【観劇記録】散歩する侵略者 | 手上のコイン Blog

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イキウメ2011年春公演
『散歩する侵略者』

横浜プレビュー公演●4月23日(土)・24日(日)KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ
水戸公演     ●5月8日(日)
東京公演     ●5月13日(金)~5月29日(日)シアタートラム
大阪公演     ●6月4日(土)・5日(日)ABCホール
北九州公演    ●6月12日(日)北九州芸術劇場中劇場

作・演出 前川知大 

■Cast 

浜田信也
盛隆二
岩本幸子
伊勢佳世
森下創
窪田道聡
大窪人衛
加茂杏子
安井順平


■Story

地球侵略会議はファミレスで

日本海に面した小さな港町。
大陸に近いこの町には同盟国の大規模な基地がある。
この国にとって戦略的に重要な土地だ。
加瀬真治は、地元の夏祭りが終わると性格が一変していた。今までの記憶を失くし、町の徘徊を始める真治。
夫を介護しなければならなくなった妻の鳴海は、新しい生活に戸惑う。
町に事件が起きる。
それは老婆が息子一家を刺殺した後、自殺するという凄惨なものだった。
同じ頃、海岸線では町の人々が奇妙な光を見る。
それが隣国のミサイル誤射であることをテレビのニュースは伝える。
凄惨な事件と、軍事的な緊張とが相まって、町には不穏な空気が流れていた。
そして、真治は鳴海に告白をする…。

(チラシより)


以前、G-up プロデュースで観たことはあったものの、やはり本家が観たいと思っていて。
タイミングが合わずに確か前回(再演)は諦めたので、今回は公演情報が出た時点で、既に観るつもりでいた。

観劇した感想としてはセット・演出共に、私的にはやはり本家のイキウメ版の方がしっくりくるなと。
というよりも、そもそも脚本も好きだけれど、前川さんの演出も好きなんだよな…。

淡々、としてるようで実はどこかPOPさを感じるというか。重いものを必要以上に重くはしないバランス感覚。
登場人物が感じさせる現実感の無さが、むしろ、そういった非現実的な場面に相対した時の、「現実的」なレベルで推移している。

人間が本気で恐怖した時には、叫んだりしないように、
ふ、と客観的に自分達を眺めた時には、実はこうなんじゃないだろうかと。

設定の1部は(少なくとも今の私たちには)非現実的だけれど、
その中で展開される人間の気持ち、行動。そういうソフトの部分は、下手な現実より現実味を感じさせる。

それがあってこそのイキウメ、なんだよな~と。

普段芝居を観ていて。
重い内容を、重たく扱うこととか、
軽い内容を軽妙に描くこと。
そういうものに恣意的なものは感じても、意図的なものを感じることは実はほとんどない。

最近ようやく、イキウメを2作品続けて観ることが出来て、以前観た時よりもそういった部分のコントロールが上手くされているよな、という印象を受けた。
前川さんの演出には心地の良い秩序のような「意図」が感じられるということなのだと思う。
もちろん、脚本の細かい改訂部分もその作用を持っているんだろうな…。

そういえば、先日観に前日に観た「春すぎて」で、古い家を見て、登場人物が「耐震構造はゼロね」なんて言うのを聞いて。
地震の以前ならばこの台詞は、無かったんだろうな~と思ったりしたのだけれど。

今回の再々演を観ていて、何となくあー。この台詞は今だからこそ加えられたものなんだろうな~という部分もあったりして。でも、登場人物の、重大な事態に対する危機感の欠如の怖さであるとか。そもそもこの作品が持っていた要素でもあるので、全く違和感無く馴染んでいて。
不思議とタイミングというのはあるんだよな…と。
いろいろと感じるものもありました。

それにしても。初演と再演を知らないので再々演で何が変わったのか、正確にはわからないけれど、
以前に他で観たこの芝居よりも、ずっととっつきやすい感じに仕上がっていたように思う。
安井さんの持っている雰囲気というかキャラクターのスタンスなんかも観ていて入りやすいし。
大窪さん完全にズルいし(笑)

相変わらず面白かった。
イキウメは、本当にオススメな劇団だよな~。