RME Fireface UCXのバランスアウトレベルが偏っている | 音響・映像・電気設備が好き

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「ヒゲドライバー」「suguruka」というピコピコ・ミュージシャンが好きです。

表題の「RME Fireface UCXのバランスアウトレベルが偏っている」件ですが、Twitterで色々と盛り上がるうちに知識も増えまして、その反面人に伝えるには余分な情報も増えてしまって、ここに初動の話を簡潔にまとめておきます。
今回は、協力者さんが沢山おりまして、各位に大変感謝しております。

 

そもそもの自分の発端は、8chで出力インピーダンスが同じで、最大+24dBuが出るバランス出力(あえて書きますが、ホット・コールドへの印加電圧が均等)の機器の選定でした。8chマルチチャンネル回線の一括位相・レベルテスト・各チャンネル毎のクロストーク計測を行いたかったのです。手持ちのRME Fireface UCXは8chアウトは出来るものの、7・8chはアンバランス、それにMAX 18dBuという仕様なので最初に除外しました。
最終的に会社に買ってもらったのがこれ→APHEX 141B 8CH ADAT to アナログ・コンバーターの紹介なのですが、これはインピーダンスバランスでして、コールド側に信号が流れない仕様で、これは「ホット・コールドへの印加電圧が均等」という条件から外れました。(仕様に記載がないが、他に代替できる製品もないため購入した経緯)バランス入力の場合は、コールドが断線していてもレベル変化が起きず、チェックになりません。

 

 

時を同じくして、Twitterを眺めていたら、バランス出力のCDプレーヤのホット・コールドの電圧に差がある、という話がありました。
個人的には、フォンジャック出力=インピーダンスバランス、キャノン出力=バランスという感覚があり、前者でホット・コールドの電圧差(そもそも前出した通り、コールドに信号は流れない)なんてのは当たり前だろうと感覚だけで思っていたので、キャノン出力で起きても、まぁ、さもありなんでしょうなんて適当に思っていたのですが、あれ、まてよ、そういえばRME Fireface UCXのバランス出力もホット・コールドの電圧に差がある事を思い出しました。

 

 

と言うのも、NTi XL2にはバランス入力のホット・コールドの電圧差を見る機能があるのです。
※測定器持ちなので、新しい機材を買うと時間がある時は測定して遊びます。

 

 

 

イメージ 1
RME Fireface UCXのバランス出力(0dBFS 1kHz)をNTi XL2で計測するとホット・コールドの電圧差がある。※0.5dB始まりの1.5dB刻み、最大4.5dBまでの偏差の計測が可能

 

 

 

ごらんの通り、ホット・コールドへの印加電圧が均等ではありません。目にはしていましたが、冒頭の話を見るまで忘れていました。まぁ、そんなもんなんだろうと気にもしていませんでした。
が、気が付くと気になるもので・・・少しの差なら分かるのですが約3dBの差があり、これは何かしらの設計意図があるものと筆者は考えました。なぜなら、RMEという会社が出しているオーディオI/Fだからです。決して安価ではありません。
測定器がひとつだけですと、計測間違いもあるかもしれませんので、デジタルオシロスコープでも測定してみました。

 

 

 

イメージ 2
Tektronix TDS220 デジタルオシロスコープで2ch表示した状態。電圧比で約1Vの差がある。つまり、ホットの方がコールドに比べると約1Vレベルが高い。

 

 

 

本来なら、アイパターン表示のようにホット・コールドは均等のレベルになり、このように櫛状にはならないはずです。fixerさんより、NTiの測定器だったら、ML1ではさらに細かい表示が見れたと思いますよ、と助言をいただきました。

 

 

参考リンク:fixerさんのBlog
http://fixerhpa.blog.fc2.com/

 

 

 

イメージ 3

 

 

 

イメージ 4
NTi ML1で計測した結果。下はシグナル・バランス・エラー(Signal Balance Error)と言う計測項目で、ホット・コールドの電圧偏差をパーセンテージで表示する機能との事です。

 

 

参考リンク:【PDF】Signal Balance Error - NTi Audio
http://www.nti-audio.com/Portals/0/data/en/NTi-Audio-AppNote-ML1-Signal-Balance.pdf

 

 

このような測定機能(偏差0.5dB以内で正常表示)があるという事は、ホット・コールドの電圧差は不良としてみなされているのではないかと思い、RMEの国内販売正規代理店であるシンタックス・ジャパンに問い合わせを入れました。

 

 

結果は、おそらく不具合ではない、との事でした。
個人的には、サーボバランスアウト(コールドがグランドに短絡するとホットのレベルが6dB上がる機能)を優先したため、設計上こうなってしまった、や、測定器のインピーダンスが200kΩなのでそのような結果が出る、などの技術的に的確な回答を頂きたかったのですが、期待外れでした。

 

 

これはつまり、RME Fireface UCXのバランス出力では敷設ケーブルの減衰チェックに使用できないと言う事になります。
※RME Fireface UCXから敷設線に18dBu出力をして、受け側でホットーグランド間で12dBu、コールドーグランド間で12dBuを計測するという事が出来ない。

 

 

Ninjasoundさん経由で本家RMEに本件を聞いていただいてもらったところ、オーディオにおいてはホット・コールドの電圧差は問題にならない、との回答でした。
※シンタックス・ジャパンさんに直接RME本社に問い合わせをしていただきたくメールをしていましたが代理店止まりの門前払いだった為、お力を借りました。

 

 

参考リンク:Ninjasound Engineering Facebook
https://www.facebook.com/ninjasoundengineering/

 

 

それでも、やはり技術的に回避できない何かがあるのかは不明でした。
「オーディオにおいてはホット・コールドの電圧差は問題にならない」事は、そもそもオーディオに於けるバランス伝送の仕組みとして理解はしているのですが、なぜ製品としてそのような出力なのかが知りたいのです。
RME製品は仕事でも年一回くらい納品をしており、多チャンネルオーディオ案件では欠かせない製品群です。これらの製品知識を学ぶためにFireface UCXを購入した経緯もあるので、今回の一件は腑に落ちない結末でした。
余談ですが、RME MADIFaceXTのキャノン出力はホット・コールドの電圧は等価です。

 

 

今回のこの一件、冒頭でも申し上げましたが沢山の方の協力があり、記述した以外の新しい発見、知識、規格なのどがあり、大変勉強になりました。ここでお礼いたします。本件、なんらかの進展がありましたら追記いたしますのでよろしくお願いします。