【観劇記録】『Blue』 | 手上のコイン Blog

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ATSUWO OHUCHI PRODUCE
Story Dance Performance
『Blue』

14日、14時の回を観て参りました。

作・構成・演出・振付:大内厚雄
出演
男 :大内厚雄
女1:岡内美喜子
女2:小林千恵

会場に入ると、ステージ(と言っても基本的には薄いゴム製のシートみたいなものが一枚ひいてあるのみ)の3方をぐるり囲む形に、座布団と椅子で用意された三列ほどの席があり、ステージの背景には、同じ幅の縦に長い布が何本か等間隔に下がっていました。
白っぽく見える布には微妙に色の濃淡があり、向かって左は青系で左濃色→右薄色。右側はピンク系。…に見えました。もしかしたら、照明の加減なのかな?とも思いつつ。
開演前には、
その布にブルーのライトが、海底の水底から、水面を見上げた時のように、ユラユラと揺らぐ光を映し出していました。
スピーカーからは、細く…
風の音が絶え間なく流れ、どこか不安感をかき立てます。

しかし、何のきっかけもなく、大内さんが前説に出てらした時は、「?」となってしまいました(笑)
いや、知らなかった訳でもないんですがね。前触れ無さ過ぎて、呆気にとられているうちに前説が。
大きなハコの時と違い、そんなに声を張らずに話されるので、大内さんの声がいつもより低温…おっと違った。低音に聞こえました。低い声に弱い私が、ちょっぴり動揺した事は言うまでもない(笑)
ま、余談はさておき、

前説の最中、大内さんが「トイレの電気は大丈夫ですか?」と、ふと気付かれたようでスタッフさんに尋ねて。スタッフさんがチェックしに行ったのですよ。
それを待つ間、手持ち無沙汰な大内さん。不意に一歩前に踏み出し、前の方のライトの辺り(に始めは見えた)を体を捻って見上げたかと思うと、手を翳して何かをチェックし、勝手に一人で納得して、元の位置に戻られたんですね。
一歩出てきた時も『?』なんですけど、そんな不審な動きをしておいて、全く説明されないので『?????』←?が増殖。
と思っていたら、ひと呼吸置いて、
「あ、いま何してるのかなとか思いました?」
…思いました。
「実は、足の裏ってね、わりと汗かくんですよ」
あ…足の裏?
見ると、足元は裸足。
「ここ、結構暑いから、空調がちゃんと入ってるか確かめたんです。じゃないと、汗でツルッといってしまうんで。」
…な…ナルホド。
何だか力が抜けました……(笑)
その後、説明途中だった注意事項を、一瞬忘れそうになりつつ最後まで言い切り。
「ちゃんと全部言えた?」
と、確認後。

本番が始まりました。


曲は全て、山崎まさよしさんの楽曲から。(どうやらほとんど『BLUE PIRIOD』というベストアルバムからのchoiceのようです。)
力強い山崎さんのヴォーカルと、切ない歌詞に合わせ、3人の男女の心模様が描かれてゆきます。
ストーリー・ダンス・パフォーマンスという表現がしっくりときました。
と言って、セリフのない、解釈の間口の広い作品ですのでね、あんまり自分の解釈でストーリーは書きたくないし、だからといって全部覚えている訳でもないので。
まぁ、できるだけシンプルに。

開演と同時に、明かりが落ち、青いライトが照らし出したのは、床に置かれた一枚の白いシャツ。
大内さんがそれを拾い上げ、誰かを想うようにそのシャツを抱きしめ、それからそれを着て、踊り始めます。
その後、再び大内さんはシャツを脱いで、岡内さんに渡します。岡内さんは、渡されたシャツに袖を通し、踊り始める…。
そんな始まりでした。

大内さん演じる男性は、小林千恵さん演じる女2と付き合っている。(もしくは結婚している?)でも彼の心はどこか岡内さん演じる女1にあります。
そして、それを小林さん演じる女2は、気づいている。
幸福な時間もあります。3人で楽しく過ごすようなシーンもある。
しかしやがて、男の心を知る女2は彼の元から去ってゆきます。
一方、男と一緒に過ごしていた女1が胸を押さえて倒れてしまうシーンもある。
それが、過去のことなのか、そうではないのか。
男は、死んだ女の面影を追っていたのか、それとも心変わりをしたのか。そのあたりは見る側の解釈によりますかね。

男は、
失意に沈み、
それでも再び歩き始める。
…前を向いて。

大体、こういった流れかな。

3人の関係はどういうものなのか、はっきりとはしないんですが、心情は伝わってきます。一つ一つのシーンが、楽曲の歌詞と合わせてイメージしているうちに…とにかく切なくて涙が出てきた。

小林千恵さんの演技が、どうもですね。私の泣きのツボに入るのですよ。
ミス・ダンデライオンの子供時代の樹里ちゃん(役)の時も。悲しむシーンの時に全身全霊で悲しい!!と言っていて。見ていて本当に可哀想だったし。
少年ラヂオも、兄のラヂオを信じて頑張るコテツの姿が、健気で、涙を誘われました。
…すいません。私、小林千恵さんも大好きなのね(笑)
今回も、だから、つい彼女の役に感情移入して見てまして。
頑なさ。というか。相手が好きだからこそ赦せなかったり。意地になったり。わかるなぁと思って胸が痛かったですね。
しかし、間近で見ても本当に可愛い…。そして、今回は色っぽい。
岡内美喜子さん。
言うまでもなく美人さんですし♪目の保養~(笑)
優しく、悲しげに。
小林さんを。
大内さんを。
見つめる姿がとても印象的でした。どちらかというと、常に受け入れているというか。相手を優しく包み込む感じ。
ダンスもとても女性的でしなやかで、手足も長くて。
………。いい匂いがしてね(←お前はオヤジか!!)いえ、フレグランスですよ、フレグランス(笑)
そして大内厚雄さん。大内さんのダンスは、本当に単純にいつも好きなので。こんなふうに贅沢に見られること自体が嬉しかった。のです。
もちろん踊っている姿は格好いいんですが、役としてあったのは…。
2人の女性の間で、心揺れてしまう弱さもあるし、彼女たちを失って、そこから立ち上がってゆく強さもあり。
すごく人間的な感じがしました。
『振り向かない』という曲のシーンで、小林さんが彼の元を去った後。
大内さんが置き忘れられた傘を拾って、それを持って部屋から飛び出そうとして。
でも扉の前で、彼女が行ってしまって、もう帰ってはこないことを思い知ったように、膝から崩れ落ちる。
…これが、目の前だったのでよけい印象深かった。
想いの真剣さというか。
ちょっと考えると、彼は誰も幸せにできてないんですが。
でも、この男性というのは、浮ついた感じではなく。一つ一つの想いは真摯なんじゃないかと。
そう思ってしまうのは大内さんのキャラクターもあるんでしょうね(笑)

しかし、ダンス・パフォーマンスだけでなく、ちょっとした趣向が凝らされていたりもして、小道具のボール(野球のボールくらいの)に明かりが灯った時には、おっ。そういうこともやるのかぁ~と。
終盤では明かりが落ちると、天井に星空が(もちろん電球ですが)現れたり。
そういう細かなところが、観に行った側としては嬉しかったですね。

狭い空間なので、役者さんの表情はもちろん。人が動いて起きる風すらわかる時がある。
私は花道(花道があるあたりがまた凄いと思いましたが)の横に座っていたので、役者さんがそこを通っていく時の床の振動もわかる。ロウソク(を使うシーンもあったので)のロウの匂いも。
これ以上の臨場感は無いですよね。それも素晴らしく面白かった。

いろんな感情、感覚をフル回転させて観ていたので終わってから放心してしまいましたが(笑)

『Passage』
ラストの曲。
哀しいけれど希望を感じさせる曲です。

目指すのは、遥か遠く。
大切なものを失っても、喪っても。生きている限り道は続いていて、途切れることはなく…。
わからなくなり立ち止まってしまっても、時に歩けなくなっても。

『僕はまた歩きはじめる』

そんな、物語でした。