私はピアノが大好きだが、フィギュアスケートも大好きである。(こちらは見る専門。)
先日、吉見友貴さんのリサイタルに行った際に、吉見さんもフィギュアスケートファンであることを知り、またミラノ・コルティナオリンピックも近づいており、改めてピアノとフィギュアスケートの関係にふと思いを馳せたので、備忘的に書いておこうと思う。
言うまでもなく、フィギュアスケートという競技には音楽は欠かせない。
クラシックでも現代音楽でもボーカル入りでもなしでも何でも良いのだが、ピアノ曲を使った名プログラム・名演もフィギュアスケートの歴史には数多くある。
ここではピアノ曲を使ったプログラムで私が特に好きなプログラム・演技を記しておきたいと思う。
その1はソロ編。(その2は協奏曲編の予定。)
4曲選んでみたが、3曲が日本人選手のプログラムで、うち2曲が羽生結弦選手という若干偏ったものになってしまった。
(ちなみに、私はフィギュアスケートもピアノ同様「皆違って皆良い」派で、特定の1人のファンではない。)
が、どう考えてもこの4つが私にとっては最高である。
(1)ソロ編
①羽生結弦選手 ショパン バラード1番
男子シングル史上2人しかいないオリンピックを2連覇した、日本が誇る希代のフィギュアスケーター羽生結弦選手。
名プログラム・名演はとても多いのだが、このショパンのバラード1番を使ったショートプログラムを最高傑作にあげる人も多いのではないだろうか。
名演は多いが、一つ選ぶならやはり2連覇した2018年平昌オリンピックの演技であろう。
バラードの美しい旋律と羽生選手の一つ一つの技はもちろん、技以外の全ての動作までもがぴったり合う完璧な実施だった。
特に終盤の情熱的なコーダにのせたステップと最後のスピン~ポーズは何度見ても心奪われる。
ちなみに、使用しているのはツィメルマン演奏版だそうで、羽生選手が「これじゃないとダメ」と言ったとか。
②浅田真央選手 ショパン ノクターンOp.9-2
多くのファンに愛され、3度世界チャンピオンとなり、バンクーバーオリンピックでは銀メダリストとなった浅田真央選手。
うちの娘も保育園の頃に’真央ちゃん’にあこがれてスケートを始めた1人である。娘がスケートをやりたいと言い始めた当時、スケート教室は真央ちゃん人気で1年半以上のウェイティングの末にやっと入会できたことを思い出す。
はじめてスケートリンクに行ったとき、「真央ちゃんみたいにトリプルアクセルを跳ぶ!」と意気込んでリンクに降りた娘だが、5分後には現実の厳しさを知り、顔をこわばらせていた。しかしもう30分もすると滑るのが楽しくてしかたなくなり、その後高校1年生の秋までリンクに通う日々を過ごすことになった。
話がそれたが、浅田選手はシニアデビューした年の2006年と2014年の2回、ショパンのノクターンOp.9-2をショートプログラムに使用している。
どちらもとても素敵なのだが、どちらかを選ぶとしたら、大人の女性になり、思うような結果が出ないことが続いてもひたむきにスケートに向き合う浅田選手が美しい2013-4年版をあげたい。
特に最後のスピンからエンディングのポーズはノクターンの美しいピアノの音にぴったりで、息を呑む。
2014年の世界選手権ではノーミスの素晴らしい演技だった。
③羽生結弦選手 サン=サーンス/清塚信也 ロンド・カプリチオーソ
サン=サーンスのヴァイオリンと弦楽器のための曲を、ピアニストの清塚信也さんが羽生選手のショートプログラムのためにピアノソロで編曲・演奏した曲を使用したプログラム。
当然ながら音楽と全ての振りがぴたりと合い、ドラマチックで一瞬も見逃せない。
羽生選手の凄さはジャンプやスピンと言った技だけでなく、技と技の繋ぎもただ助走しているところが殆どなく、全ての瞬間が音楽に合わせた振付になっているところにも表れている。その凄さをふんだんに引き出した傑作である。
このプログラムでオリンピック3連覇に挑んだが、氷の穴に引っかかる不運にも見舞われてジャンプの回転が抜けてしまい、残念ながら3連覇はならなかったため、そのことを思い出して、見るたびに若干の切なさも感じてしまうのだが、それでも何度も見ずにはいられない。
羽生選手最後の全日本選手権でこのプログラムを披露したときはノーミスの素晴らしい演技だった。
④カロリーナ・コストナー選手(イタリア) パッヘルベル カノン(ジョージ・ウィンストン版)
現在の日本男子シングルのエース、鍵山優真選手のコーチであるコストナーさんの選手時代のショートプログラム。
2007年に東京で行われた世界選手権ではノーミスの素晴らしい演技で、観客を魅了した。
カノン自体は元々ピアノ曲ではないが、ピアノ用にジョージ・ウィンストンが編曲したものを使用している。
美しさと可愛さが溢れる、音楽とスケートが互いを引き立たせる、何ともチャーミングなプログラムである。
コストナー選手はスケートの上手さにも定評がある選手だったが、カノンの一番有名なメロディーにのって刻まれるステップが最高だ。
羽生選手も浅田選手もコストナー選手も、ただジャンプが跳べたりスピンが上手だったりするだけでなく、音に合わせた振りや滑り(いわゆる音はめ)が本当に素晴らしく、細かく繊細な一音一音まで表現できるため、ピアノ曲との相性がとても良いように感じる。
今年は、鍵山優真選手がショートプログラムはMarcin&角野隼斗の「I wish」、エキシビションでは角野隼斗作曲の鍵山選手のためのオリジナル曲「Frostline」で滑っている。
昨年末の全日本選手権にはMarcinと角野さんが揃って鍵山選手の応援に来ていた。
来るオリンピックで、角野さんのピアノにのせた鍵山選手の名演が見られることを期待したい。