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あの共同開発のビールのスペルミスは、実はあながち間違いでもなかった件【語源好きな人限定】
「LAGAR」ではなく「LAGER」 ファミマ共同開発のビール「サッポロ 開拓使麦酒仕立て」スペルミスで発売中止に - ねとらぼ (itmedia.co.jp)
ラベルのスペルミス・・・
印刷物などのスペルミス・・・
よく見かけますよね
これ
ネイティブが見たら
あるいは
知識のある人が見たら
一発で違和感を感じるんですけどね・・・
まあ
この1つ、2つの単語のためだけに
チェックのお金をかけるわけにも
いかないのでしょうが・・・
ただ、私は
こういうチェックは
お金をかけるべき場面もあると
考えています
やはり
信用問題もありますし
場合によっては
一生の傷を負うことだって
当事務所では
文章の校正も含め
そういうチェックの仕事なども
行っています
英語(外国語)に慣れていない人が
一生懸命に慎重にやるよりも
慣れている人が
パパっと見て
済ませてしまった方が
よっぽどコストパフォーマンスが
良いと思います
ただ
翻訳者がみな
こういう仕事をするわけではないと
思いますが
それはともかくとして
私が担当した
けっこう大きな実績としては・・・
例えば
日本郵政が展開する商業施設
KITTE
KITTE丸の内 | JR・丸ノ内線 東京駅に直結したショッピングセンター「キッテ」 (jp-kitte.jp)
これは確か
2013年頃にオープンしたと思うのですが
この商業施設の名称を決定するとき
この「KITTE」という名称が
他の言語や文化で
悪い意味にならないか
おかしいニュアンスを持たないか
広くチェックしたと思います
実は
その業務の一端を
当事務所も担いました
私は確か
スペイン語とイタリア語を担当し
KITTEでも大丈夫か
スペイン語圏、イタリア語圏を
調査しました
ポルトガル語もやったっけかな・・・
(それはKITTEじゃなかったかもしれない)
でも
何かの仕事で
ブラジルなどの各方面に
電話調査をしたことも
ありました
ともかく
後になって
「あれは〇〇語でKITTEはヤバい意味があるよ」
なんてことになったら
大変ですもんね
結果は当事務所に直接は
伝えられなかったのですが
結局KITTEに決まったので
そのまま採用されたということでしょう
ともかく
程度の差はあれ
重要な名称や印刷物の場合は
かなり入念なチェックが入るのも
事実です
ただし
今回のサッポロの商品は
一時的な商品パッケージの印刷だし
「まあいいや」
という感じだったのでしょう
確かに
今回製造される本数も
限られれいるわけですし
それほど大きな問題ではないかもしれません
ただ
それも、捉え方次第
ということでしょう
この印刷のチェックにお金をかけるか
かけないか・・・
まあ、チェックでしたら
微々たる金額でしょうし・・・
その辺は
気合いの入れ方によって
変わってくるのでしょう
それはともかく
今回ミスのあった
「LAGER」という単語
(これが正しいスペルです)
どういう意味かご存じですか?
この語源は
古いドイツ語だそうで
leger
これは
11世紀~14世紀ころのドイツ語で
中高ドイツ語と呼ばれる言語
legerは
「寝かせる場所」
「貯蔵」
といった意味
legerは
中東部の方言では
lagerと発音されたようで
どうやら
これが英語に入ってきた説
が
有力のようです
中東部で
legerがlagerと発音された理由としては
lage(場所)という単語に
引きずられたのではないか
とのことです
(参考)
この単語が
アメリカに入ってきたのは
19世紀中ごろとのことで
lager beer を省略して
lager と呼ばれていたそうです
このlagerとは
飲み頃になるまで数カ月寝かせておいたビール
という定義づけだったようです
その貯蔵庫も「Lager」と呼ばれていたのでしょうかね
lager | Origin and meaning of lager by Online Etymology Dictionary (etymonline.com)
ところが
この
Lager
という単語の語源を辿っていると
面白いことを発見したのです
英語のLagerの語源は
ドイツ語のleger
という話はすでにしたとおりです
で
その
leger
の語源を辿ってみると・・・
ゲルマン祖語と呼ばれる
要するに
英語、ドイツ語、オランダ語、スウェーデン語などに
分かれる前の言葉が
その大元になります
それが
legrą
[leɣ.rɑ̃]
恐らく
「レグラン」
(最後は鼻母音)
に近い発音なのだと思いますが・・・
(自信がないので、発音記号に詳しい方、間違っていたらご指摘いただけると嬉しいです)
「横にする」
といった意味の単語だそうです
legerの語源っぽいですよね
このゲルマン祖語が
英語やドイツ語、オランダ語、スウェーデン語などに
分かれていくわけですが・・・
その一部がこちらです
敢えて画像にしましたが
出典はこちらです
Reconstruction:Proto-Germanic/legrą - Wiktionary
すると
見えますか?
「legar」
という単語が
そうです
Legar
です
lagar
でこそ
ありませんが
でも
語尾が
-er
ではなく
-ar
になっています
Old Saxon(古サクソン語)
と
High Old German(高古ドイツ語)
にあります
つまり
これらの言語では
legrą
が
legarに変遷していった
ということです
だから
もしかしたら
場所によっては
Lagar
とスペルされていたも
おかしくなかったのかもしれません
まあ
別にサッポロさんを弁護するとか
そういう訳ではありませんが
こういう間違いに
あまり目くじらを立てなくてもいいのでは・・・
と、
こういうことを見ると
思わなくもないわけです
所詮、
言語なんて
エラーの連続で発展してきているわけですから
ま
今回のスペルミスは
せっかくですから
ビールに流して
Prost!
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