おてつきをしてしまいました(わたしの映像字幕翻訳の失敗談) | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所

おてつきをしてしまいました(わたしの映像字幕翻訳の失敗談)

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今私が携わっているeスポーツの仕事では、出場選手のインタビューなどを日本語の字幕にする作業を担当しています。

 

世界大会の予選リーグから決勝まで、選手の意気込みや、勝者のコメント、それから実況なども翻訳します。

 

世界大会ですので、昨日も話したように、トルコ人の他、アメリカ人、ブラジル人、メキシコ人、中国人、韓国人、タイ人、ドイツ人、フランス人など、さまざまな国の人の映像を翻訳します。

 

もちろん、日本人もいます。

 

人によっては、英語でインタビューに応じる人もいますが、自身の母国語で応える人が多いでしょうか。

 

英語以外の場合は、それぞれの言語から翻訳された英語の字幕が映像につけられ、私の手元に届きます。

 

昨日が大会の初日で、各チームのリーダーが意気込みやメンバー紹介をする映像を翻訳しました。

 

そこでちょっとしたトラブルがあったので、今日はそのお話をします。

 

※ちなみに、昨日の記事も今日のにちょっと関連しているので、よろしければお読みください。

 

トルコ人のインタビュー映像の字幕翻訳をしました。翻訳者は理解できないトルコ語をどう翻訳するのか? | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所 (ameblo.jp)

 

 

 

 

インタビューの動画は、大会のホームページやYouTubeで公開されるものです。

 

試合は毎日あるので、基本的に毎日映像が制作され、翻訳されます。

 

インタビューなどの映像は、毎日決まったタイミングで公開されるものなので、時間にかなり追われる翻訳作業です。

 

撮影された映像が編集され、それをまず英語に翻訳して字幕を付ける。

 

そこまで完成した映像が私(とか他の言語の翻訳者)に届き、そこから2~3時間以内に(私の場合は)日本語に訳して、字幕にして、翻訳会社に納品。

 

それから、編集・チェックしてくれる人がいて、手直しをして最終的にクライアント(ゲーム主催者側)に納品されるという流れです。

 

映像自体は、多くの場合は数分程度なので、単純に翻訳するだけなら、1本あたり20分~30分ほどで終わります。

 

ただ、問題もいろいろあって…

 

まず、英語の翻訳があまりよくないときがあることです。

 

意味が分からないときがあるのです。それは、おそらく私の英語理解力の問題ではなく、映像を英語に翻訳した人の問題…

 

英訳した人が、原語をよく理解していなかったり、誤解していたり、あるいは英語にうまく訳されていなくて、話の辻褄が合わなくなっていて、翻訳に困ってしまうことがあります。

 

あるいは、インタビューされた選手自身が、うまく話せていないとき(しっちゃかめっちゃかな話をするとき)もあります。

 

そんなときは、「この人、何言ってんの?」「どうやって話を繋いでいこう…」と悩むこともあります。

 

時間がないときに悩みだすと、あっという間に5分、10分経ってしまいます。

 

大会の翻訳の場合、時間がかなりタイトで、5分、10分の遅れが大きく響いてしまうこともあります。

 

なので大変です。

 

通常の翻訳と違って、プロジェクトマネージャーに質問しても、こういう問題は解決しません。

 

でも、何か訳を付けなければならないのです。

 

これが、翻訳の仕事の苦労するところの1つだと思います。

 

ハチハチハチ

 

そんなとき、「自分は英語以外の言語が理解できてよかった!」と思うこともあります。

 

スペイン語やポルトガル語で話す選手のインタビューの場合、基本的に英語の原稿を元に翻訳するのですが、上で話したような、わけの分からない箇所は、選手の言葉を直接聞きます。

 

そうすると解決することは多いです。

 

幸い、吹き替えではなく字幕なので、選手の声を直接聞きながら翻訳することができます。

 

私はむしろ、選手の言葉を直接聞きながら作業をすることが多いです。

 

いや、基本的に、選手の声を聞きながら作業をします。

 

理解できない言語でも、その音声を聞きながら(英語から日本語へ)翻訳します。

 

やはり、声のトーンやタイミングなどによっても、言葉選びは変わってきますし、英語の文字情報だけよりも、やはり音声や表情があった方が、英語の理解もしやすくなるのです。

 

これは本当にそうです。面白いですよね。

 

言葉のコミュニケーションが、言語情報だけではないということが、よく分かります。

 

理解できない言語であっても、音や表情が見えるのと見えないのとでは、伝わり方が違うのです。

 

宝石白宝石白宝石白

 

話はちょっと脱線しますが…

 

(こういうイベントに限らず)映像の字幕翻訳をすることは、私自身よくあります。

 

企業のPR動画や消費者向けのイメージ映像、広告など…

 

たまに、案件によっては、スクリプト(映像の台詞)のみしかもらえないことがあります。

 

つまり、映像自体が見れない。

 

スクリプトには、映像の何分何秒にこの台詞が入るという、時間も書いてあるような、そういうものなのですが、それを参考に台詞(翻訳)の長さを調整するような感じです。

 

しかし、実際の映像を見れば、それも感覚的に分かるし、先ほど言ったように、言葉選びも随分と変わってくるのです。

 

ですので、私はできる限り、映像自体をもらうようにしています。

 

多分、多くの人は、「え?映像見ないで翻訳することなんてあるの!?」と驚いていることでしょう。

 

実際に、映像がないというときもありますし、映像を送ってもらうよう頼まないと送ってくれない翻訳会社もわりとあるので、実際に映像を見ないでやるという人も、世の中にはいるのだと思います。

 

宝石緑宝石緑宝石緑

 

と、ちょっと話が脱線しましたが…

 

映像翻訳の仕事をするとき、こんな風に、スクリプトと映像の両方を使って翻訳します。

 

スクリプトがなくて、映像だけというときもあります。

 

そういうときは、時間が許せば、私はスクリプトを作って(文字起こしをして)から翻訳をします。

 

そのほうが作業がしやすいですし、CATツールに入れて、データベース化もできるので、極力そうすることにします。

 

今回のeスポーツの仕事では、もちろん映像とスクリプト(英語)が必ずもらえます。それは問題ないのです。

 

しかし、今回の大会の初日だった昨日、ある問題が起きてしまったのです。

 

それは、1本目の映像の翻訳を始めたときです。

 

映像ファイルは、翻訳会社のサーバーから直接私自身のPCにダウンロードして見るという感じだったのですが…

 

そのサーバーのアクセスができなくなっていました。ですので、翻訳会社の担当者に頼んで、アクセス権を付与してもらうことにしたのです。

 

そのメールを送って、アクセス権が付与されるのを待っている間、手元にあるスクリプトだけで翻訳作業をとりあえず進めておこうと、作業を始めたのでした。

 

だいたい30分くらいかかったでしょうか。ようやくアクセス権をもらって、映像をダウンロードしはじめたときには、スクリプトだけで(一次)翻訳作業が終わってしまっていました。

 

時間がないので、とにかくざっくりでも翻訳をして、映像はあとから見て、トーンや時間割などを調整しようと考えたのです。

 

問題はここからです。

 

eスポーツの選手の名前が出てくるのですが、インタビューを受けて話している選手の名前は、ハンドルネームです。

 

選手名簿を別途手元にいただいているので、本名も別途ファイルを見れば分かります。

 

しかし、「時間もないし、とりあえずざっくり翻訳をしてしまおう」ということだったので、細かいことのチェックは後回しにして、スクリプトだけを見てざっくり翻訳をしたのでした。

 

そして、ようやく映像のダウンロードが終わり、「さあ、映像を見ながら翻訳を仕上げよう」と思って、インタビューの映像を見たときに、衝撃が走ったのです。

 

映像に出てきたのは、髭を生やしたアジア系の男性…

 

音が流れてくると、彼が話している言葉は、すごく聞き覚えがある言語…

 

日本語だったのです。

 

そのインタビューは、日本人選手のインタビュー。日本語のインタビューの場合は、日本語をそのまま文字起こしをするのが、今回のプロジェクトの方針。

 

つまり、私がその30分でささっと(スクリプトだけを見て)やった作業は、まったくの無駄だったのです!

 

ガーン

 

せめて、チーム名だけでもきちんと確認してから翻訳をするべきだった!そしたら「日本語かもしれないから、この翻訳は映像を確認してからにしよう」と踏みとどまることができたかもしれません。

 

チーム名も、日本語っぽくはないので(メンバーやチームの名前では国籍不明のときはよくある)、そのチームが日本のチームなのか、韓国なのか、アメリカなのか、チーム名からでは(ゲーム事情に精通していない私にとっては)判断できませんでした。

 

今回は大会初日。日本語の映像がいきなりくるということも、想像していませんでした。ですので、反射的に、(日本語から)英訳されたスクリプトだけを見て、翻訳作業をしてしまったのです。

 

完全なおてつきをしてしまったのでした。

 

 

UnsplashEmanuel Ekströmが撮影した写真

 

 

 

幸い、今日は時間に余裕があったので、あらためて日本語で話されているところを、選手が話したとおりに文字起こしをして、なんとか納品しました。

 

でも、「私の翻訳した時間と労力は…」と考えると悲しかったですし、ああー、ちゃんと物事をしっかり確認して丁寧にやらないとだめだな!と改めて思いました。

 

自分の不注意でしたが、今回は自分の時間が無駄になっただけだったので、不幸中の幸いでした。

 

これが、誰かが怪我をしたり損害を受けたりするようなことに繋がっていたとしたら、一大事です。

 

リスク管理が甘かったと反省しています。

 

ということで、仕事に対する向き合い方に関して、気持ちを引き締め直したのでした。

 

何年経ってもヘマをしてしまいますし、ミスはしてしまいますし… 定期的に気持ちを入れ替えないとだめですね。

 

今回は大きな事故などは発生しなくてよかったですが、これからは気をつけていきたいですが、たまにこういう反省の機会が与えられるというのも、大事な気がします。

 

ミスをきちんと受け止めて、しっかりと反省することが大事ですね。

 

みなさんは、こんなミスなどをして反省したこと、最近ありますか?

 

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

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