1915年12月、北海道苫前郡苫前村三毛別で発生した獣害事件。
冬眠できなかったクマが冬に人家を襲い、人間を食い殺した。
12月9日朝、農作業に追われ男手が出払った民家にヒグマが侵入し、
燃える薪やまさかりによる抵抗をものともせず、女性と6歳の子供を食い殺した。
大騒動になった村は、引きずり連れ去られた女性の遺体を見つけるべく捜索隊を結成。
翌日遺体は発見され、通夜が行われた。
その通夜に再びヒグマが襲来するが、参列者は梁に上ったり隠れたりし、また近隣の男たちが銃を持ち込んだり石油缶を打ち鳴らして威嚇したため、犠牲者は出なかった。
しかしその直後、下流へ避難していた女子供のいる家へヒグマが現れる。
暗闇で逃げ惑う人々を次々に襲い、4人(胎児を含めると5人)が死亡、4人が重傷を負った。
村の住民はすべて避難し、北海道庁の保安課から討伐隊が組織された。
その間もヒグマは住民のいない民家を荒らし続け、鶏やトウモロコシを食べたり、衣服や寝具をズタズタにし、
また、女性の匂いのする枕や温めて湯たんぽ代わりに使う石などに異常な執着を見せた。
行動に慎重さを欠き始めた熊は、13日に対岸から陸軍体長による銃撃を受け、
翌日、山本兵吉というマタギによって撃ち殺された。
現在は三毛別村はなくなり、事件の資料として熊の標本などが残されている。
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事件の記録を読んでいてぞっとした。
何度も同じ家にやってきて、火も鳴り物も効果がないなんて。
恐怖に怯えるしかない日々を想像して身震いした。
でも熊だって必死だったろうな。
冬眠できなくて、食べ物がなくて、住んでるところにはどんどん人間が入ってきて。
怒りとか、悲しみとか、どれくらい感情があるのかはわからないけど。
同じ家を何度も襲った、とか、女性の人肉の味を覚えてから執着するようになった、とか、
聞くとやっぱり異常な感じがして怖くなってしまうのだけど。
最終的にこのヒグマを討った山本さんは、若いころに鯖裂き包丁一本でヒグマを倒したことがあって、
「サバサキの兄」という異名をもっていたとか。
ちょっとおもしろかった。
このヒグマは推定7~8歳のオスで、体重340kg、体長2.7mの巨体だったそう。
襲われたらひとたまりもない。