「収益」と「利益」の違いを確認してみました。【結論】とても明快でした。 | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所

「収益」と「利益」の違いを確認してみました。【結論】とても明快でした。

会計関連の翻訳をしていると

いつもちょっと困ってしまうのが

 

「利益」「収益」「収入」「所得」などの

利益や所得に関する言葉が多様であること

 

そして

 

「純利益」や「粗利益」などの

利益に関する定義が

国によって微妙に違うことです

 

「純利益」の定義が

違うなんてことがあるの!?

 

どうして??

 

と思われることでしょう

 

でもこれは

税金に「政治的」な要素が入っているため

ある意味で当然のことなのです

 

詳しくは

各国の税制を勉強していただかなければ

ならないわけですが

ザックリ言えば

経費や費用として認められる項目が

国によってまちまちだからです

 

そこに「政治的」要素が

あるのです

 

要するに

政治家の力によって

何が経費として認められ

何が認められないかに

違いが出てきてしまうのです

 

あるいは

何かが

税額控除や

所得控除の対象になるかならないか

 

これも政治的要素が入ります

 

もちろん

社会福祉的な観点から

対象になるならないが

決まる場合もありますが

 

ともかく

そんなことからも

「所得」や「純利益」

として捉えられるものの対象が

国によって

変わってきてしまうのです

 

ちなみに

純利益とは

売上高から人件費などの経費を差し引き

さらに

営業外収益を足し引きしたあとに

残ったお金(利益)のことを指します

 

会計では

「当期純利益」と呼ばれるものです

 

 

経費として認められるものと

認められないものが違ったり

その限度額が違ったりするので

国が違えば

「純利益」の範囲も変わってしまうことに

なります

 

ですから

会計制度や税制が違うと

「当期純利益」という言葉が

同じものを指さないことになり

国によって

金額が変わってきてしまう

とういことになります

 

さらに

差引するものが違うので

用語が100%同じ対応にならない

ということが起こります

 

会計の翻訳をしている人であれば

必ず見ことがある会計用語

EBITやEBIDTA

などは

その典型です

 

ざっくり言うと

EBIT は

Earnings before interest and taxes

つまり

税引前利益に支払利息と税金の差し戻したもの

 

これは

営業利益とほぼ一緒ですが

微妙に違います

 

さらに

EBITDA とは

Earnings before interest, taxes, depreciation and amortization

つまり

税引前利益に支払利息、税金、減価償却費の差し戻したもの

 

この指標は

最近では日本企業でも

特にグローバル企業で

財務報告書などに記載されることが

多くなった印象です

 

特に

M&Aの参考指標として

よく引用されるものです

 

そのため

日本語で訳語が作られる代わりに

EBTDAとそのまま使われるのが

定訳となっていると思います

 

まだ定訳と言いきっては

ダメですかね…

 

Photo by Scott Graham on Unsplash

 

 

訳語を日本語で作るのか

カタカナ語にするのか

あるいは

直訳するのか

その答えが

必ずしも確立されていない単語が

あります

 

グローバル化が進んでいる今は

特にそうです

 

M&Aや取引

訴訟などで

海外とのやりとりが増える中で

似たような概念を扱うのだけれど

国によって内容が微妙に違う言葉を

同じ訳語で済ませてしまうのは

ちょっと乱暴な話です

 

特に実務においては

誤解や齟齬の原因になるので

このような安易な翻訳は

とても危険です

 

正解とか誤答とかいうレベルの話ではなく

実際の罰則や賠償という話です

 

ですから

強引に日本語の訳語を当てはめたり

辞書の単語を杓子定規に当てはめることは

翻訳の現場ではとてもできません

 

その訳語を使っても

問題がないのか

定義から検討する必要があることが

多くあります

 

「純利益」や「EIBDTA」

といった言葉が

良い例です

 

つまり

こういう単語の翻訳をする場合

その専門分野の知識が

不可欠だということです

 

少なくとも

その言葉を訳す場面に遭遇したら

その分野の知識がない場合は

一から勉強する覚悟を責任を負う

ということになります

 

それが

翻訳の仕事なのです。

 

 

ハチハチハチ

 

ようやくタイトルで宣言をした

「収益」と「利益」

の違いの話ですが・・・

 

校正の仕事をしていると

これらの2つの用語を

乱暴にも互換性のある言葉のように

扱う翻訳者が

多くいるのです

 

この2つは明らかに違います

 

しゅう・えき【収益】

②企業会計上、商品・製品・用益などの提供によって得られた対価の価値。売上高・受取手数料・受取利息など。収入(現金の受け入れ)を基礎とするが、必ずしも収入と一致しない。

 

り・えき【利益】

①利すること。利得。得分。もうけ。とく。

 

広辞苑第五版より)

 

この定義からも

少し見えてくると思いますが

この2つの言葉は

使い分けるべき

異なる言葉です

 

「収入」revenue

「売上」Salesとも

よく混同される言葉ですが

 

「収益」とは

売上だけではなく

受取利息なども含めた

「益」(プラス)となる

すべての収入のことです

 

だから

「利益」とは

まったく異なる概念です

 

「利益」は

要するに儲けの部分です

 

だから

「収益」から

いろいろな経費や費用、支払いを引いた

結果のことを指します

 

 

※本当に大雑把な話なので

正確にはきちんとした参考書などで

勉強してみてくださいね

 

 

「収益」と「利益」は

「収益力を高める」一貫で

経費削減などが言われるので

ごっちゃになることが

よくあるのかもしれません

 

「収益力」を高めたうえで

経費削減に取り組むのが

「利益」向上の正しい道筋

ということになります

 

言葉を正しく使うために

たまには専門知識の基本から

見直すということも

大事ですね

 

ちなみに

「利益」と「収益」の違いについて

とても分かりやすく説明していた記事を

見つけました

 

今回はこれも参考にしました

 

紛らわしい会計英語を整理しよう

 

「利益」と「収益」

の違いの他に

 

Earnings

Profit 

Return

Income

Margin

 

の違いのグラフは

とても参考になりました

 

さらに

Cost と Expenses と Expenditure の違い

Asset と Equity の違い

Product と Merchandise の違いも

参考になりました

 

英語で考えると

概念の違いがより分かりやすくなる

気がしました

 

みなさんもぜひ

参考にしてみてください。


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