DLPプロジェクタの基本的な仕組み | 音響・映像・電気設備が好き

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DLPプロジェクタの基本的な仕組み

自分が初めて出会ったDLPプロジェクタはPanasonicのTH-D7600でした。当時はビクターのILA三管式プロジェクタしか知らず、情報としてあっただけの「DLP」の映像は、それは素晴らしいものがありました。
そのDLPの仕組みについて、簡易的に説明します。


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ここに一枚のミラーがあります。そこにミラーと同じ面積を持った、ベースを用意します。
ベースの上に「軸」を対角線上に乗せ、「ミラー」と「ベース」を張り合わせます。ミラーは軸を中心に、シーソーのように左右に傾くことが出来ます。
機構を単純にするため、ミラーの傾きを「左に傾ききる」「右に傾ききる」のみに限定します。


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ミラーに対してある一定方向から、直進性に優れた光を当てます。
当てられた光は、先の条件から二方向にしか反射しません。
そのうちの一方向の光を、黒い板で覆ってしまいます。
これにより、「光を反射している状態」「光を反射していな状態」をミラーの「二種類の傾き」で作り出すことが出来ます。

光を反射している状態を「ON」
光を反射していない状態を「OFF」

と呼ぶことにします。
このONとOFFを繰り返し、間隔をどんどん狭めていくと、光源の明るさは変わらないのに、(反射した)光の量を調整することが可能となります。

ここで、光源に工夫をします。
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カラーホイールと呼ばれる赤、青、緑、のフィルターを一体にした円盤を光源の前に設置します。カラーホイールを回転させることに伴い、光源から得られる光は赤、青、緑、の三原色となります。
得られた光をミラーのON・OFFで高速に赤、青、緑とタイミングを合わせると、光の変化に目がついていかず、結果として様々な色を作り出すことが出来ます。
(カラーホイールが緑に差し掛かったとき、ミラーをON状態にし、青・赤に差し掛かったときにOFF状態にすると、得られる光は緑になります。また、ミラーをずっとON状態にすると、得られる光は白となります。これを応用し、各色の光量を調整し、混ぜ合わせることによって光の三原色で生成できる全ての色を作り出すことが出来ます。)

と、ここまでの話はミラーがひとつだった場合です。
ミラーを「色を作り出すひとつの点」だとすると、数を増やせば一枚の画が描けることになります。(この発想が凄い!)


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ミラーをひとつ、ふたつと増やして行き、敷き詰めて行きます。
横に1024個、縦に768個のミラーを敷き詰めると、パソコンの画を描くには十分な画素数となります。


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目的の画素数まで増やして行く…
汎用プロジェクタなら1024×768=786432個のミラー
フルスペックハイビジョンプロジェクタなら1920×1080=2073600個のミラー
映画館用のプロジェクタなら4096×2168=8880128個のミラーが必要!


このミラー集合体をうんと小さくして、ひとつのチップにまとめたものが、DLPプロジェクタの心臓部、「デジタル・マイクロミラー・デバイス:DMD」です。
このDMDから得られた画像を、レンズで投影することによって、DLPプロジェクタは機能しています。
(ちなみにDLPはデジタル・ライト・プロセッシングという単語の略称。)


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実際のDMD。防塵のため、ガラスで密閉されています。


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ミラーの面積はほぼ十円玉程度。これはXGA用ですので、このサイズに約79万個の±10度に傾くミラーが集約されています。

最近の携帯電話の液晶の密度も凄いものがありますが、それの比ではないくらい高密度です。
(デジタルカメラのCCDとかCMOSの方が高密度だ!って突っ込みはナシで…しかし、こちらは物理的に運動をするという構造なのですよ!)


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背面。物理的に運動しているために多量の熱が発生します。そのため様々な冷却装置が必要です。


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実際のDLPプロジェクタの光学配置図。

ランプ:超高圧水銀ランプ、キセノンランプなどが使用されます。
UV/IRカットフィルタ:ランプから発せられる紫外線と赤外線をカットし、可視光線のみにします。
カラーホイール:各社、色の比率は工夫しており、仕様は様々です。
ロッドレンズ:光をまっすぐな状態にするためのレンズです。
リレーレンズ群:光をDMDにぴったりな大きさにするためのレンズです。
反射ミラー:内部容積の制限上、光軸をここで90度折り曲げます。
プリズム:DMDより画像を取り出します。(製品によってはないものもあります)
DMD:心臓部です。DMDとプリズムが一体化している製品は素子に埃が付着しにくい特徴を持っています。
投射レンズ:プリズムから反射で得られた画像を投射するレンズです。

※図にはありませんが、DMDからOFFの光を吸収する黒い板がプリズムと投射レンズの間に実際はあります。

もう少しわかりやすくするために立体図を作成しました。

ランプから反射ミラーまで


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反射ミラーから投射レンズまで


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DLPプロジェクタの基本は、この画にすべて集約されています。


ミラーの傾きで、光の見た目の明るさを調節し、光源にカラーホイールを用いることで様々な色を作り出せる。ではそのミラーを画素分増やせばフルカラーの画面が描けるのでは?というこの発想!!凄まじいものがあります。
※DMDはアメリカの半導体会社テキサス・インストゥルメンツの特許となっています。(もともとは、レーザ光をDMDで制御して、プリントをするために開発された技術でした。)

DLPプロジェクタの中には、カラーホイールを廃し、DMDを3つ取り付けることによって、更なる高輝度を目指したモデルや、DMDを2つにし、ホームシアターに適した色階調が得られるようにしたモデルなどがあります。

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DLPプロジェクタのロゴとDLPシネマのロゴ。

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テキサス・インストゥルメンツのロゴ。
(他に様々な製品を作っています。基板の半導体を良く見る方はこのロゴを見かけていることでしょう。) 

液晶プロジェクタで問題だったパネル焼けが起こらなく、三管式プロジェクタで煩わしかった位置調整がいらないDLPプロジェクタは、まさにプロジェクタの革命でした。(もちろんDLPが不利な点もあります。)
そのDLPプロジェクタの仕組みを少しでも理解していただけたら幸いです。

DLPの公式Webサイト(ここにもDMDの解説があります)
http://www.dlp.com/jp/


以下の資料を参考にさせていただきました。
光技術情報誌「ライトエッジ」No.19 ウシオ電機
https://www.ushio.co.jp/jp/technology/lightedge/200007/100221.html
「新しい表示デバイスによるプロジェクタの現状と動向」プラス株式会社 古賀律生 著
この資料には、仕事上、本当に助けられました…。