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ま、ドックはスニーカーと組むことが一番多かったけど、自分のペースに巻き込んじゃう自己中心的なわがままさがあって。また、憎めない茶目っ気があって。ロッキーもスニーカーも、ドックのパーソナリティに巻き込まれてしまった。ボンとか殿下は人情家なところが魅力だったけど、ドックはせこいんだけど内面はウエットなところがあるって感じで。一番書きやすかったし、自分に合ってましたね。」(古内談)
 周知のようにドックは救世主として『太陽』の後期を支える大黒柱となっていく。
 スニーカーの退職。スコッチ、ロッキーの殉職を経て、ドックは若手刑事の兄貴分として、チームをひきしめる役になっていく。ラガー(渡辺徹)ジプシー(三田村邦彦)ボギー(世良公則)とドックを加えた4人をカワセミカルテットと呼ぶのはあまりにも有名である。ドックを一番上の長兄とし、次々と登場する若手をトレーナーとなり、兄貴分として、鍛える、新生『太陽にほえろ!』ゴリさん的ポジションとなった。
 「ラガーとのコンビが面白かったですね。もう漫才ですよ、あれは。渡辺徹と神田は一回り違うんだけど、精神年齢は変わらない。だから、ラガーもドックを一応はたてるんだけど、内心は駄目な兄貴って感じでしょう。ジプシーはドックが性格を明るくしたんですね。というか、元々三田村は明るい男なんだけど、『必殺仕事人』のイメージが強かったから、初期は暗かったですね。でも、ドックやボギーとわいわいやっている間にネアカになってしまったんですね。徹も、三田村も、世良も、それ以降のブルース(又野誠治)も神田のことをアニキって慕ってますね。神田は結構面倒見良かったのよ。公私共にね。」(古内談)
 徹が言うには神田のベンツの電話でロケ中に電話を借りて電話した相手が現在の妻である榊原郁恵だったり、世良が神田の歌に殉職後のボギーのレクイエムのようにコーラスだけに参加したり、当時のメンバーはまるで合宿のようなのりだったそうだ。また、これくらいの結束があの後期黄金時代を生んだのだ。初期のマカロニ、ジーパン、テキサスにはない、若手の連帯感が後期『太陽』のカラーを生んだのだ。それはまるで俺たちシリーズを刑事物に移植したという他はない。
 「好きな回は一杯ありますよ。ドックの話はみんな好きですね。台詞なんかもストレートに言わないでしょう。だから工夫できて書きがいがある。時間がなくて、駄洒落と書いておけば、神田が現場で自分で駄洒落を考える(笑)」(古内談)
 古内にとってドックはまさに自分の分身といえるキャラクターだったのだろう。それは同時にデビューした尾西兼一も同様のようだ。
 そしてもう一人、神田がサブヒーローを演じた、『ゆうひが丘の総理大臣』(73)でデビューした奥村俊雄も同様だったようだ。
 「僕はドックの医大時代のガールフレンド、白石良子(岡まゆみ)さんのタテ糸を担当したんだけど、岡さんって女優も、コミカルな面があるし、ドックとは理想のカップルでしたね。変化球投げるような台詞のシチュエーションとか、ドックがああいったら彼女はこう切り返すっていう、彼女のほうが一枚上手なのかな?いい話ができました。」(奥村談)
ドックと良子のタテ糸の傑作は491話「ドックのうわごと」と536話「死因」だろう。ドックが代議士のヘロイン事件を解決させるために良子を医療ミスのために逮捕させてしまう。だが、ドックは良子を信じ、良子
もドックを信じ、微笑み合う。ドック編でも最も好きな回。トータルでも360話「ボンは泣かない」390話「20歳の殺人」559話「マザーグース」634話「パブロフの犬」とならぶマイベストエピソードである。 これらのゲスト、紀比呂子、斉藤とも子、奈良富士子、坂上味和、ともに共通の臭いが岡まゆみと同質ではないであろうか。 
   良子「全然恐くないの。だって天下の名刑事がついてるんですもの」
   昭(ドック)「そうだ」
   良子「でも、私のことをそんなに信じていいの?」
   昭「ああ」
   良子「病院やめても私は私、白石良子よ。」
   昭「……」
   良子「じゃあ、ステーキおごるわ。どうせオケラなんでしょ」
   昭「残念でした。飯食う時もガードしろってボスが小遣いくれたよ」
   良子「わあー!素敵なボスね」

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ボン殉職と前後して、脚本スタッフも大幅に入れ替わった。鎌田敏夫、市川森一、畑嶺明、杉村のぼる、桃井章ら、いわゆる俺たちシリーズのヒットメーカーは番組を降り、プロット募集で入った新人、古内一成、尾西兼一、君塚良一らが、メインとなり、よりフレッシュで若々しいストーリーが増えて来た。
 そして、ストーリーも、ボンの頃を発展させたラブストーリーあり、ホームドラマあり、とボンの時代にあった日常性が復活した。例えば、ドック登場直後にロッキーは令子と結婚、後になるが、ゴリさんにも二人目の恋人、麻生晴子(水沢アキ)ができる。そんな女性受けするエピソードが増えてくる時期である。
 「スニーカーの頃から、脚本を書いていたけれど、『太陽』の説教くさいところが凄いいやだった。ロッキーやスコッチもそうだけど、若い刑事が犯人に説教するのは不遜だし、辛かったですね。ドックが入ってから急に書きやすくなったですね。もうエンターテイメントに徹して。今までできなかったことができるなって。だからもうドックばかり書かしてもらいましたね。」(古内談)
 ドック編メインライター古内は特にドックに思い入れがあるそうだ。
 古内は432話「スリ学入門」459話「サギ師入門」などドックが犯罪のプロに弟子入りするエピソードなどで有名であるが、それまでの『太陽』では許されない話でもあった。犯罪すらもコミカルにさわやかに解決する。ドックならではのストーリーである。
 裕次郎も歴代の新人刑事の中でもドックを一番かわいがった。誰よりも神田に対して、厳しくもやさしかった。神田の母旭輝子と裕次郎が親しかったこともあるが、元々スキーのテスターをしていた神田を芸能界に入れたのが、裕次郎自身だったことにも起因するのであろう。
 ドックは当初、医大出のクセにトンチンカンな医学知識しかなかったことでヤブと呼ばれるようになった、登場して半年はドックと呼んでもらえなかった。それに対抗してドックも先輩たちをわざと呼び間違える。
ゴリ(ゴローさん)、スコッチ(ブランデー)ロッキー(アルプス)スニーカー(スパイク、ないし、スリッパ)こういった様々な工夫により、『太陽』はよりバラエティーにとんで人気も回復した。
 ドックが得意のスキーの腕を見せる449話「ドック刑事雪山に舞う」450話「ドック刑事雪山に戦う」の頃には、『金八先生』と並びたつ人気番組に復活していた。
 その頃デビューした脚本家、君塚良一は、『ずっとあなたが好きだった』で冬彦さんブームを起こし、『踊る大走査線』では新たな刑事物を模索したが、氏のデビュー作、423話「心優しき戦士たち」の台本が今、筆者の手元にあるのだが、実によく練られていて、完成度が高いのに驚く。君塚も若手ながらも、長さん(下川辰平)にこだわり、この頃から、ベテラン刑事に赴きをおいていたのだ。その『踊る大走査線』のベテラン長さん(いかりや長介)と下川がほぼ同時期に他界したのも皮肉なものである。
 古内一成は語る
「ドックの頃は第一稿が一発で通るなんて一回もなかったですね。もう練りに練って。ひどい時は10項くらい直しましたね。だからこの頃は密度が濃いですよ。岡田晋吉さんも死に物狂いでしたし、小川さんもそう。また、ドックの主役の回はメチャクチャ明るくて、逆にスコッチやスニーカーの回は暗いでしょう。だから一番バラエティにとんでいた時期かもしれない。あと、スコッチが主役でも、ドックと組むと何故か明るくなってしまう。(笑)

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太陽にほえろ!後期ファンよ立ち上がれ!!
ドック編
ビッキーHONMA

 ボンが死んだことにより、『太陽』の一つの時代が終わった。ロッキーとスニーカーのコンビでは、お化け番組、『金八先生』に対抗するには力不足だった。NTVは、『太陽』だけは10年はやりたいと思っていたため、なんとか、強化策をとった。まず、竜雷太の降板を2年待ってもらい、スコッチを復帰させることとした。
 だが、残念ながら、スコッチだけでは女性ファンを以前のように取り込むことはできなかったが、復帰作、沢田和美をゲストに迎えた400回記念作「スコッチイン沖縄」はかなり気合の入った出来であることは確かであった。
 しかし、スコッチは通好みのキャラクターであり、マニアはともかく、一般層の人気は今ひとつであった。ロッキーとスニーカーにスコッチが加わったことにより、ドラマに密度は増したが、ドラマのトーンは以前として暗いままであった。そして、女性ファンの憧れの要である殿下も殉職する。シリーズ終了の危機感のなか、救世主が登場する。
 ここで登場するのが、ドック(神田正輝)である。


○ 起死回生のドック編を支えた男たち
               古内一成、奥村俊雄、君塚良一

「『太陽』出る時、石原裕次郎さんに言われたんです。『お前、今度、『太陽』に来るなら、ぶっ壊して、やめさせちゃえ!て。でもそれはまずいでしょう。それで不真面目なキャラクターで何かの中退ってことでお前、年も年だし、医大なら6年あるから、いいだろう。
医大の中退で、ひょうきんで、ズル賢くて、3枚目で行きましょうと。そうしたら、梅浦洋一プロデューサーに話したら、その通りのキャラクターになって。服装なんかも。派手にして思いっきり目立ちましたね。」(神田談)
と神田は語る。
それが大受けし、番組を復活させる言動力となったのである。
「やっぱりせこいのが受けたんでしょうね。要領がよくて、熱血じゃないところが。最初は宮内さんのボンのイメージでっていう意見もあったんだけど、自分はもっと不真面目だし、『大都会』の新聞記者とか、『ゆうひが丘の総理大臣』の教師とか、真面目なのが多かったから、楽なのがいいと思ったんでしょうね。小野寺昭さんの殿下の後釜ということで、かなり長く、出演すると最初から聞いてましたから、ピストルもS&WのM59、自分で選びました。」
 ドックの使う銃はオートマチックで15発連射できる。--- 当時、私はモデルガンを買った。そして、ドックといえば音楽のテーマ曲も多すぎるくらいバリエーションがあった。
「大野克夫さんがかなり気合を入れて、ドックのテーマ曲を、何曲も作ってくれましたね。
のんびりしたものから、アップテンポまで。素敵な音楽でしたね。」(神田談)
そしてドックは誕生する。それまでの新人刑事と違い、別の番組で既に有名だったスター神田の登場は、お茶の間、特に女子中学生に大人気だった。
 415話「ドクター刑事登場!」ドックの初登場シーンも抜群だった。履歴書の写真をズームして、新宿をピーナッツを食べて、不真面目に出勤してくる。のである。このファーストカットに私はしびれた。父親は有名な開業医。だが、3年で医大を中退し、勘当されて、弟に病院を継がせているという今風の設定に皆がしびれた。退学届けを出した日に警察官募集のポスターを見て応募したのだ。しかし、ドックの真意は419話「禁じられた怒り」で表したように、ボランティアをやっていて殺された彼女、坂上美津子(水原ゆう紀)と同じように、世の中の矛盾や怒りと対決するために刑事となったのだ。436話「父親」で父親と和解することになるのである。また、428話「ドック対ドック」で犬との絡みでコミカルな味を出し、話題となった。
 宮内淳もボンを演じた4年間が俳優人生の頂点だったが、神田も、ドックを演じた7年間が頂点であった。両者とも『太陽』に出て完成したスターだったのだ。また、両者ともに以後、これ以上の役とはめぐり合っていないのも共通している。