先日、ある現場で見かけた残念な光景。
ジョブコーチが、対象者に対して当たりの強い対応をしていました。遠目に「そんな言い方しなくても・・」と気になりました。そして、当の支援者はどこか「熱心な自分」に入っているようにも見えました。非障害者なら、決してそんな態度はとらないでしょう。
心理学や脳科学の知見を借りれば、人を叱ってコントロールしようとする行為は、脳の「報酬系」を刺激します。「自分は正しい」「相手のためにやっている」 この全能感のような感覚は脳内で快楽物質であるドーパミンを放出させます。表向きは「支援」でも、実は「叱ることそのものが快感」または「発散」になってしまっている危険性があります。
相手の行動はその人なりの合理性があってやっている。「熱心な自分」に入ってしまうとそのことを想像することができなくなります。自分が優位に立って相手を型にはめようとする時、既に支援は「攻撃」「支配」へと変貌します。
そしてやっかいなのは、脳の「馴化(じゅんか)」という特性です。 脳は同じ刺激に慣れてしまうため、これまでの叱責では物足りなくなります。 より強い高い圧力をかけなければ、かつての「快感(ドーパミン)」が得られなくなります。
福祉現場における虐待が、最初は小さな「指導」から始まりエスカレートしていく背景には、この報酬系の暴走があります。自分も含めた支援者は、知らず知らずのうちに、この脳のメカニズムに陥ってしまう危険性を常に孕んでいることになります。
さらにその現場で危機感を覚えたのは、ジョブコーチが企業の従業員の目の前で強い口調で叱っていたことです。
ジョブコーチの役割は、対象者のみを支援することではありません。職場の環境を整え、周囲の理解を促す「モデル」の役割を担っています。ジョブコーチが高圧的に接する姿を見せれば、従業員は「ああ、あの人にはああいう風に接していいんだ」と学習してしまいます。ジョブコーチは、自分の行動が周囲にどのような影響を及ぼし、どのような「空気」を作ってしまうのか。その想像力が欠如した瞬間、ジョブコーチは職場における「障壁」そのものになってしまいます。
私たちはこの脳のメカニズムとどう付き合うか、とても難しいことですが、以下の4つを考えてみました。
①知識(メカニズムを知る) 「叱ることは快感になり得る」という科学的な事実を知識として持つこと。
②自己理解(自分のタイプを知る) 自分がどんな時に優位性に立ちたがるのか、自分の傾向を冷徹に分析しておくこと。
③スキル(気づきとメタ認知) 「今、自分は報酬系を刺激したがっているな」と、自分の状態を客観的に観察するマインドフルな視点を持つこと。
④仕組み(孤立を避ける) 密室や濃密な支援を避け、チーム支援、自身のメンターやスーパーバイザーを自身に配置し第三者の視点で自分の支援を「査定」してもらう仕組み。
新しくできる「就労支援士」では、こういう教育のカリキュラムはあるのかなぁ・・