イギリスは「見られる」腕時計、フランスは「見せる」腕時計
先日、
「clock」という単語の語源を
解説しました
【語源で解決!】いったいどこまでがClock?
その中で
clock は「ボンボン時計」
という結論に達し
それ以外の時計
つまり
ボンボン言わない時計が
timepiece
ということになります
このtimepieceの分類には
大きなものとして
「懐中時計」と「腕時計」
があります
で、
先日のclockの話の中でお約束したとおり
今日は「腕時計」の方の語源に関して
面白いエピソードをご紹介します
蛇足ですが・・・
砂時計 hourglass も
timepieceの仲間だそうです
砂時計は時間を測る器具ですが
経過した時間を測定するもので
現在の時刻を示すものではありません
そういう意味では
懐中時計や腕時計とは
違う性質の時計ですね
ストップウォッチの部類に
入るでしょうか
腕時計
英語では
watch
です
この語源は
考えたことはありますか?
時間を見るからwatch?
基本的にそういうニュアンスで
間違いなさそうです
時計を指す「watch」という言葉が出てきたのは
1580年代だそうです
当時
船員が甲板に出て
夜の見張りをする時間区分が
watch
と呼ばれました
もともとは
軍隊で使われていた
「見張り、監視」という用語のようです
watch - Online Etymology Discionary
面白いのは
ここからです
ボンボン時計ではない
腕時計を指す用語を持っている言語は
あまり多くないようで
スペイン語では
reloj de pulsera
ポルトガル語では
relógio de pulso
カタルーニャ語では
rellotge de polsera
イタリア語では
orologio da polso
など
「手首に着ける時計」
という言い方です
英語でも
「見張り」などという意味と
誤解されたくないときは
wristwatch
と
敢えて「手首」という単語を
つけますよね
ここまで来て
あれ、
フランス語がないじゃないか?
と思った人も
ひとりかふたりは
いらっしゃるかもしれません
ラテン系の言語を
ここまで集めてきて
肝心のフランス語がないではないか!
と
まさに
そのフランス語が今日の本題なのです
フランス語で「腕時計」に当たる時計は
montre
と言います
ちなみに
ボンボン時計については
こちらも参考にしてください
【語源で解決!】いったいどこまでがClock?
話を戻すと
フランス語で腕時計は
montre
とか
montre-bracelet
と言います
bracelet
は
「ブレスレット」
という言葉が
日本語にも入っていますが
腕輪のことです
腕時計のバンドのことを
フランス語でも
bracelet
と言います
発音は
「ブラスレ」
腕時計は
「モントル ブラスレ」
この
montre
という単語
実は意味が
「見せる」
という意味なのです
何か面白くないですか?
英語は
「見る」
が語源
フランス語は
「見せる」
が語源・・・
国民性の表れ??
この視点の違いに
何か意味があるのではないか・・・
と、私は思ってしまうわけです
それで
フランス語の方の語源も
細かく調べたという次第です
MONTRE : Etymologie de MONTRE - Cnrtl
フランス語に
montre が初登場するのは
どうやら15世紀の文献のようです
monstre d'oreloge
つまり
cadran d'horloge
時計のダイアル
時計愛好家であれば
「ダイアル」という言葉は
よくご存じかと思いますが
「文字盤」のことです
フランス語では
cadran
と言いますが
当時はその部位のことを
monstre
と呼んだようです
monstrer
「見せる」「表示する」
という動詞の名詞形です
16世紀後半頃になると
monstre
は
montre
と、sが抜けていったようです
montre à pendule
振り子時計
も
montre
現在では
「振り子時計」は
une pendule
と言います
ちなみにこれは
女性名詞
男性名詞
un pendule
と言うと
「振り子」
そのものの意味になります
montre-bracelet
(腕時計)
という言葉が出てきたのは
どうやら20世紀になってからのようです
最初の腕時計は
「1790年 ジュネーブの時計商ジャケ・ドロー&ルショーのカタログに腕時計が記載される。」
(Wikipediaより引用)
腕時計 - Wikipedia
ただ
このサイトによると
一般向けの腕時計は
20世紀になってから
ということのようです
ともかく
フランス語は
時計の文字盤という言葉が
腕時計の呼称として
使われるようになった
ということですね
その語源は
「表示」という意味ということで
英語のwatchの語源とは
ちょっと性質が異なるようです
ちなみに
「文字盤」は
スペイン語では
esfera
これは
sphere
つまり「球」の意味
イタリア語では
quadrante
(四分円)
ポルトガル語では
mostrador
(表示盤)
などなど
文字盤の言葉については
各国語でなんだか統一感がない
といったふうです
話を戻し
英語のwatchと
フランス語のmontreについて
ですが
私には当初
勝手な仮説がありました
それは
英語の場合
規律などを重んじる
英国人の性格を反映し
watch
(監視)
という言葉が使われている
フランス語の場合
自己主張(誇示)が好きな
フランス人の性格を反映し
montre
(見せびらかす)
という言葉が使われている・・・
まあ
当たらずとも遠からず
といったところかもしれませんが
語源を探ると
英国は
まあまあ
そういう考え方もできますが
フランス語については
見せるというよりも
「表示する」
という意味のようで
「見せびらかす」
とまでは
言えないようではあります
ただ
英語のように
watch
という能動的な行為が
反映されている言葉とは
対照的に
フランス語では
どちらかというと
「監視」というよりは
飾りとして身につけるものとして
使われていた感が
否めないのかなぁと
思います
こういう風に
国民性を想像しながら
言葉を学ぶのも
なかなか楽しいものですよ
でも
ここまでくると
本当に語学オタクとしか
言いようがないかも
しれませんねwww
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