駆け出しの翻訳者が仕事を安定させつつ、スキルを伸ばしていくための翻訳会社の選び方 | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所

駆け出しの翻訳者が仕事を安定させつつ、スキルを伸ばしていくための翻訳会社の選び方

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昨日、「「要経験」の翻訳の世界で未経験者が実績を積む方法」と題して記事を書きましたが、要するに、未経験者であっても仕事は回ってくる可能性は十分にありますし、重要な点は、言語的な側面(品質)だけではなく、社会人としてのメールや電話でのやりとり、それからどういうところから仕事をもらうのが良いかいう点も重要になるというお話でした。

 

翻訳が上手にできるようになっても、「仕事のしかた」を間違えると、下手したら全然仕事が回ってこないということになる可能性もあります。

 

プロの翻訳者としてデビューしたはいいけど、なぜか仕事が継続してもらえないとか、広がらないとかいう人は、是非その「仕事のしかた」も気にしてみていただけたらと思います。

 

ちなみに、私が最初に翻訳の仕事をいただいたのは、ある小さな翻訳会社からのイタリア語翻訳の案件でした。

 

それが、今から22年くらい前の話なので、すごく長いお付き合いになっています。

 

すごく多く仕事がいただけているわけではないのですが、それでもコンスタントに月に1~2件ずつ仕事がいただけています。

 

駆け出しの下手くそな私に、よく仕事を依頼しつづけてくださったと思います。

 

そして、最初はイタリア語の仕事だったのですが、徐々にスペイン語やポルトガル語といった仕事がいただけるようになり、仕事量も増えていきました。

 

多いときは、1日も途切れなかったときもあります(要するに、納品したらまたすぐに次の仕事をいただける状態)。

 

そして、徐々に英語の仕事も増えていきました。

 

ただ、和訳の仕事は(今でもそうですが)あまり多くなく、私の側でも他の翻訳会社との契約が増えていき、和訳の仕事も増えていったので、徐々に、その会社からの受注の数をセーブしていきました。

 

(それでも、いまだに仕事がいただけるのは本当にありがたいです)

 

和訳の仕事が少ないのには、いろいろな理由はあると思いますが、私の印象として、総じて、日本の翻訳会社からは、和訳の案件よりも外国語への翻訳案件のほうが多くくるような気がします。

 

それは、ある意味で自然なことだと思います。

 

日本の会社ですから、クライアントの多くは日本の人たち。

 

つまり、依頼の母数として、日本語から外国語の案件ということが多いのだと思います。

 

ハチハチハチ

 

私は、外国語への仕事も好きなのですが、やはり和訳の仕事のほうが好きというか、多くしています。

 

1つは、外国語への仕事だと、どうしてもネイティブチェッカーを挟まなければならないので、手間とお金がかかる上、ネイティブチェッカーのスケジュールを合わせるのがなかなか難しいからです。

 

ですので、一度に何件も重ねて引き受けることが困難です。

 

日本の翻訳会社(特に、私が取引している企業)は、ネイティブチェックまでを含めて私に依頼してくるので、つまり、納品した翻訳が最終的にクライアントに納品されるという形になるので、どうしても私の方での負担が大きくなります(ネイティブチェック、品質保証、賠償責任など)。

 

一方で、海外の翻訳会社(特に大手)だと、基本的に日本語への翻訳(和訳)の仕事なので、ネイティブチェックは必要ありません(私がネイティブなので)。

 

そして、品質保証などのその後のプロセスが基本的には分業になっていて、他の人が担当することになっています。

 

翻訳者とチェッカーを兼ねることはできないわけです。当然ですが。

 

その分、報酬は少なくはなりますが、それでも責任の軽さと、業務上のフットワークの軽さのため、個人的にはそちらの仕事の比重を多くしています。

 

つまり、私が翻訳をして(もちろん、品質保証をして完成形で納品しますが)、他の人が最終チェック(QA)をやって、そこで見つかったエラーなどを最終的に私が訂正・修正・確認して、納品でる状態にもっていくという流れです。

 

このような分業体制は、品質保証の仕組み(語彙や表現の統一などを含め)がしっかりしていれば、かなり効率よく、時間短縮で行うことができるというメリットがあると思います。

 

私は、このような体制の整っている翻訳会社との仕事を、だいたい8割くらいに増やしており、そのお陰で、翻訳業の最低限の収入が安定的に確保できていると思います。

 

そこを確保したうえで、日本の翻訳会社の案件や、翻訳会社以外の企業や官公庁などとの直接取引で、よりチャレンジングな(責任の重い)仕事を入れるようにしています。

 

かたつむりかたつむりかたつむり

 

翻訳会社からいただく仕事は、締め切りが厳しいものや、単価の安いものなど、あまり条件の良くない仕事が多い気がします。

 

それでも、翻訳会社は翻訳の仕事を専門に受注しているわけですから、ある程度安定的に仕事をいただくことができます。

 

そういう意味で、安定的に仕事をいただけそうな、大きな翻訳会社と仕事をすることがお薦めです。

 

その点、私は人生で初めて(正式な)翻訳の仕事をいただいた翻訳会社とは、少し距離を置いています。

 

和訳の仕事が少ないことと、収入を安定させられるほどコンスタントにいただける保証がないからです。

 

日本の翻訳会社とは、現在も3社からは月に何回かお仕事をいただけていて、関係を保っています(英訳だけでなく、和訳の仕事もいただけます)。

 

過去には、これらの3社のほかにいただけていた会社が、3~4社ありましたが、いずれも仕事があまり定期的にいただけなかったり、先方のお眼鏡にかなわなかったリといことで、ほとんど仕事をいただけない関係になっています。

 

一方、海外の翻訳会社は、初めて仕事をいただいた海外翻訳会社とはいまだに月に数十件の仕事をいただき、収入の安定に貢献していただいています。

 

その後も、取引の会社が増えて、今では海外の翻訳会社も3社と仕事をしており、これらの会社はほぼ毎日仕事の打診がきます。

 

すべて和訳の仕事です(ソース言語はフランス語、スペイン語、ポルトガル語、英語などさまざまですが)。

 

もちろん、自分の翻訳の質を高める努力のたまものだとは思いますが(そう願いたい)、私の翻訳会社の選び方というのも、私の翻訳業の安定に貢献していると思っています。

 

まあ、自分はアメリカで仕事をしていたこともあり、メールや電話でのやりとりは問題ないと言いますか、どちらかというと得意としているところはありますが、基本的には自然体で仕事のやりとりをするように心がけています。

 

つまり、相手(翻訳会社の担当者)も忙しく働く人たちですから、やはりそこに配慮したやりとり・仕事のしかたを心掛けることです。

 

「やりやすい相手と仕事をする」ということが基本だと思います。

 

それは、自分が相手に対して思うことでもありますが、相手が自分に対して思うことでもあります。

 

その「仕事のやりかた」というものも、仕事を継続してもらえるポイントになると思います。

 

日本の翻訳会社で働く人の話はあまり耳にしませんが、海外の翻訳会社で働く人たちは、同業で転職することもよくあります。

 

つまり、昨日まで自分の担当をしていたコーディネーターさんが、突然「辞めるので、引き継ぎますね」と連絡してくることが、比較的よくあります。

 

あるとき、見覚えのある名前で、知らない翻訳会社からメールが来たのです。

 

「迷惑メールかな?」とも思ったのですが、よく読んでみると、先日「辞める」といって去っていった某翻訳会社のコーディネーターさんが、転職先からメールをくださったのでした。

 

これは、業界的にセーフなのかアウトなのか分かりませんが、こんな風に、別の翻訳会社に移ったコーディネーターさんから、別の翻訳会社での仕事を振られることもあります。

 

私はそれで、海外の翻訳会社の取引先が2社増えました。いずれもトライアルなしで、即合格です(誘われているのですからww)。

 

 

UnsplashAmy Hirschiが撮影した写真

 

 

また、同じ翻訳会社の中でも、横のつながりで別のプロジェクトに紹介してもらえることもあります。

 

その場合も、比較的即効で戦力として頼りにされるので、大きな仕事がもらえます。

 

私が取引しているある翻訳会社は、世界各地に支社があり、その支社間でも私の名前を紹介(referral)してもらえることがあり、仕事がどんどん増えていきます。

 

このように、登録する翻訳会社の規模も大事だと思います。

 

大手翻訳会社であれば、翻訳の分野(専門分野)は、基本的にどの分野でも業務として行っているので、自分がどの専門分野であっても、必ず仕事があると思います。

 

そういう点でも、規模は大事かと思います。

 

それでも、特定の分野(たとえば、医療とか特許とか)を得意としている翻訳会社もあると思います。

 

また、私がときどき仕事をいただいている日本のある翻訳会社は、医療翻訳を専門としているので、基本的に医療関係だけ。

 

ですので、医療が専門外の私にはなかなか仕事が回ってこないのですが、イタリア語やポルトガル語などの希少言語の仕事の場合は私に回ってくることもあります(その場合、専門的な内容のチェックは、翻訳会社に責任を持ってもらいますが)。

 

ですから、専門的な翻訳会社であっても、まったく仕事がもらえないわけではないので、自分の得意とすることをしっかりと強調して、その翻訳会社にどう貢献できるかを示すことは、仕事をいただくうえで大事だと思います。

 

とまあ、翻訳の仕事を安定的にもらうポイントはいろいろとあるのですが、特に駆け出しの翻訳者が翻訳会社を選ぶときのポイントとなる点をまとめておきたいと思います。

 

 

・比較的大きな規模の会社に登録する

(小さな翻訳会社はなかなか仕事が回してもらえない可能性がある、特に駆け出し)

 

・多言語ができるなら、迷わず多言語で登録する

(英語は激戦なので、多言語をやっているとマッチングが成立する可能性が高い)

 

・和訳の仕事をしたければ、やはり海外の翻訳会社の方が仕事が多い

 

・海外の翻訳コーディネーターは転職先からも声をかけてくれるので、個人的な人間関係も大事にする

 

・他の支社やプロジェクトにも紹介(referral)してもらえる可能性があるので、支社の多い翻訳会社は有利

頼りになる翻訳者になるよう心掛ける

 

・専門的な翻訳会社であっても、自分の貢献できることがあれば仕事をしっかりともらえるので、専門外であっても登録を躊躇しない

(専門翻訳会社は単価が高い傾向にあるので、わりとおいしい)

 

とにかく、「仕事のしかた」というものも工夫すると、仕事が安定すると思いますし、仕事が入ってきやすくなると思います。

 

私が駆け出しのころは、こういうことを考えず、とにかく合格した(日本の)翻訳会社の仕事を「きっちり丁寧に」することだけを心掛けていました。

 

もちろん、それは間違いではありませんし、きっちり丁寧になることは必須です。

 

でも、先ほども言ったように、私が最初に登録した翻訳会社からは、日本語から外国語の仕事しかもらえなかったので、ネイティブチェックや品質保証など、翻訳プロセスすべての責任を負わなければならなかったので、その分、数量をこなすことができませんでした。

 

もちろん経費もかかりましたし、そのうえ、駆け出しだったので(品質も悪かったと思いますし)単価が安かったのです。

 

ですので、日々かなり不安でしたし、大変でした。

 

それが、和訳の仕事を、海外の翻訳会社から受注するようになり、私の業務ミックスがガラリと変わったことで、仕事を多くこなせるようになりましたし、そうすると、今までの英訳(や、他の言語への翻訳)も、受注数が少なくとも仕事として引き受けることができるようになりました(収入は、和訳の業務が補ってくれますから)。

 

さらに和訳の仕事のスキルも上がりました。

 

こうして、どんどん自分の「翻訳業」というものが安定していったと思います。

 

そして、やはり、たくさん仕事をこなしている人には、仕事がたくさん入ってきやすい気がします。

 

また、仕事の難易度や重さ(業務の期間など)を、画一的にしないで、重いものと軽いものをうまくバランスを取ることで、収入を安定させつつ、チャレンジングな仕事や大きな仕事(出版など)に取り組むことも可能になるので、仕事の取り方や自分のスケジュールを埋めるバランスもよく考えた方が良いと思います。

 

以上、何かの参考になれば幸いです。

 

 

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

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