西ヨーロッパにある小さな国は「ルクセンブルグ」か「ルクセンブルク」か?
私は
他の翻訳者が翻訳した文章を
プルーフリードしたり
校正したり
修正したり
リライトしたりする
仕事もしています
その仕事の一環として
他の翻訳者の文章を読んでいて
思いの外に頻繁に遭遇するのが
Luxembourg
の日本語の表記の "揺れ"
ご存じの方も多いと思いますが
西ヨーロッパの国の名前です
みなさんは
この国の表記を正確にご存じですか?
タイトルですでにネタバレしていますが・・・
あまりにも簡単すぎて
考えてみたことすらない人も
多いかもしれません
正解は
「ルクセンブルク」
まだ
なんのことを言っているか
わからない人もいるかもしれません
語尾です
「ク」か「グ」かの違いです
とても微妙な違いですし
「あれ?『ルクセンブルグ』って発音するよ?」
って思う人もいるかもしれません
おそらくこの感覚は
英語の発音から
来ているのかもしれません
(正確には、実際の英語の発音ではなく
自分が勉強した英語の発音)
Photo by Rowan Heuvel on Unsplash
日本の外務省は
国名の表記について
一定の方針を定めています
私たちは
特に翻訳者は
国名を表記するときに
こういうルールに従う必要があると思います
問題は
どのルールに従うかです
最も大事なのは
1つの文書の中で
統一されていることです
そういう意味では
自分独自のルールに従って
統一されているだけでも
OKだと言えます
が、
しかし
私たち翻訳者は
より多くの人に読んでもらう
文章を書いているのですから
より多くの人に受け入れられる
表記で統一したほうが
より適切だと言われています
つまり
自分だけのルールでは
不十分だということです
では
どのルールに従うのか?
翻訳者の場合
「クライアントの指定するルールに従う」
というのが正解です
しかし
クライアントがルールを指定しないことが
大半です
特に国名表記について
いちいちルールを指定してくれるクライアントは
ほぼ皆無です
そういうときの
私たち翻訳者が念頭に置くべき基準は
「権威」「authority」
というものです
つまり、
一般的に「権威」というものが備わっているとされる
機関(institution)や人の言うことに従う
ということです
これも
相対的な話で
微妙といえば微妙ですが・・・
例えば
「私には権威がある」
と、私(丸山)が主張すれば
丸山ルールを通せばいい話でしょう
でも
一般的には
それは認められません
大半の人がそれに同意しないからです
問題は
大半の人に受けいられれるかどうか、
なので
結果はおのずと見えてしまいます
話を戻すと
国名表記に関して
翻訳者が従うべき「権威」とは
ひとつには
日本の場合
「外務省」が挙げられると
思います
日本政府は
国名の表記について一定の指針を示しています
日本国内で活動をしている人の大半にとって
「権威」と言えば「日本政府」
としても
ほとんど問題ないと思います
反対派は、
「大半」と言えないでしょう
もちろん
同レベルの「権威」は
いくつかあると思いますし
繰り返しになりますが
クライアントが指定する表記法があれば
それに従えばいいのです
(外務省の表記がいいですよ、と助言することは可能ですが)
クライアントに指定されていない場合に
翻訳者が従うべきルールは
このように「権威」のある機関・人が示しているルール
ということになります
さてさて、
話を元の元に戻し
「ルクセンブルク」
外務省の国・地域一覧で
彼の国は
「ルクセンブルク」
と表記されています
だから
「ルクセンブルグ」ではなく
「ルクセンブルク」
なのです
それだけの理由です
ちなみに
ルクセンブルク語では
どういう発音かというと
残念ながら
私はその知識を持ち合わせていません
Google先生で1回検索しただけで
見つからなかったので
あきらめたのですが・・・
ルクセンブルク語が最も近い
ドイツ語では
「ルクサンブア」
お隣のフランス語では
「リュクサンブー」
みたいな発音になります
英語でも
「ルクセンブーグ」
と「グ」に聞こえるかもしれませんが
実際には
「ルクセンブーク」と
語尾のgは本当に軽く「ク」に近い音で発音されるだけです
もしかしたら
意識では
「グ」と思っているかもしれませんが
大半の人の発音は
「ク」だと思います
そんなこんなで
やはり
Luxembourg
という国名は
ルクセンブルク
と表記するのが
適切なのであり
翻訳者のみなさんがこぞって
「ルクセンブルグ」と表記することに
ここで異議を唱えておきたかった
ということです
しかも、なぜだか
毎回修正するのに
毎回違った翻訳者が同じ表記の揺れをしてくるので
今回、あえてブログ記事で
このフラストレーションを
共有しておきたかったのです
みなさま
よろしくお願いいたします。
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