字は、ちょっと独特の表記がされます。
以前、こんな記事を書いたことがありますので、興味がある方は読んでみてください。
インドやパキスタン、バングラデシュ方面の数字の独特の数え方についても、少し触れています。
英語を始めて30年以上、欧米在住歴もあるのに、今ごろ初めて知った英語の数字にまつわる話 | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所 (ameblo.jp)
まあ、インドでは別に独特でもなんでもないので、当然のように使われているので、知らない方が悪いわけですが…
たとえば、こんな風な表記です。
10,00,000
これ、知らないと
「あれ、桁区切りが間違えてるよ?」
「脱字?誤表記?
「10,000,000の間違い?それとも100,000の間違い??」
とか思ってしまいます。
私も以前、何も知らずに著者に問いただしたことがありました。
「誤植がありますよ!」って。
ところが、これは誤植でも脱字でも間違いでもなんでもないのです。
上の数字は、日本語で言えば「100万」英語で言えば「one million」です。
日本やアメリカの知識で考えると、「100万」は「1,000,000」と表記しますよね。
「桁区切り」の話です。
しかし、インドでは「10,00,000」で正しいのです。
無知だったころの私は、翻訳の仕事をして20年近く、英語の勉強をして30年以上経っていたのに、何も知らずに平気で著者にたてついたのでした。
今考えると(無知だったのは自分だったのに、たてついた自分が)恥ずかしくなります。
インド英語では、普通の数え方もするのですが、現地特有の桁の呼称があり、そちらのほうが一般的なのだそうです。
特に、お金を数えるときにはこの桁区切りを知らないと、大きな間違いを起こしてしまいかねません。
翻訳者としてはとても大事な知識です。
今日は、企業の投資関係の書類で、INP 20,000 crore(2万カロール・ルピー)などといった数字が出てきました。
これ、そのまま訳したのでは、訳文になりません。
1カロール=1000万なので、2万カロールは2,0000×1000万=2,000億となります。
これ、(慣れていない私にとっては)とても厄介で、翻訳をしていて頭が混乱してしまいます。
しかも、lakh(ラーク・10万)もよく出てくるので、翻訳するときに本当に慎重にやらないと、うっかりミスしてしまいます。
しかも、さらに高額になると、lakh crore(ラーク・カロール)と合わせ技がきたりするので、本当に目を皿にして読まないと、日本人の私にはとても難しいです。
ちなみに、1 lack crore は「1兆」です。
1,000,000,000,000
こちらです。
でも、インドでは、1 lakh crore または 10,00,00,00,00,000 となります。
そんな大きな単位、めったに出てこないのでは??と思うかもしれませんが、投資や経済の世界では日常茶飯事。
インドの通貨1ルピーは1.78円(今日2024年1月26日のレート)ですので、国の経済の話となればもちろん、世界的に有名な企業なら時価総額もあっという間に1ラーク・カロール・ルピーを越えてしまうわけです。
ちなみに、今日の時点での日本の上場企業で、時価総額が1ラーク・カロール・ルピー(1兆ルピー=約1.778兆円)を超えている企業は、102社あるようです(出所:日本株 日本企業時価総額上位ランキング - 日本経済新聞 (nikkei.com))
日本企業で言えば、ENEOSやキッコーマンあたりが、時価総額がだいたい1ラーク・カロール・ルピーの企業ということになります。
ただ、この桁区切り法、普段から使い慣れていない私にとっては非常にやっかい。
もちろん、間違う訳にはいかないので、自分で計算を慎重にするのですが、それでも何度も何度も出てきますし、頭が疲れてくると正しく判断ができているか不安になるので(気づかないで間違えるのがいちばん怖い!)、こういうときは「機械」に活躍してもらいます。
まずは、トラディッショナルな方法で・・・
まあ、投資関係や財務の(翻訳の)仕事をしている、この程度の桁数はお手の物なので、2,000億という数字はすぐに分かります。
ただ、今回の仕事は「ルピー」ですし、ルピーの相場(物価勘、金銭感覚)がまったくないので、これが企業の扱う金額として普通なのか、果たして間違いなのか、瞬時に判断できません。
こういうふうに「あれ、おかしいぞ?」と感覚的に思うことができるかどうかは、翻訳の仕事をするうえで、(誤訳を回避するという観点からも)とても大事なことです。
ちょっと、自分の感覚に自信がなかったので、ダブルチェックをすることにしました。
私が翻訳ツールとしては最も利用頻度の高いDeepLに聞いてみました。
ありゃ…
ちょっと理解できていないようです。
こういう風に当てにならないときには、次の助っ人に尋ねます。
Googleさんの答えは、自分のと一致した!
でも、Googleさんだって、そもそも信用にならない(誤訳とかよくしてくださるので)
念のため、Googleの検索エンジンで「20,000 crore=」とキーワード検索してみました。
そうすると答えを出してくれます。
twp hundred billion (200,000,000,000)=2,000億でよさそうですね。
ただ、同じGoogle系列なので、念には念を入れてもう1つ…
最近(巷で)大活躍のChatGPTにも聞いてみることにしました。
「2,000億」で決まりですね。
まあ、こうして数字を間違えないように最初は慎重にやるわけです。
一度、ここで数字の感覚が身につけば、あとはだいたいは大丈夫。
しかも、チェッカーも付いてくれているので、まあ大丈夫だろうということで・・・
でも、久しぶりに慣れない数字を扱うときは、慎重になります。
金融・財務の世界は数字が命なので!
ところで、ChatGPTの回答に、他のところで気になるところがありました。
気づきましたか?
10,000,000(1億)と言っています。
これも、よく考えないと、とんでもない間違いになる可能性(リスク)があります。
1クロールを10,000,000だと理解できればいいのですが、1クロールが「1億」だと把握してしまうと、とんでもない間違いになります。
10,000,000は「1千万」ですよね。
この間違いにChatGPT自身は気づいていないようです。
とにかく、機械(IT技術)にはこんな風にたくさんの落とし穴があるので、しっかりと知識を持ち、慎重に仕事をしないと、大変なことになります。
「機械は間違わない」なんて嘘ですよ。
そこに気づいて、しっかりと機械を上手く利用していくことが、翻訳の現場ではとても重要です。
もちろん、人間んである自分もミスをしかねないわけで、ここまでくるとまさに、人間と機械の二人三脚という気もしてきます。
機械に「脚」が何本あるのかは知りませんが。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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