☆
30代のはじめ、僕はオペラやバレエをよく見に行きました。バレエは家内が好きなのでその影響です。
これは1990年シーズンのロンドン・英ロイヤルバレエの『くるみ割り人形』のキャスト表。ボクシング・デイ(12月26日)のマチネでしたので、ロイヤルには珍しく子供がたくさん来てたのが印象に残ってます。クリスマスシーズンにはやっぱり家族でくるみ割り人形なんですね、あちらのそれなりのご家庭では。金平糖の精は若き日のダーシー・バッセルでした。
翌年はパリのオペラ座(バスチーユの新オペラ座のほう)で『ボリス・ゴドゥノフ』、この演目は後にも先にもこの時しか見てません、なかなか難しいオペラですから(汗)。タイトルロールはパータ・ブルチュラーゼ。とにかく声がデカかった。
この日は12月27日、実はその前、クリスマスにオペラ・ガルニエでバレエ『ロメオとジュリエット』(もちろんヌレエフ版)を見に行きましたが、観客はみな気合の入った正装でした。ということで、27日は僕も正装して行ったのですが、この日は案に反してみなさんカジュアルな格好、僕はコンシェルジュの黒服に間違われたりして結構あせりました。この辺のドレスコード、難しいです。あ、ガルニエのロメジュリは素晴らしかったですよ。2回見ましたが、デュポン/ルディエールとルグリ/ゲランのダブルキャスト(イザベル・ゲランはエビ中のマネージャーの隅内さんにちょっと似てるw)、マキューシオがヴ・アン。たしか当時スジェかプルミエだったミテキ・クドーやルテステュも出てた記憶が……バレエファンならこれがいかに素晴らしいキャストかわかりますよね。プログラムとキャスト表が見当たらないので画像はありませんが、出てきたらまた後日載せます。
これらは1992年夏のロイヤル、またしても『ロメオとジュリエット』、英国ですからマクミラン版でした。ジュリエットはシルヴィ・ギエムとアルティナイ・アスィルムラートワのダブルキャスト、マンドリン弾き役で熊川哲也も出てました。ギエムは説明不要ですね。アスィルムラートワはカザフスタンの出身でアジア系、僕と同い年ですが、超絶可愛らしい人でした。
日本だと東京文化会館でもどこでもバレエの観客はほとんどが女性で、僕などにはアウェイ感満載なのですが、上記のような英国やフランスでは男性の方がむしろ多いくらい、若い方から年配の方まで幅広い客層。夏のロイヤルは2公演とも1人で見に行ったのですが、隣にいた僕と同じ年恰好の男性がしきりに話しかけてきました。どこから来たのか、に始まって、好きなダンサーとかいろいろ聞かれて、終わったら食事に行こうと誘われましたが、丁重にお断りしました。その人、僕を見る目が潤んでましたから(笑)。
とまあ、そんなことより、これらの公演に行って当時感じたのは、どの人もダンサーの美を口々に論評しつつ、楽しそうに自分の「推し」をホメ讃えてるんですね、幕間に一杯やりながら。その当時、僕の知る限りでは日本にそんな空間はどこにもなかった。演目だけではなく、バレエをとりまく文化全体のなせる業というのかな、もちろん日本にも歌舞伎や能や文楽がありますが、これらは基本的に年配の男性による藝能ですからね(笑)、『舞姫』の森鷗外みたいな話にはならないわけです。
彼国における、特にバレエ現場におけるこうしたあり方は常々羨ましく思ってましたが、その後、約四半世紀を経て、かつてロイヤルやガルニエで吸った空気と同じような空気をまとったものにふと出会いました。それが僕にとっての私立恵比寿中学です。
もちろんこれはあくまで私的な印象、感想であり、藝や技量を単純に比較することはできませんが、少なくとも僕の目には、例えば雪のZEPP東京でピアノ柄の白い衣装で登場した彼女らの姿に、ガルニエやロイヤルで見たジュリエットの姿が二重写しに見えたのは確かでした。
エビ中というユニットにはどことなくヨーロッパの古典主義的な香りがします。グローバル化計画のオペラの回、みなさんもご覧になったでしょ。あの衣装であんなに違和感のないアイドルグループは他に見当たりません。これは見た目の善し悪しとか、訓練して身につくようなものではなく、持って生まれたもの、言葉本来の意味での「タレント」です。運営のみなさんには、もちろん営業上のご苦労もおありでしょうが、どうかエビ中のこのカラーを大切にしてもらいたいですね。変化と変質を取り違えないよう、くれぐれもお願いしますよ。よそのグループの真似をする必要などまったくありませんからね。



