Japan の語源はマルコ・ポーロの「ジパング」ではない説 | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所

Japan の語源はマルコ・ポーロの「ジパング」ではない説

昨日の記事で

以前、古いポルトガル語の文献の

文字起こしをしたことがある

という話をしました

 

長崎のスペルは Nangasaque だった時代がありました

 

日本の英語表記である

JAPAN

マルコ・ポーロの

『東方見聞録』の中で

「黄金の国・ジパング」

として紹介されたのが

語源とされています

 

その「ジパング」の語源ですが

「日本国」の(当時の)中国語読み

だとばかり思っていたのですが

実は様々な説があるのだということを

知りました

 

Wikipedia の「ジャパン」というページが

とりあえずの参考になると

思います

 

ジャパン

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%B3

 

 

それから

なかなか参考になったのが

こちら

 

ジパングという幻の国

 

 

「ジパング」の異説としては

そもそも「ジパング」という言葉が

日本を指す言葉ではなかったというものです

 

つまり

中国の周辺

特に東南アジア方面の「諸蕃国」

という言葉が

「ツィァパングォ」

と発音され

これが「ジパング」の語源だ

という可能性です

 

確かに

CIPANGU

とか

Zipangu

などと

表記されている資料も

多くあります

 

これらは

「ツィァパングォ」

を表記しているものと

十分に考えられます

 

そうすると

「ジパング」は

アジア諸国

という意味であり

我が国のことだけを指すわけではない

ということになります

 

となると

ジャパンという言葉の用法が

根底から覆ってしまうという

大変な事態になります

 

もしかしたら

研究が進み

いずれ

日本が「ジャパン」と呼ばれない日が

来るかもしれませんよ

 

Photo by Capturing the human heart. on Unsplash

 

 

「ジャパン」の語源を調べていて

面白いと思ったのが

「ワークワーク」という国の存在

 

アラビア語: الواق واق‎

英語: al-Wāqwāq

 

これは

アラビア語とペルシャ語の地理書に出てくる

中国の東方にある

金山を有する国だそうで

これが

日本の島を指しているのではないか

とのことです

 

「ワークワーク」なんて

いい響きですが

その語源は

「倭国」

ではないかとの説もあり

面白いものです

 

ワークワークが登場する

最古の文献は9世紀頃のものだそうで

そうすると

マルコ・ポーロの時代よりも

400年ほども先になるわけです

 

当時の日本は

平安時代ですよ

 

ハチハチハチ

 

以前

私が文字起こしをした

ポルトガル語の文献は

確か16世紀くらいの書籍

 

天皇のことは micado

京都のことは miyaco

(miacoだったかな・・・)

と書かれていて

すごく時代を感じました

 

信長の名前も登場していましたが

スペルが

Nobunanga

でしたね

 

昨日お話した

Nangasaque

もそうですが

「ガ」の音が

いわゆる「鼻濁音」として

表記されていたのが

印象的でした

 

この鼻濁音が

若い人の間では

なくなりつつある

という話を

自分も子供のころに

学校の先生に

指摘されました

 

特に

格助詞の「が」は

「んが」と発音するのですが

普通の「が」と発音される傾向が

強まっているようです

 

最近はどうなんでしょうか・・・

 

ともかく

15世紀の頃に日本を訪れた

ポルトガル人には

この鼻濁音がきちんと聞こえていて

スペルにも反映されていたのが

面白いところです

 

その書籍は

『Historia de Iapam』という題名で

イエズス会宣教師のルイス・フロイスが

書いたものでした

 

同じような

古い文献の文字起こしは

何度かやったことがありますが

当時の様子が分かるという点でも

とても興味深いのですが

やはり

私としては

言語学的な観点から

興味深いと思ってしまいます

 

単語は

だいたい同じなのですが

スペルがちょっと違ったり・・・

 

特に

ſ
という文字が多く使われていたのは
最初は戸惑いました

これは
長いs と言われる文字で
要するに ss です

最初、
この文字が f  だと思っていて

おかしいなぁと思っていたのですが

いろいろ調べると

昔は ss を1文字の 

ſ
で表していたということを知り
驚いたものです

書籍のタイトルにもある
Iapam

日本(ジャパン)
なわけですが
これも
当時は
I と J の区別が
あまりなかったため
このように書かれていたのだそうです

アルファベットの表記法には
時代背景も絡んでいます

日本という国名は
中世には
Iapam
と表記(発音)されていたとすれば
例えば地域によっては
「ジャパン」ではなく
「ヤパーン」と言われているのが
納得できます

また
音の踏襲のされ方を見ると
どのように伝わっていったのかという
変遷の歴史も
ある程度辿ることができ
とても面白いです

昨日の話にも出てきた
ガリシア語では
「日本」という言葉こそ
今では
Xapón(ハポン)と
発音されています

でも
「横浜」のスペルを見ると
昔の名残が見えてくるわけです

つまり
Iocoama


という音がないので
Io
と表記されているわけですが
中世の当時も
このようなスペルの工夫が
なされていたわけです

とすると
ガリシア語でも
昔は
Iapam
などと
呼ばれていたのかな
と想像できます

ヨーロッパの地図表記の変遷を見ても
日本という国の名称が
どのように伝わってきたかが
少し分かるようです

IAPAM

IAPAO

JAPAM

この地図の表記については
こちらにまとめてありました

日本 - Wikizero

 


もっと文献が見つかれば
JAPANの語源についても
さらに絞りこむことができるかもしれません

それでも
長い歴史の中で
いろいろな人が日本について書いているわけで
複数の語源があるというのも
また一理あるのかもしれません

言語学的に歴史を辿る作業も
マニアにとっては
また楽しいものであったりするのです

かたつむりかたつむりかたつむり

ところで
マルコ・ポーロの『東方見聞録』ですが
原題は
『Marco Polo da Veniesia de le meravegliose cose del Mondo』

実は
東方が強調されている著書ではないのです

確かに
英語の題名も
「The Travels of Marco Polo」
です

どうやら
東方旅行が強調され
日本に注目された本だという認識が
日本では多いようですが
それとはちょっと違うようです

実は
日本で最初に出版された
明治45年の版は
『まるこぽろ旅行記』
という訳だったようです

ところが
大正3年に刊行された
アカギ叢書版で
『東方見聞録』とされたようです

何かしらの意図が
あったのでしょうか・・・

さらに
この原書は
マルコ・ポーロが書いたもの
と思っている人も多いかと思いますが
実は
ちょっと違うのです

ヴェネツィア共和国のマルコ・ポーロが
口述したものを
ピサ出身の小説家ルスティケロが
著述したものなのです

書かれた言語は
中世のイタリア北部で使われていた
フランコ=イタリアン
という言葉なのだそうですが
これを原語で読んでみれば
アジアの歴史に関する新たな発見が
もしかしたらあると思うと
ちょっとワクワクするものです

機会があれば
読んでみたいです。
 

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