「特急」の訳語 Limited Express に対する苦情が出ていたので、反論してみました | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所

「特急」の訳語 Limited Express に対する苦情が出ていたので、反論してみました

外国人が語る東京の「鉄道表記」難しすぎる問題 快特?準急?特急?何が何だかわからない (msn.com)

 

 

私は

語学オタクであり

鉄分も少し入っているので

この記事の見出しをみたら

クリックせずにいられない質です

 

で、

記事を読んでみると

突っ込みどころ満載・・・

 

というか

この筆者は

本当に勉強不足だな!

と思ったので

一言申すわけです

 

ハチハチハチ

 

いろいろ

言いたい放題言ってますが

もう少し

いろいろなことを勉強したから

物事を書いてほしいです

 

こういう低質の記事は

インターネットのポータルで

最近多く見かけます

 

 

語源を

ちょっと調べれば

済む話なのです

 

特急が「Limited Express」という英語であることに

たてついていらっしゃるわけですが・・・

 

「特急(特別急行)にLimitedと最初に付けた人に文句を言いたい」

 

これは

不当な言い分なわけです

 

なぜなら

この筆者のデビット・ベネットさんは

「Limited」の意味を

分かっていらっしゃらないようだから

 

ハチハチハチ

 

「特急」の英訳が

「Limited Express」になった経緯を

ご存じでしょうか?

 

これは

和製英語でも何でもなく

実際のモデルがあるのです

 

オリエント急行など

遠距離を結ぶ

速い列車のことと

express

と呼ぶのは

わりと世界的な慣習のようです

 

単語自体の語源は

比較的わかりやすいかと思います

 

expresser, espresser

という古いフランス語が

語源のようです

 

要するに

圧力をかけて押しだす

という単語

 

同系の単語に

エスプレッソ

もありますよね

 

とにかく

普通に走る列車に対して

expresser

圧力をかけて速達なサービスをする

というのが語源です

 

これは

19世紀からあった言葉のようです

 

これに対して

米国では

1910年代に

特別料金を払って上等客の身を乗せる

Limited express

というサービスが登場します

 

これが

「特別急行」

の語源です

 

要するに

限られた人しか乗れない急行

それが

「特別急行」だったわけです

 

その言葉が

日本にも輸入されました

 

日本の鉄道史を

少しでもご存じであれば

特急が「Limited Express」だったことは

ご納得いただけますよね?

 

日本で初の「特急」と言える列車は

1912年6月

新橋駅と下関駅を結んだ「特別急行」(特急)

1・2列車です

 

これは

従来の急行を格上げし

一等車と二等車のみで構成され

しかも最後尾には展望車という

特に選ばれた人しか乗れない車両でした

 

まさに

日本の「特別急行」とは

限られた人しか乗れない列車

 

しかも

停車駅はかなり限られていました

 

そのような列車に当てられた訳語が

「Limited Express」でした

 

これのどこに文句があるのでしょうか?

 

 

まあ、

その後の日本の特急史を知らない人であれば

文句を言いたくなる気持ちも分かりますが・・・

 

宝石緑宝石緑宝石緑

 

私が子供のころ・・・

 

たかだか30年ほど前の話です

 

それでも

特急はまだ

気軽に乗れるものであはりませんでした

 

特急列車とは

基本的に遠距離を結ぶ

全車指定席の特別列車でした

 

今でいえば

「はやぶさ」や「こまち」みたいな?

 

ひと昔前の「のぞみ」のような!?

 

気軽に乗るような列車ではなかったのです

 

そんなイメージを踏襲して付けられた訳語が

Limited Express

でした

 

まさに

1910年代に

アメリカで登場した

Limited express という言葉を

うまく日本の事情に投影した訳語

というわけです

 

その後

1970年代に入ると

日本の「特別急行」は

もっと気軽に乗ってもらおう

という、国鉄のマーケティングに押され

大衆向けに色を変えていくわけです

 

L特急

という言葉も

搭乗しました

 

ご存じない方も

多いかもしれません

 

それまで

全車指定席

1日1往復の

長距離列車

 

といったイメージを払拭し

自由席を設け

いつでも乗れるように

毎時運転

など

 

L特急という愛称までつけて

敷居を低くしたのです

 

要するに

誰でも乗りやすくしたのです

 

そして

おりしも新幹線を

全国に走らせようという

方針を強めた時代・・・

 

速達性と大衆性が強調されていきます

 

そこで

Limited Express

という訳語と

相容れなくなっていくわけです

 

「特急」という言葉じたいに

「特別」な急行という意味合いよりは

「特に速い」急行という

意味合いを強くしていくわけです

 

もしかしたら

最近は

「特急」が

「特別急行」の略だと

知らない人も多いのかもしれません

 

速度の順番だと

思っている人も多いかと思います

 

上記の記事の筆者は

良い例かもしれません

 

実際に

新幹線の案内などでは

「特急」の訳語として

Super Express

としている場合もあります

 

 

スピードの観点からの

「特別急行」であれば

Limited Express

だと

ちょっと違和感があるのかもしれませんが

そもそも

英語のLimited Expressは

「乗車できる人が限定された」

とか

「停車駅が限定された」

という意味での言葉なので

それはそれで

「特急」という訳語としては

間違っていないわけです

 

1910年のアメリカで登場した

Limited express

という列車も

まさにそういうコンセプトでした

 

ただ

現代のカジュアルな

誰でも気軽に乗れて

たくさん停まる列車

という観点では

時代遅れという感じは

否めません

 

特に

日本の「新幹線」という

「超特急」との比較において

「特急」は

大衆的で

何も限定的ではないので

若い人にとってみれば

ちょっと違うのかもしれません

 

でも

ともかく

「特別急行」という概念での訳語として

Limited Express

は何もおかしいことはないわけです

 

英語にもちゃんと存在する言葉です

 

 

宝石紫宝石紫宝石紫

 

ところで

この記事の中では

「弾丸列車」という言葉にも

言及がありました

 

これについても

なんだか文句っぽことを言っています

 

確かに

「新幹線」の訳語として

Bullet trainはどうよ?

と言うのも

分からなくはありません

 

でも

ちゃんと歴史があるのです

 

この筆者は

恐らく

昔の日本に

「弾丸列車計画」というものがあったことを

ご存じないのかもしれません

 

まあ、調べればわかる話ですし

これは

新幹線と「bulltet train」という訳語の経緯を知るうえで

欠かせないストーリーではあります

 

その昔

日本にはまさに「弾丸列車計画」

というものがありました

 

東京から

下関を経て

韓国、そして中国まで

超高速列車で結ぼう

という壮大な計画です

 

昭和初期

蒸気機関車が全盛の時代です

 

その壮大な計画を実現するために

期待を込められていたのが

「弾丸列車」です

 

つまり

「新幹線」の構想となった列車です

 

弾丸列車 - Wikipedia

 

 

これがまさに

 

bullet train

 

だったわけです

 

日本の新幹線を走る

超高速列車が

海外(特にアメリカ)で

Bullet train

と訳されている由来が

ここにあるのです

 

「新幹線」の概念は

まさにこのbullet trainを踏襲したものなのです

 

当時のbullet train計画を実現したものが

「新幹線ひかり号」

だったわけです

 

こんな経緯を探ると

今の訳語(英語)も

すべて納得いくわけです

 

しかも

日本の鉄道と英語(英訳)にも

かなり奥の深い歴史がある

という

興味深い側面にも

触れることができます

 

アメリカ人も

特に一昔前の人は

新幹線のことを

普通にbullet trainと

呼んでいました

 

特に

戦前をご存じの方や

弾丸列車計画の歴史を

よく知っているアメリカ人などは特に

そちらのほうが馴染みがあるでしょう

 

すべては歴史があってのことで

別に「とんでも訳語」というわでは

ないのです

 

是非、みなさんにも

すべての訳語には

ちゃんとした由来と背景があるのだ

ということを

知っていただきたいと思います

 

おかしな和製英語を作ったわけではないのです

 

ちゃんと

アメリカや他の英語圏でも使われていた

根拠のある英語が使われている

ということです

 

上記の記事の筆者に

ひとつだけ苦言を言わせていただければ

こういう歴史があっての言葉だということを

日本のみなさんに伝えてほしかった・・・

 

そこが特に残念な記事だった

ということです

 

引用元:

【方向幕】183系「思い出の特急とき号」 - さいたま運転所の鉄道ブログ (fc2.com)

 

 

 

戦後70年以上が経ち

日本では

「本当の」英語が

普通に出回るようになりました

 

外国人も

普通に街にいます

 

日本人の中にも

外国由来の方が

たくさんいます

 

そんなのが

当たり前の現代です

 

しかし

日本はまだまだ

「アメリカでは」

とか

「ネイティブは〇〇と言わない」

とか

そういう言葉に弱い

 

外国人っぽい人が言うことを

「そうだそうだ!」

もっともらしく聞き入れてしまう

そんなところが

まだまだあると思います

 

その日本人のメンタリティは

戦後ずっと変わっていない・・・

 

残念ながら・・・

 

今回の記事は

(語源について)

とても勉強不足の記事だと思います

 

それが

普通にメディアに載ってしまう・・・

 

メディアのレベルも低いわけですが

書く人のレベルも低く

 

でも一番は

読者のレベルが低い

ということになります

 

メディアリテラシー

という言葉もありますが

受けてが

もっと賢くならないと

ただ

見せかけだけの「権威」を持つ人の言うことを

鵜呑みにして

メディアに振り回されるだけに

なってしまいます

 

もっともっと

深く調べて

書いたり

読んだりできるようになっていかなければならないなぁと

思うわけです

 

 

今日も最後までお読みいただき

ありがとうございました

 

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