山の日なので monte が男性名詞で montaña が女性名詞になった理由を調べてみました
本日8月10日は「山の日」
今年はコロナ禍もあり
なかなか気安く「山登り」とも言えませんが
それでも
霊山として有名な
出羽三山の
羽黒山、湯殿山、月山は
大勢の登山客で
にぎわったそうです
ちなみに
出羽三山のある山形県は
私のふるさとです
この「山の日」は
2002年の国際山岳年に
制定の構想が本格化したのだそうです
もともとは
山の日を制定する根拠も
なにもなかったものが
1995年に「海の日」が制定されたことで
じゃあ
山の日も制定しようじゃないか!
と
民間から運動が
起こったのだそうです
ということで
特に何を記念する日でもなく
日本人なら山に感謝しよう
といった趣旨で
出来た祝日のようです
だから
いつでもよかったわけですが
当時、祝日のなかった月にしようということ
お盆で連続して休み安くしようという趣旨から
8月が選ばれたのだそうです
悪くないことだと思います
今日も
暑かったですが
今のところは
大きな事故のニュースも聞こえて来ず
有意義な山の日に
なったようですよ
Photo by Sahil Mhapsekar on Unsplash
ところで
「山」といえば
ずっと気になっていたことが
あります
スペイン語の話ですが・・・
スペイン語の「山」という単語
Montaña
(モンターニャ)
というのですが
これは女性名詞です
ここで
知らない人のために
簡単に解説すると
スペイン語の名詞には
男性と女性の区別があり
非生物であっても
必ずどちらかに
分類されるのです
性別がある生物は
それぞれそのままです
名詞の性別によって
それに伴う冠詞や形容詞の形も
変わります
例えば
1つの山
というとき
una montaña
となります
これは女性名詞の証です
冠詞がunaという形になります
ここで
Montañaが女性なのはなぜ?
という問題はさておき・・・
「山」を指す単語には
もう1つあるのです
それが
Monte
(モンテ)
実は、
こちらは
男性名詞になるのです
男性名詞につく冠詞は
un です
この単語を使って
1つの山
というとき
un monte
となるのです
どちらも「山」なのに
男性と女性で
違ってしまう・・・
スペイン人は
どういう観点で
montaña を女性と関連付け
monte を男性と関連づけたのか・・・
ふと
興味が沸いてしまったのです
語学オタクは
こんなことが
気になってしまうものなのです
困ったものですwww
でも
せっかく山の日なので
調べてみました
すると
面白いことが
分かったのです!
まず
手元にある
西和中辞典【第2版】
で
調べてみました
違いの説明の部分だけ
抜粋します
Montaña
海に対する山
Monte
主に地理的な意味での山
・・・
いまいちピンときません
困ったときには
スペイン語の権威の最高峰
尋ねます
すると
驚くべき事実が!
Montaña
1. f. Gran elevación natural del terreno.
Monte
1. m. Gran elevación natural del terreno.
どちらも
1つ目の定義が
性別以外はまったく同じ!
つまり
「自然の状態で大幅に高くなっている地形」
定義としては
同じなので
では
2つの単語の間で
なぜ性別が異なるのか
気になります
ちなみに
Montañaの2番目の定義に
2. f. Territorio cubierto y erizado de montes.
とあり
つまり
「monteが立ち並んでいる領域」
どちらも「山」だけれど
イメージの違いを厳密に言うと
monteが密集しているような地形のことを
Montaña と呼ぶということなのかな
と想像できます
だた
1つ目の定義がまったく同じなので
同義であることは
確かですが・・・
でも
性別が異なるのには
まだ納得いきません
そこで
語源を調べてみました
montaña - Diccionario Etimológico Castellano en Línea
この単語の語源は
ラテン語の
montanea
これは
「山がちな」という形容詞
montaneus
の女性形とのこと
この形容詞の元となる
「山」という意味の名詞は
mons
男性名詞
このラテン語の名詞の
形容詞の女性形
montanea
が Montañaの語源
となります
そういうことで
Montaña は女性形になっている
と言えそうです
一方で・・・
monte - Diccionario Etimológico Castellano en Línea
monte の語源を調べると・・・
Monte procede del latín mons y su acusativo montem, una masa enorme o mole, también peñasco, roca.
(抜粋)
つまり
monteの語源は
ラテン語のmonsおよびその属格montemで
巨大な塊、巨体
岩壁、岩などの意味
ということで
元をたどれば
こちらも
ラテン語の
mons(男性名詞)
となるのです
その対格である
montem(山を)
を直接の語源として
monte
となった
とのことらしいです
対格というのは
名詞を「目的語」にする変化です
つまり
日本語で言えば
「山」という名詞を
「山を」という目的語にするための
変化です
なぜ
スペイン語の山になる過程で
monte という対格から変化したのか
そこは
いまいちはっきりしません・・・
ともかく
mons
という男性名詞が元になっているので
スペイン語のel monteも
男性名詞の流れにあるのです
で、
Montaña の方は
この形になる過程で
語源は同じmonsなのに
なぜ
montanea という
形容詞の女性形から派生したのか
という疑問が残ります
語源事典によると
10世紀の
ソクシヤンジュ(フランス)の記録文書の中に
montana
という表記が残っていて
それが
見つかっている最初の表記のようです
実際の文書を見ると
すでに
in montana
となっていて
おそらく
「山の中で」
という意味だと思うのですが
女性名詞である理由までは
ちょっと分かりません
例えば
そもそも
in area montana
(山がちな地域)
という表現だったものが
areaが省略されて
in montana
となったとか・・・
ラテン語の知識があれば
分かるのかもしれません
でも
今の私には
ラテン語の知識がなさすぎて
解説できません
それはさておいても
MontañaとMonteの女性・男性の違いを
このように語源を辿ってみたときに
分かることもあり
とても面白いです
繰り返しになりますが
こんなことを調べても
スペイン語がマスターできる訳ではありませんので
なんの得にもなりません
マニアの娯楽ですwww
ちなみに
意味の違いは
先ほども迫ったように
どうやら
Monteの集合体がMontaña
ということが
言えそうです
それは
Wikipediaの monte の項目からも
はっきりしてきます
Monte (geomorfología) - Wikipedia
La prominencia de un monte oscila entre los 200 y 700 metros.
つまり
「monteのプロミネンス(地形突出度)は200~700メートル」
プロミネンスの概念を紐解くと
分かりやすいかもしれません
Wikipediaの「プロミネンス」の解説を見ると
Cmglee - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=46385403による
プロミネンスとは
この隆起の高低差のこと
なので
このプロミネンスの
ひとつひとつが
monte
ということに
なりそうです
すると
Montañaの2番目の定義
「Territorio cubierto y erizado de montes.」
との整合性が
とれそうです
つまり
Monteの集合体がMontaña
です
以上は
すべて現代スペイン語の
「山」という単語の語源と
男女の性の違いについての
話でした
細かい話では
このような違いがあり
使い分けが必要となるわけですが
それでも
現実には
そうもいかないというのが
語学アルアルかもしれません
実際には
Montaña であるべき山が
Monte と呼ばれていたり
Monteであるべき場所が
Montaña と称されたりします
要するに
実生活では
どちらもごっちゃになることが
多いということでしょう
ただ
私の知る限りでは
実際に
「今日、山登りに行きます」
みたいなとき
Voy a subir la montaña hoy.
と言いますが
Voy a subir el monte hoy.
とは
言わない気がします
現地の方
詳しい方
ネイティブの方
どうでしょうか・・・
これは
山登りをするとき
山系全体としての
montañaに登ることはあっても
1つの山(ピーク)としての
monte だけに登ることはあり得ないから
とも考えられます
でも
現実には
そのように厳密に意識して
会話している人はいないかと思います
では
MontañaといっておけばOKというと
そうでもないところがあります
Monteしか使われない場面が
あるのです
スペイン語を学んだことがある人であれば
一度は「富士山」という単語を
スペイン語で耳にしたことが
あると思います
そうです
el monte Fuji
です
モンテ フヒ
スペイン語では
Fujiを「フヒ」と発音します
面白いですよね
発音はともかく・・・
個別の山の固有名詞は
el monte ~
と呼ばれることが
多いです
世界の著名な山は
ほとんどel monte ~
ではないでしょうか・・・
el monte Fuji
el monte Everest
el monte Etna
el monte Kilimanjaro
el monte Olimpo
このような固有名詞で
la montañaと呼ばれる例を
知りません
もしかしたら
las montañas de~
みたいに
「~山系」のような名称は
あるかもしれません
とにかく
日常生活で
ネイティブがどのように話しているかは
慣れで対処するしかない
という
なんとも語学学習の大変な現実を
ここで突きつけられるわけです
余談ですが
世界的に有名な
フランスとイタリアの国境にある山
le Mont Blanc
は
「白い山」
という意味です
(フランス語)
あの美味しいデザートの話では
ありません
Suguri F, CC 表示-継承 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=699451による
スペイン語の el monte と同様に
フランス語でも
le mont は男性名詞
montañaに相当するフランス語
montagne
は女性名詞です
同じ経緯で
それぞれが
男性名詞と女性名詞なのか
こちらのフランス語の語源をたどる気力は
もう、今日の私には残っておりません
悪しからず
その代わり
と言ってはなんですが・・・
今日の話のように
英語にも
mountain と Mt. という2種類の「山」があることを
ご存じの方もいらっしゃるでしょう
富士山をMt. FujiというときのMt.
の「マウント」
この Mt. は
実は mountain の省略ではない
という話を
次回させていただきますので
お楽しみに。
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