翻訳者の「読み上げ機能」の活用法。まだ欠点の多いAIだが、完璧になれば仕事が務まるのか?! | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所

翻訳者の「読み上げ機能」の活用法。まだ欠点の多いAIだが、完璧になれば仕事が務まるのか?!

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最近、老眼が進んできていて、細かい文字(特に数字や、フランス語などのアクセント記号など)が見えづらくなってきています。

 

パソコンは、自分で打ち間違えるということがあまりないので比較的いいのですが、スマホは、フリックをミスったのに気づいていなくて、そのまま送信して今うことが多く、ちょっと困っています。

 

とにかく、スマホのときは、メガネを外してきちんと見ながら打つようにしています。

 

(これが老いというものか・・・)

 

とはいえ、仕事でも、特に訳した文を読み返すときは、(自分で書いた文章なので)誤字・脱字を(無意識に)勝手に補って読んだりしてしまうので、見落としてしまうことが多くなってしまいました。

 

視覚情報って、本当に大事だということを、あらためて実感しています。

 

今までは、ざっと目を通せば、誤字・脱字なんてすぐに見つけられていた・・・

 

ネットなどでよく見かける、たくさんの同じ漢字が並んでいる中に1文字だけ混じっている違う字を探せ!みたいな問題は、今はまだ文字の大きさに助けられているけれど、見つけられなくなるのも時間の問題のような気がします。

 

ハチハチハチ

 

そうはいっても、翻訳の仕事をしていると、自分で書いた文を読み返して、誤字脱字だけでなく、つながりがおかしいところや、シンタックスの間違いなどを見つけるために、読み返す作業は必須です。

 

見落とす可能性が高くなっているので、メガネを外して、画面に目を近づけて(私は近視なので、メガネを外すと、今度は画面の文字が見えなくなる)、目を皿にしてチェックをするわけです。

 

少し時間もかかります。疲れます。

 

何か良い方法はないか・・・

 

そう考えていたとき、ふと思いついたのです。

 

それは、MS Wordなどについている「音声読み上げ」機能を使えばよいことを。

 

あまり古いバージョンでなければ、どのWordにもついています。

 

 

これを、ちょっと読み上げ速度を速くして(違和感なく聞き取れる限界まで速くして)聞いています。

 

これが意外に使えるのです!

 

スピードを上げていても、誤字・脱字があったり、文字が重なっていたりすると、すぐに耳につく。

 

これは大きな発見でした。

 

もしかしたら、自分で目で読むより(老眼でなくても!)、こちらのほうが効果的に間違いを探し出せるのではないかと感じています。

 

自分の目で追いながらチェックするときも、自分で声に出して読み上げていたのですが(目で追うだけだと、やはり勝手に間違いを補ってしまって、見落としがち)、そうすると、2~3ページの文ならいいのですが、10ページも20ページにもなると、喉はカラカラ、口はクタクタ、頭はボヤボヤになって、とてもじゃないけど、負担が多すぎて一気にやるのは困難でした。

 

それが、読み上げだと、ただ聞いているだけでいいので(間違いに気づいたら、目を通す)、ちょっと目を話して水を飲んだり、お菓子に手を出したり、首を回したり・・・ わりと余裕があるのです。

 

そうやっていても、わりと集中して聞けます。

 

ということで、読み上げ機能を使った(納品前の)訳文チェック、かなりお薦めです。

 

要するに、他人に読んでもらっているようなものなので、自分の肉声で読み上げてチェックするよりも、冷静に聞けます。

 

ですので、表現を変えたほうがいいなぁとか、ここは聞こえが悪いなぁというのも、考える余裕があります。

 

なんなら、私は納品するとき、クライアントにメッセージを書きながら、もう一度読み上げさせて聞き流しています。

 

それで何かに気づくということもたまにあるので。

 

やはり、使える手段はあらゆるものを使って、間違いをチェックしたり、推敲するということは、とても大事なことだと思います。

 

テクノロジーの発達は、本当にありがたいです。

 

かたつむりかたつむりかたつむり

 

ところで、このありがたいテクノロジーなのですが、最近聞いていてふと思ったことがあるのですが・・・

 

先日、NHKで各局のアナウンサーが集まって話をする番組があったのですが、そのなかで、アナウンサーもAIに押されているという話がありました。

 

NHKでは、もうAIがニュースを読み上げることもあるというじゃないですか。

 

まったくレベルは違う話ですが、アナウンサーのみなさんも、翻訳者・通訳と同じような悩み・不安を抱えているのだなぁと、ちょと関心が沸きました。

 

AIは正確だし、間違えないし(噛まない)、疲れない。

 

だから、確かにAIの技術が上がれば、いずれはアナウンサーという仕事もなくなるかもしれない・・・

 

そんなことを心配している人も多いのではないでしょうか。

 

しかし、番組でも言っていたアナウンサーがいましたが、人間にしかできないアナウンスがあって、人間はやはりそこをいかに見出して、いかに人間らしいアナウンスをしていくか、といったようなことを話していました。

 

確かにそのとおりだと思います。

 

もちろん、「話す」「音に出す」「情報を伝える」という面だけを考えれば、機械でも十分なような気がします。

 

しかし、アナウンサーの仕事はそれだけなのでしょうか?

 

アナウンサーの仕事を、表面的な部分でしか見ていないと、そういう考え方になってしまうかもしれません。

 

開発者もそうですね。

 

しかし、実際にアナウンサーがやっている仕事は、それだけではないのです。

 

番組でも話してしまいたが、現場の状況に応じて、いろいろなことを考えてその場、その場を作っている。

 

また、その日、原稿を読むために、さまざまな準備をしている。

 

あるいは、番組作りに、準備から終わるまで、さらには次の番組につなげるための仕事をしている・・・

 

いろいろ考えてやっていて、それでできているのが報道の番組なわけです。

 

伝えるだけ、というわけではないのです。

 

更に言うと、「伝える」という仕事なのですが、「伝える」と「伝わる」はまた別の話。

 

報道の番組として、「伝える」だけでいいのか?

 

つまり、「伝わらなくてもいいのか?」という疑問です。

 

「言えば伝わる」と思っている人は、これは全く分かっていない。

 

言っても伝わるものではありません。

 

人に何かを伝える経験をしたことのある人であれば、お分かりになると思います。

 

私も日々、(高齢の)親に用件を伝えようとするのですが、なかなか伝わりません。

 

親が聞く体制になっていないと、耳に入っても伝わらないのです。

 

報道の番組は、「伝える内容」を「伝わるように伝える」のが仕事だと思うのですが、そこをどのように実現するか、それを作っていくのが報道の「番組」なわけです。

 

あるいは、新聞でも、ネットニュースでも、それは同じかもしれません。

 

「話す」という一面だけを見ていては、なかなか本質が分からないと思います。

 

その観点から、AIを考えていかないと、逆にいつまでたっても、人間の代わりになるAIは生まれてこないような気がします。

 

要するに、伝える相手が人間なので、やはり人間が頭を使って「伝える」という仕事をプロデュースしていかないと、その役割は果たせないのだと思います。

 

「正確」だけでは、アナウンサーの仕事は完遂できないということです。

 

わんわんわんわんわんわん

 

こんなことを考えたのは、Wordで自分の翻訳を読み上げていたとき、AIが読み上げる声を聞いていて、ふと思ったことがきっかけでした。

 

「確かに、AIは間違えないし、常に正確。でも、これって、なかなか伝わらないよな・・・」

 

 

 

この動画は、いつも自分が翻訳チェックのときに聞いているWordの読み上げ機能です。

 

(最後の1行、スゴイ剣幕で言ってる!ww)

 

いつも間違わない!

(正確)

 

いつも同じ調子!

(疲れない)

 

いつも同じスピード!

(噛まない)


人間だったら、同じ「3兆9587億円」でも、そのときそのときで、違うわけです。

 

しかし、AIはその「揺れ」「ブレ」がないのです。

 

これは、もしかしたら伝わらない原因なのではないか?と、ふと思ったのでした。

 

逆に言うと、人間が言ったことが伝わるのは、そういう「揺れ」「ブレ」があるからではないか、そう思ったのでした。

 

機械に読ませても、伝わる場合はあります。

 

私が今、チェックで使っているような場合です。

 

つまり、こっちに「聞こう」という意思があるとき。

 

ない人には、もしかしたら伝わらなくのでは・・・

 

そこにAIの問題があるような気がしました。

 

今回の話に、まだ結論はないのですが、AIの「正確性」が、逆に「人間の代わりにはなれない」理由になっているのではないかとふと思ったのでした。

 

これは、翻訳者・通訳にも、もしかしたら言えるなぁと思いました。

 

みなさんは、どう思いますか?

 

 

UnsplashAmr Taha™が撮影した写真

 

 

ところで、MS Wordの読み上げ機能ですが、「スピード調整」の方法は簡単です。

 

Wordで読み上げ機能を「オン」にすると、右上に再生や早回し、逆戻しなどのボタンが表示され、そこにスピーカーマークが表示されています。

 

そこをクリックすると、スピード調整ができます。

 

ちなみに、私はこれくらいのスピードで読み上げてもらっています

 

標準速度はもっと遅いのですが、ちょっと遅すぎて、時間がもったいないので、速くしました。

 

(せっかちですかね)

 

ちなみに、YouTubeの動画も、しゃべるのを聞くだけのものは、だいたい1.5~1.75倍のスピードで聴いています。

 

2倍だと、個人的にちょっと聞きづらくなります。

 

それから気づいたのですが、読み上げる人を、他の声に変えられるんですね。

 

日本語は「Ayumi」、英語は「David」でしたが、同じところで他の選択肢(MarkとかHarukaとか)に変えることもできました。

 

 

(ま、どうでもいい話かもしれませんが)

 

ちなみに、ウェブブラウザ(Microsoft Edge)でも、読み上げ可能です。

 

 

こちらを読み上げているAIはまた別の人のようで、日本語はNanamiとKeitaの二人体制でした。

 

Microsoft Wordよりも、Edgeのほうが感情豊かに読み上げてくれるようです。

 

(性格が違う爆  笑

 

とまあ、最後はどうでもよいことをお話してしまいましたが、読み上げ機能は、もともとは目の見えない人のための機能として始まったのだと思いますが、翻訳者やライターさんも、自分の書いた文章の誤字脱字チェックや、客観的に読みたい(聞きたい)というときに、かなり活用できると思います。

 

 

どうでも良い話をしたついでに・・・

 

今のAIは、まだ苦手な文字(読めない文字)があるようです。

 

MS Wordで読ませていると、よく「品」をどこでも「しな」と読んでしまうようです。

 

たとえば「試作品」はいつも「しさくしな」でした。

 

Microsoft Edgeも、こんな読み間違えをしていました。

 

 

「逃避的」を「とうひまと」と読んでいました。

 

まあ、この辺は、技術がアップすれば、近いうちに修正されていくことでしょう。

 

しかし、間違えずにきっちりと話すということは、必ずしも「伝わる」話し方ではないんだなぁと、つくづく思ったのでした。

 

「正確であればいい」というものでは、ないのですね。

 

翻訳・通訳も、もちろん間違いはだめなわけですが、噛んだり、ちょっと声が揺れてしまったり、周りの空気に押されたり・・・ そういうものが、「対人間」の仕事ではむしろ重要になるのではないかと、ふと思ったのでした。

 

AIも、いずれは「人間らしさ」を追求していくんでしょうかね。

 

そしたら、間違いを適度にして、適度に疲れて・・・

 

もう人間やんww

 

 

最後までお読みくださりありがとうございました。

 

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